日本円では金利がなく、銀行で預けていても増えないが、外貨では金利があり、保険を通じて無理をせず増やすことができるのではないか、と考える人がいます。一方で、外貨建て保険は本当にいい商品なのか、と感じてしまうような報道もあるわけですが、果たしてどうなのでしょうか。
目次
外貨建て保険とは
そもそも、外貨建て保険とは、保険料の支払いや解約返戻金、死亡保険金の受け取りが外貨で行われる保険を指します。
ただ、日本円の預金口座しか持っていなければ、支払う度に日本円→外貨へ変換し、受け取る時にも外貨→日本円へ変換することになります。保険契約自体は外貨建てなので、外貨資産を保有している、とは言えるでしょう。
香港の場合、そもそもベースの通貨が香港ドルであるため、香港ドル建て、あるいは米ドル建ての保険がほとんどであり、日本人の目線から外貨建て、と言っているだけですけどね。もちろん、ユーロ建てやポンド建ての取り扱いもあったりはしますが、メジャーではない、とは言えます。
外貨建て保険にも、終身保険や、個人年金保険、重大疾病保険など、様々なタイプがありますし、保険料の支払い期間もプランによって異なります。目的や目標額を決めた上で保険選びをする、というのは外貨建てでも変わりません。
外貨建て保険がリスクが高いと言われる理由
保険なのにリスクが高いとはどういうことか、と思えたならスタートラインに立てているわけですが、多くの場合、そんなはずはない、という思い込みがまずきてしまいます。
外貨建てゆえに発生するリスクについて事前に認識ができていれば、実際に何があったとしても、それは予期していたこと、ということになります。具体的なリスクは例えば以下です。
為替変動が元本割れをもたらす可能性がある
契約そのものは外貨建てで、元本割れがないような内容になっていても、もともとの保険料の原資が日本円で、かつ解約返礼金や死亡保険金を受け取った後にも日本円に戻すのであれば、多くの人は払い込んだ額と受け取った額を比較します。そのときに為替変動が不利な方向に向かっていれば、結果的に元本割れということになる可能性はあります。
保険会社から見れば払い込んだ額以上を返しているのに、受け取った方はそう思っていない、という現象が起こるわけです。
手数料が余分にかかるケースがある
例えば、日本円→外貨へ変換するとき、外貨→日本円へ変換するとき、保険会社で手数料はかからなくても銀行で手数料を取られることは考えられます。それに、日本円建ての保険だったら死ぬまで契約を維持するのに、外貨建てだからといって利益が出たら解約する、という人もいます。為替で得をしていても、早期に契約を解除することで解約手数料がかかってしまう場合はあります。
運用リスクがある
実際は保険商品によりますが、外貨建て保険の場合は資産運用目的で利用されることが多いので、運用リスクに触れておきます。払い込んだ保険料のうちの大部分は保険会社によって運用されており、株式や債券などに幅広く分散投資されています。
もちろん極端な集中投資をすることはありませんが、金融市場の変動の影響はあるので、解約する年によっては思っていたよりも増えなかった、と感じてしまうこともあるでしょう。
円安時代に外貨建て保険はどうなのか
円安に触れると、今度は円高に揺り戻されるはずだから、という思考が頭をよぎります。それまでは円安になることなんてあまり意識していなかったはずなのに不思議ですよね。でも、誰しも損をしたくないのでそのリスクについてよく理解しておくことは大事だと思います。
資産のリスク分散にはなる
外貨建て保険に為替リスクがあることは言うまでもありません。かつ保険商品なので、短期的に為替が大きく動いたという理由で契約したり解約したりするのはあまり良い保険の使い方とは言えません。たとえ資産を増やすことが保険の目的の一つだったとしても、為替変動はその何倍も大きく、短期的に起こる可能性もあるからです。
ただし、現代の生活はあらゆる面で海外とは無縁でないので、何もしなくても為替リスクにはさらされているとは言えます。
そのため、海外資産を持つことで、そのリスクをある程度相殺することはできる、とも考えられるので、資産が積み上がってきたのであれば、リスクテイクではなく、リスク分散としての外貨建て投資をしてみる、というのは間違っていません。
金利が適度にあるというのは重要
長らく日本はゼロ金利の時代を進んでいますので、お金を預けていたら増えるという感覚があまりないかもしれません。しかし、それが自然体で起こるのが金利のある世界であり、働いて稼ぐのと全く違う感覚をもたらしてくれますし、資産を増やすということをどこかでやらなければ、長い人生を満足して生き抜くことすら難しいのかもしれません。
実際、バブル前の高い金利の頃に保険を契約した人は老後の資金への不安は少ない、ということが起こっています。待っていても自分の人生にとって良い環境が来るかは分かりませんが、どんなきっかけであれ、その環境が来たと思ったら重い腰をあげてでも取り組むべきでしょう。
金利が高いのは重要ですが、新興国のように過度に高い金利は通貨の価値そのものを下げる可能性があるので、外貨資産として考えるならば、金利は高ければ高いほどいいというものでもありません。
常に長期目線で考えられる
人間ともすれば短期的なことばかり気になりますが、保険はそもそも長期目線が大前提です。なので、短期的な損得が意識されているうちは保険を選ぶべきではないと言えるでしょう。
長期的に取り組むべきことは何か、将来のどのような不確実性を取り除くことができるのかを考えられたのであれば保険の良いプランには巡り合うことができるでしょう。