今や、米ドルやユーロだけでなく、世界中の通貨に投資ができる時代になっている。株式や債券などの投資商品だけでなく、通貨に投資先を分けるという考え方もあることは知っておこう。
目次
通貨の選択肢は国の数ほどある
近年は仮想通貨という概念もあってややこしいが、一般には、通貨というのは国が発行するものである。したがって、基本的には世界にある国の数だけ存在することになる。つまり、種類にして150以上にわたる。
世界で最も使われる通貨、いわゆる基軸通貨は今日では米国のドルとなっている。世界最大の経済大国であることも一因であるが、かといって基軸通貨というのは歴史的にずっと同じというわけではないことは念のため知っておくべきことであろう。
また、一国一通貨が基本になってくるが、国の中でも歴史的にずっと同じ通貨が流通しているわけでもない。例えば、ドイツやフランスでは、現在はユーロが流通しているが、少し前までは、それぞれマルクやフランであった。またカンボジアのように、現地通貨としてリエルがあっても、実際には米ドルが幅広く使用されている国もある。
通貨の特徴を理解する
外貨に投資をするとき最も悩むのは、どの通貨を選ぶか、である。ただ、そもそもなぜ外貨に投資をするのかからスタートすべきであり、それは日本人の場合、日本円だけではダメな理由を理解することも大切である。日本円が最適なのであればもちろん日本円に投資しておけばいいのである。
通貨を選ぶにあたって一般的には、先進国通貨と新興国通貨に分けられる。日本円は先進国通貨だ。では、まずは新興国通貨に投資すればいいかというとそういうわけではない。通貨の特徴を理解することから始めよう。
先進国通貨の特徴は、取引量が多く、値動きが相対的に安定しているため取引がしやすいことだ。様々な需要と供給が存在するので、見通しに関する情報も多いと言えよう。
新興国通貨の特徴は、取引量が少なく、値動きが相対的に不安定であるため、取引しづらいことだ。新興国は経済成長率も高めであるため、一見すると良さそうに見えるが、同時に急激な物価上昇に悩まされたり、政治的な不安があったりで、通貨への信頼が低い。金利は比較的高く設定されているものの、それが通貨価値の上昇とは反対になりやすい。場合によってはデノミネーションなど、通貨単位の強制変更にさらされる可能性もある。
通貨分散をどう考えるか
外貨に投資をするときに気をつけたいのは、元本保証はないことである。そもそも二国間の通貨の価値は相対的なので、一方が上がれば一方は下がる。もちろん強い通貨を持ち続けられればいいが、それ相応のリスクはあるというわけだ。
ただ、逆にいえば弱い通貨を持ち続けることは避けたいわけで、通貨分散を考えることになる。色んな通貨に少しずつ、と考えたくなるかもしれないが、通貨に関しては分散すればするほど効果的であるという研究は存在しない。それどころか手続や管理の面で面倒になってしまうから避けたいという人の方が多いだろう。
もしこれから通貨分散を考えようと思うのであれば、まずは日本円以外に一つ、そして特徴や仕組みが分かったらもう一つ、くらいで十分であると言えよう。
なお、外国為替に伴う手数料は案外バカにならない。通貨分散を考えるなら、まずはどのような方法で外貨を持つことが費用対効果で良いのか、を考えることは重要であると言える。
紙幣や硬貨で持っていてもいいか
外貨を持つことになったきっかけが旅行や出張である、という人は多いだろう。そのとき現地で替えた通貨をそのまま記念に持っている人もいると思う。私もその一人である。
ただ、本稿のような通貨分散の観点では、外国の紙幣や硬貨を持つことが有効だとは考えない方が良いだろう。もちろん次に行ったときに使える、という利点はあるのでそういう予定があるのであれば毎回全ての外貨を日本円に戻す必要はない。
一方で、どの国でも紙幣や硬貨、特に紙幣の方が偽造防止などのために数年おきに新しいものが発行されており、いわゆる旧札の流通は制限されてしまうことが多い。もちろん旧札に価値がないわけではないが、せっかく資産として保有していても、現地の銀行で新しい紙幣に替えるところから再スタートせねばならないのは面倒である。そういう意味では、外貨は金融口座で持っておいた方がいいと言える。
外貨で投資先はあるか
通貨に投資をするだけでも確かに分散効果はあるが、それでは基本的に日本円を銀行に預けていただけの人とそんなには変わらない。残念ながら物価上昇には勝てていないというわけだ。できるなら通貨を分散した後に投資する先があった方がいい。その点を考えると新興国通貨よりも先進国通貨の方が投資の選択肢は多い、と言えるだろう。せっかく外貨に投資をしたのに、その先で何もしないというのはもったいない。
そういう意味では、逆に外国に投資をした時点で自然と外貨に投資ができている人もいるわけだ。自分自身のポートフォリオを眺めてみて、どのような為替リスクにさらされているのかを知るところから始めてもいいかもしれない。