資産運用で失敗をしないように、誰かに任せて分散投資をしようとするときに登場するのがファンドラップですが、ファンドラップの利用にあたって果たしてどのような意思決定をすればよいのか解説します。

ファンドラップとは

ファンドラップというのは、一定の金額を金融機関が用意するラップ口座に入れ、その中で様々なファンド(投資信託)に分散して投資をしてくれるサービスのことです。ファンドラップという言い方以外にもラップ口座や投資一任契約といった言葉でも知られています。

当初、各金融機関が提供したファンドラップの商品には1,000万円からといった最低金額が設定されていたこともあり、なんとなく“敷居の高い、別格の新しいサービス”という期待感を持って始めた方も多いことでしょう。

その決断がよかったのか悪かったのか、結果としても見え始めた頃ではないでしょうか。ファンドラップを利用してから5年程度経っていれば見直してみるのに良いタイミングです。

特に海外にいらっしゃる方は、居住国が変わって口座管理が手薄になったケース、あるいは海外居住ならではのより便利なプラットフォームを利用できるようになっている可能性もあります。

ファンドラップを始める、継続する、解約する、それぞれのステップで迷われている方がいらっしゃれば、この機会に様々な運用口座を比較してみるのもいいかもしれません。

見直しは最低5年に一度

私は運用計画を考えるアドバイザーとして、お客様とは5〜10年超のお付き合いを想定していただいています。というのは資産運用は長く、そして安心できるお付き合いとなることがお客様にとって一番良いと思うからです。

当然、お客様も運用成績プラスという結果がすぐに出るとほっとするかもしれませんが、1ヶ月も経たずに「今、投資成績どう?」とおっしゃられる場合、結果としてそれに対して良い回答を用意できるよう、私自身が多少無茶な取引をすることに繋がる危険性があることは否めません。

私自身がどんなにあがこうとも市場環境が悪ければ運用成績も伴って悪くなる可能性があります。投資においては仕込みも大事ですから、そういった種まきの時期があることも知っておいていただく必要があります。また、市場が荒れても慌てず、騒がず、大人しくするというのも、長期的に運用を続けていく上で大事な要素です。

とはいえ、担当者としては運用が始まったらパタっと連絡を途絶えさせ、5年後にふと思い立って連絡をするという冷たい対応をする必要もないので、定期的に連絡はとるようにしたいです。

運用に関してはやはり最低でも1年に一度は報告する、そのときには状況が変わっていないか、きちんと説明をさせていただくことにはなります。

サービスの判断基準

① パフォーマンス(運用成績)

そもそもラップ口座で運用を始めて5年経つとすれば、運用成績的にはなんとなく区切りの良いタイミングではないかと思います。

担当者の対応や愛想が良かったからという理由で契約した人も、実は資金が増えていないとしたら運用サービス自体としては上手くいっていないということです。

したがって、誰がいつどのような判断をしたことによってその結果になったのかを改めて考えてみるべきです。

担当者がいたとして、その担当者自身が投資判断をしていないのだというのであれば、その先のポートフォリオマネージャーや組織がどのようか、運用中に何か変化があったか等を聞いてみることをお勧めします。

ファンド運用の場合は特に、ファンドの運営体制の変化はパフォーマンスに大きな影響を与えます。

② その他サービスレベル

サービスが登場したての頃というのは、他社とは差別化ができるので、競争相手が少なくなりがちです。

最初のキャンペーンとして良いサービスが提供されるケースもありますが、サービスが普及するにつれて、業界的にも銀行、証券、IFA、などの様々なプレイヤーが登場し、より競争的なサービスが出てきているはずです。

競争的な環境の方が、顧客にとってはサービスレベルが良く映る傾向はあります。既にファンドラップに取り組むあなたは、既に運用を行った経験を活かして色々と開拓できる、そういう立場にあります。

一口にサービスといっても、運用成績そのものだけでなく、購入できる商品のラインナップやオンラインでのサービス提供、あるいは運用以外に関しては、限定イベントへの招待なども付加サービスと言えるかもしれません。

もちろん解約するときの手数料などの確認は必要ですが、「良ければ続ける、悪ければ解約する」そんな意思決定はあって然るべきです。

ファンドラップを継続する理由

投資一任をした場合、毎日のように担当者に電話をかけたり、またかかってくることを期待することはオススメしません。

あなたはせっかく任せたのだから、自分好きなことに時間を割くべきだからです。

ただし、例えば年一回、担当者に会うときくらいは質問攻めにしてみるのは良いかと思います。

結果としての数字だけでなく、何が起こって何をしたからそういう結果になったのか、しっかり聞くことです。

もしそれを嫌がるようなら投資一任費用を払うには値しません。

お子さんをベビーシッターさんに預けたからといって、ベビシッターさんはお子さんに何をしても良いということではないのと同じです。

とことん話した上で、良くても悪くてもその運用結果に納得ができたのであれば、それは継続する理由になるでしょう。

また、色んな相談に乗ってくれた担当者と仲良くなったと言うことはあるでしょう。ただし、感情にほだされることはオススメしません。たとえ担当者と仲が良くても、少なくとも「プロフェッショナルとしての評価」は与えるべきだと思うからです。

