何十年ぶりの円安、と言われると普段全く関心がなかった人の心も動くものです。特に短期間で大きく動く外国為替について事前に備えられている人、適切に反応できる人は多くありません。外国為替リスクをどうマネジメントすべきか、ここで一度整理しておきましょう。

外国為替リスクとは

外国為替リスクとは、為替相場の変動によって、保有する外貨建て資産・負債の自国通貨換算額が変化して、利益や損失が生じる不確実性のことを指します。

つまり、一般には資産や負債について適用する概念ですが、収入や支出、あるいは物価という観点でも外国為替の影響を実感することはあるので、ここでは個人が直面する外国為替リスクと考えて広義に触れてみます。

外国為替リスクを特定する

まず最初にご自身にとっての外国為替リスクがどのようなところに潜んでいるのかを特定する必要があります。例えば、

  • 外貨建ての資産がある
  • 将来に外貨での支出がある
  • 外貨で収入を受け取っている

などです。人間は無意識のうちに外国為替が今のままであることを前提に考えていますが、その所与の条件が容易に変動する種類のものであることは後になって気づくものです。

リスクの所在が洗い出しできたのであれば、次にそのリスクの大小について考え、より大きなリスクに対して対処することを優先しましょう。

全ての外国為替リスクを取り除くことを考えてはいけません。

リスクは大小を問わなければ様々なところに存在します。ただ、その全てを気にし始めると肝心なところがおろそかになる可能性があります。

要所を押さえることが最も時間や費用がかからず、効率的です。それでも余力があるのであれば、要所以外の部分について考えればよいのです。

外国為替リスクは両サイド

円安になるとさらなる円安に対処したいという人が増えます。これは自然なことです。円安がその人によって悪い方向に働くことを理解したからです。

ただ、円安の対策をすることは、円高に振れたときには損をする可能性があることは忘れてはいけません。急激な円安が進んだ事実が存在するように、急激な円高が進むという可能性もゼロではないのです。

外国為替リスクは常に両サイドがあり、しかもそう簡単に方向性が予測できるものではありません。

確かに日米の対照的な金融政策により、米ドルは金利が高く、日本円は金利が低い状態になり、当面の間それは続くことが予想されています。外国為替リスクを差し置いて考えるならば、金利の高い通貨の方が選択されることは自然なように思います。

でも、外国為替は金利だけを理由にして動いているわけではありません。金融市場のテーマは容易に変化するのです。

保有通貨を分散する

外国為替リスクというのは、株価の上下のようなマーケットリスクよりも時に大きく映ります。円高か円安か、判断に迷うのであれば外貨の保有割合を50%にする、というのは素直な発想です。資産のうち半分が米ドルで、もう半分が日本円なのであれば、ドル円が動いたところで資産価値に変動はありません。

もし、円高に振れることで、外貨を持つことが損失に繋がるのではという懸念をする人であれば、逆に円安に振れることで、外貨を保有しないリスクが顕在化する可能性を棚上げにしてしまっているのです。

為替ヘッジ付きで投資する

保有する通貨を分散したとしても、いつもいつも現金で置いておくわけにはいきません。その場合、それぞれの通貨で運用することになるわけですが、ここにも外国為替リスクが伴う可能性があります。

単に、日本の証券口座からアメリカの株式を買うだけでもリスクはあるわけです。単に株価の変動=マーケットリスクをとりたいのであれば、為替ヘッジ付きのものを選ぶことで外国為替リスクは軽減できます。

リスクに対処するにはコストがかかる

例えば、死というリスクに対処するのに保険を買うとしても、保険はタダではありません。車の事故というリスクに対して、賠償責任保険をかけるにしても保険料が必要です。外国為替リスクもリスクである以上、対処することは可能であり、それにはコスト(費用)がかかります。そのことは知っておくべきでしょう。

ただ、対処の仕方によってはコストは大きくもなり小さくもなります。外国為替リスクは万が一というよりは日常的に存在している種類のリスクですから、コストをかけすぎてもいけません。より効率的なリスクヘッジについて学ぶ必要がある分野だと言えるでしょう。

資産配分について相談する

冒頭述べたように外国為替リスクに適切に対処している人はあまり多くありません。それは、マーケットの相場観とは異なり、個々人の置かれた状況に基づく資産配分(アセットアロケーション)の領域だからです。

決めるべきは自分のこと、なので誰かが発信していることをそのまま取り入れただけでは上手くいきません。自分自身で考え、そして考えがまとまらなければ信頼できるファイナンシャルアドバイザーに相談してみるとよいでしょう。

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