まだ少ないものの、ここ数年の香港で聞かれるようになったGCC地域への投資について、現時点で少しまとめておきたいと思います。

GCC地域とは

そもそもGCCという言葉に馴染みにない人もいると思うので補足すると、GCCとは湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council)のことで、いわゆる、中東の主要国である、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、オマーン、バーレーンの6カ国による地域協力機構を指します。簡単に言えば中東地域、石油産油国ですが、一方でご承知の通り中東は一枚岩ではありませんから、その中でも経済的な連携を強め、国際社会にも比較的オープンな地域をGCC地域として考えることができます。

GCC地域の成長と開放

中東というからには石油採掘で大儲け、なんてことは一般人にはできません。一方で、これらの地域は石油や天然ガスなどで得られた利益が蓄積し、自ら都市として開発を行えるほどの財力があるのは確かです。そこに住まう人々にもそれなりに恩恵があります。

ただ、近年は、GCC地域においても、石油や天然ガス以外の事業への多角化が進められ、そこには国際的な投資資金が流入しています。外資規制が明確にあるものの、積極的に市場を開放している面があるわけです。ここ数年で、GCC地域に移住した人、何らかの投資について情報が流れてきたことがある人、きっと周りにもいるのではないでしょうか。

注意点とリスク管理

国家主導である面が強い

中東地域において欧米のような民主主義あるいは自由主義経済という前提があると考えているとやや戸惑うのかもしれません。一方で、都市としての成長や開発は国家が主導して行っているため、逆に安心感がある、という人もいるでしょう。様々な意見を取り入れつつも、長い歴史のもとに制度が出来上がっている、というよりは、作られたばかりでその後もどんどん変わっていく制度の方が多いと考えられます。

情報がまだまだ少ない

制度が新しいのに従って、そこに関わる人の数もまだまだ十分ではなく、広告等で良い面ばかりが強調され、悪い面に関する評価も固まっていないことが考えられます。悪い評判がないことがすなわち良いことだ、とまで言えないわけです。評価が固まっていないことをどう評価するか。例えば、豪華で綺麗な建物が建っているが、一般にどのくらいの耐用年数があると考えられているのか、という点に関しても、実際にその年数が経ったことのあるものが周りにはない現実があるわけです。一方で、情報が少ないということは参入している人も少ないわけで、競争が激しくなる前に先駆者利益を狙う人も当然いるし、それが得られる可能性も高いのは事実かもしれません。

一般投資家への門戸は狭い

GCC地域への投資が比較的新しいものだという前提に立つと、まず先にこの分野に触手が伸びるのはリスクをある程度受け入れることができる富裕層だということになります。あくまで一般論ですが、失敗したくない投資家や何かトラブルが起きることを恐れる投資家には残念ながら向いていません。そうした投資家にとっては、周りが誰でもできるようになっている状態になった初めて考えるものなのかもしれません。例えば、香港証券取引所には、2023年にサウジアラビアの株式に連動するETFが、2025年には同ソブリン債(スクーク)に連動するETFが上場していますが、一般投資家への貴重な機会となり注目を浴びました。

投資活動への示唆

先駆者利益の獲得は、リスクを取った人の特権でもあり、そしてその後成功体験として語られがちですが、その中には失敗したものが埋もれがちでもあります。そして同じことを繰り返そうと思っても、残念ながらその機会は既に喪失していることがほとんどです。人々が求めるような儲け話=特別な利益というのはずっとそこに横たわっているものではないし、何の苦労もなく得られるものでもないのは言うまでもありません。

一方で、GCC地域関連の話題は今後も広がりを見せることは想定され、そしていわゆる新興国の成長シナリオ、とはまた違う経路を辿る可能性もあるので、またフォローしておきたいと思います。

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