もしそれでも関係を続けるメリットがあるとあなたが思うならそれもいいかもしれませんが、逆にお互いにそういう関係が築けているのであれば運用を委託する以外にも関係を続ける道はあるのではないでしょうか。

ファンドラップを解約する理由

ファンドラップにありがちなのは、確かにオーダーメイドでポートフォリオを組めるが、それは少ないラインナップのカタログから選んでいただけというケース。しかも載っている商品がコスト的に割高なものばかり。

ラップ口座の成立には、銀行や証券会社がもともと自社で売っていたものをパッケージ化したという経緯があります。売れ筋のものをまとめたのであればいいですが、売れないものをまとめて売ろうとしている可能性もあります。

「オーダースーツ」といってもフルオーダーメイドなのかセミオーダーメイトなのかの違いが聞いてみればわかります。金融商品の場合も、何でも買えるプラットフォームである「オープンアーキテクチャ」か、カタログに載っている商品を買える「クローズドアーキテクチャ」かという違いがあり得ます。

スーツには定番の型があるので、セミオーダーメイドの発想は悪くありませんが、実は金融商品の流行り廃りは凄まじく、それは運用成績に直撃するので、クローズドアーキテクチャなのであれば、少なくともカタログが更新されていっているかどうかを確認する必要が出てきます。

また、最近はロボアドバイザーも注目を集めていますね。私自身、「アセットマネージャーとしての自分のアイデアを忠実に再現してくれるクローンができたらどうだろう」と考えることはたまにあります。

自分はどちらかというとロジカルな人間だと思いますが、人間なので何度も同じことを考えることはあります。だから、これをいっそオートメーションしてしまえば楽になれるのにと思ってしまいます。

しかし、どんな優秀なファンドマネージャーもその生涯を輝かしい成績だけを収めて投資の世界を去ってわけではないことを思うと、ロボ運用は資産運用業界の抱える問題に対する解になっているのか疑問ではあります。

また、お客様の立場からみて、ロボアドバイザーに頼むという行為はどうだろう、とも考えます。個人的には投資もまた語学と似たようなものだと思っています。

通訳をお願いしたがために、英語がしゃべれなくなってしまっては意味がありません。最初は誰かにお願いするにせよ、時間を見つけて挨拶くらいはできるようになった方がいいのと同じで、投資も何が行われているのかを理解できるようになることはプラスです。

時間を作ってでもある一定レベルの知識は必要だと思います。

資産規模とともに、お客様の金融知識が追いついてくれば、プロ投資家向けの商品なども案内しやすくなります。あるいは家族の金融知識が追いついてくれば、いずれくるであろう資産継承もより楽に行えることでしょう。

ロボに預けてしまうのは楽かもしれませんが、残念ながら一生初心者止まりな気がします。資産規模がそれなりにあればロボだったとしても運用委託手数料(アドバイザリーフィー)もバカにはならないですしね。

なお、ファンドラップが期待していたとおりでないことに気づいたが、それでも何とか運用益が出ているタイミングというのは、解約(売却)に向かう人が多いように思います。

ファンドラップを始める理由

日本で登場した”ラップ口座”という言葉は、紛れもなく海外からの輸入品であって、実際香港に来てみると、至極ありふれたものだと感じます。

商品があふれているので、「詰め合わせ口座」は好きなように作ることができます。世の中の金融商品を何でも買える「オープンアーキテクチャ」のものすらあります。

日本でラップ口座を扱うにあたっては、やはりもともとあった金融制度や金融機関の組織制度に適合する必要があったので、そのままというわけにはいかなかった部分もあるでしょうから、それ自体を責めるわけにはいきません。

ただ、ラップ口座も使いこなす技量が必要になってきます。

ラップ口座で行う運用は何か特別な内容である必要があると私自身は思いません。

分散の聞いたポートフォリオを構築するには向いている時もあります。たくさんある金融商品の中で、時代に合わせてベストなものをピックアップする、しかもそれが時代を通じて一貫した投資家としての成功法則に近づけるものの方がベターと思います。

“福袋”にも業者が得をするものと買った人がおトクに感じるものとがあるのと同じように、ファンドラップにも同じことがあります。お値段として妥当か、という観点からも牽制を聞かせ、投資家として大成してもらえたらと思います。

ファンドラップにおいてもダイヤの原石をかき集め、磨き上げることはできる

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