初心者でもできる投資手法、あるいは最強の投資手法としてインデックス投資が勧められるが、それでもインデックス投資で失敗している人はいる。そこにはインデックス投資にまつわる勘違いと理解の不十分さがあることに気づくのではないだろうか。

インデックス投資で失敗する理由

インデックス投資=長期投資という勘違い

インデックスとは代表的な銘柄をある基準に基づいて選別して構成した指数のことである。つまり、インデックスというのは”平均的である”というニュアンスは持つ。

一方で、これらは代表銘柄であることを意味しているに過ぎないので、長期的に価値が増えていくかどうかまでは気にしていない、とも言える。

例えば、30年前は日本のトヨタ社は時価総額ベースで世界を代表する自動車メーカーだったが、その後勢いよく伸びたテスラ社がいることに気づくだろう。

このことをインデックスがどう評価するかというと、テスラ社がある基準を満たすようになれば構成銘柄に組み込み、トヨタ社がある基準を満たさなくなれば構成銘柄から外す、ということになる。つまり、インデックスに入っていることが必ずしも成長銘柄であることは意味しない。

もたらされる結果は平均的ではあろうし、自動的に組み換えられるというのは正しいので、パッシブ投資家とは言える。ただ、長期投資とはあまり関係がない

したがって、本来の長期投資とは、長期的に価値が増えていくように投資をすることだったはずなのに、インデックスはそれを約束してくれない、ということが起こりうる。

ETF(上場投資信託)=パッシブ投資という勘違い

最近はETF(上場投資信託)が手軽に取引できるようになって利用している人も多い。

ETFは信託費用が安いものが多いので、自然とインデックス型のものが多く含まれている、のは事実だ。

ただ、ETFだからといってパッシブな訳ではなく、レバレッジをかけるタイプ、アクティブ運用をするタイプなどもETFには登場している。インデックス投資と思っていても、テーマ性の強いもの、1年経てばポートフォリオの中身ががらっと変わってしまうものも中にはある。

選ぶインデックスやETFには十分理解を示したい。

もちろん個別の銘柄に比べればETFであれば分散して投資することにはなるが、依然としてリスクの取り過ぎになることはあり得る。

アセットアロケーション(資産配分)を意識していない

インデックス投資をする人にありがちなのが、株式インデックスを一つ選んで全張りすること。

長期的に保有すれば一時的に株価が下がることはあっても最終的には上がる、と考えているので、株式以外には目もくれない、というものだ。

投資とは株式である、と言う感覚を持っている人もいる。

しかしながら、本当の意味で長期投資をするのであればアセットアロケーション(資産配分)を意識しない、と言うのは得策ではない。

株式しか見ない投資家ほど、インデックス投資においても投資タイミングを今か今かと考えているのに気づくだろう。

株価が上がらなくなった瞬間にテンションが下がり、投資から手を引くことになるのはそのためだ。

株価が上がるのはいつかは分からないが、その分からない間にもリターンを稼ぐのは、ただの分散投資でなく、アセットアロケーションである。

興味の持ち過ぎが長期的な継続を断念させる

インデックス投資を経験した人の中には3ヶ月くらいで辞めてしまったという人も少なくない。

やっててもそんなにリターンの実感がなかったのに、やたらに投資のことが気になるって他のことに手がつかないからだという。

インデックス投資の良いところはいつでも始められるし、いつでも辞められることであり、そしていつでもその時の価値がどれくらいか分かることである。しかし、これによって起こるのは、意思決定の手軽さであり、そこにはその人のそのときの気分が影響する。

あなたの気分はインデックスそのものに影響を与えるだろうか、答えは明らかに否である。したがって、インデックスの動向に一喜一憂することには全く意味がない、といってもいい。

それならば、スマホでチャートを見るよりは、毎朝出会う人に気持ちよく挨拶する方が絶対にいいし、美味しいご飯屋さんを探すのに一生懸命になっている方がマシではないか。長期的な継続をするための秘訣は、インデックス投資への興味を失うことである、と言ってもいいかもしれない。

インデックス投資はそれほど儲からないことを忘れる

パッシブゆえに含み損もまたパッシブである。

インデックス投資に元本保証があるわけではなく、ただ、平均的なリターンをもたらすだけである。

平均がマイナスならインデックス投資もマイナスである。したがって、平均とは真ん中であって、可もなく不可もなくである。

大事なのはリターンの目線やリスクの取り方がその人にとってそれでいいのか、ということであって、この可もなく不可もない状態に、それで良かったという「正解」を与えるかどうかはその人によるわけだ。

1年経ってみて、自分が選んだインデックスよりもパフォーマンスが良かったものを見て、人によってはもっと別のインデックス投資をすればいいのではないかと思い始める。

インデックス投資はそれほど儲からない、という期待値を持つことは大切かもしれない。インデックス投資はトップパフォーマーではない。

読めない相場を読もうとする

パッシブであったはずなのに、下がったら買うか悩み、上がったら売るか悩む、という人は多い。

インデックスももちろん上がったり下がったりするので、一見すると上手くやれば儲かる気がしてしまうのだ。確かに「そろそろ上がりそうだ」という瞬間があるが、繰り返すがインデックスとは平均的である。

だから平均的な中で相場を読んでもさらに平均的な結果しか返ってこないし、インデックスは実に様々な要因で変動するため、ある一社の株式を分析することすらままならない人が、インデックスの動向について考えを巡らせたところで答えが出てくるわけがない。

インデックス投資を通じて相場を読むという“足掻き”をすることによって投資のリターンは6%ほど低下するというデータを大手の資産運用会社が出していたこともあるのには私自身も驚いた。

パッシブすぎて、パッシブ投資の失敗に気づかない

パッシブ投資とは何も考えないことではない、というのは曲者ではある。

当たり障りのないリターンになったことをよしとして、改善すべきことに目が向かないことはある。同じことを投資信託ではなくETFを使うことで費用は安くなる。

受け取らなくていい配当金を受け取ってしまい、税金でもっていかれる。パッシブ投資とは銘柄選定において自分の意思を排除することであり、それ以外のところは見ないといけない

もちろんそれほど深く考えずにとにかく投資の習慣をつけることまでは否定できないが、このパートの重要性に気づく人は少ないので、パッシブ投資においてもアドバイザーについてもらった方がよいのはこのあたりにある。

投資をしないリスクは投資をするリスクを上回るか

ここまで見てくると、手軽と言われるインデックス投資であっても失敗することは多いことが分かるだろう。では、投資をしない方がいいのではと考えるのはどうか。

手元に投資に回せる資金がある場合、投資をしないリスクは投資をするリスクを上回ることが多いと個人的には思う。正しくインデックス投資を継続できれば、平均的なリターンを得ることはできる。

それは、資本市場そのもの機能であり、よりよい社会に向けて生産性を向上する企業への資金循環によって発生しているものだからだ。

お金がある人からお金がない人への流れこそが金融の機能であり、そこにリターンの源泉があるわけだ。資金の多寡はおいておいても、”資本家=投資家”としては活動し、それに伴うリターンを享受する権利がある。

その権利行使にあたって、どんなところに投資をすれば良いかが分からなければ、誰かにアドバイスを求める、ということもできよう。

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