IFAという言葉は日本だと最近ようやく浸透してきたものですが、香港界隈だと少し前から存在をしています。ただ、その意味するところは広く、日本で広がりを見せるIFAと旧来の香港IFAですと、私は前者に近く、欧米系IFAに近い存在ですから、日本人にとって先入観の入りやすいIFAという呼び名をあまり自分に当てはめていません。

ただ、今回はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)という業界に飛び込み、そしてその未来について考える私から、IFAになる、IFAを目指す人が知っておくべき事実についてまとめてみたいと思います。

IFAの限界はどのようなものか

IFAの限界① やりづらくても“できる”と言う癖がつく

IFAで働く人の場合、フルコミッションで働く一匹狼型の人が多く、クライアントからのリクエストは全て自分のところで消化したい、という欲が湧いてきます。にも関わらず一人でできることには本来限界があります。もちろん自分の専門外であれば知り合いを紹介したりなどはしますが、少しでも自分が“手が届く”と思えば手を伸ばしてしまう傾向があります。

とりあえず“できる”と言ってから考える、その後、どうやってやるかを考える、そんな癖がついてしまうのでしょう。

もちろん、これは仕事をとってくるという意味では重要な感覚の一つではありますが、果たしてクライアントの要望に応えるだけの質のものになったかどうか。知り合いに弁護士がいて、企業法務専門だがとりあえず弁護士なので離婚調停の相談をしてみたら、対応はしてくれたが長期にわたってしまい高額だった。しかし、離婚調停専門の弁護士にお願いすれば安くて短期間で決着がつくものだった、というような場合と同じです。

IFAの限界② ファーム毎のカラーは見えづらい

日本の証券会社であれば、N村系はああで、M菱系はこうでなんていうイメージが出来上がっていたりしますが、IFAの場合は実際にクライアントと接するアドバイザー個人の方が圧倒的に重要であるという現実があります。ただ、実際にはファーム毎のカラーというものは存在をしていて、ファームが緑色なのに、アドバイザーは赤色をしている、ということも実際には起こります。この場合、アドバイザーは赤色を維持することにファーム内で格闘することに繋がるので、やはり緑色のファームには緑色のアドバイザーがいた方がいい、ということなのかもしれません。

ファームの人数が多いことにビジネスの安定性を期待する人もいますが、現実にはそうではありません。保険をたくさん売りたければ代理店をたくさん抱えるのと同じで頭数を用意します。逆に人数が少なくても一人ひとりが安定したビジネスモデルを持っていれば所帯は大きくない方が固定費も少なくて済みます。

IFAの限界③ 顧客のためにではなく自分のために働き始める人が出てくる

IFAの世界に飛び込む人はいきなりIFAというよりはどこかの会社からの転職の方が多いです。私自身は是非若い人に飛び込んでもらいたい世界ですけどね。現実には営業ノルマに押し潰されそうになってやってくる人もいます。実際、大手を辞めてIFAに移るだけで年収は何倍、などということも起こります。

最初の動機は、「売りたくない商品を顧客に勧めたくない」「ノルマのために顧客に損をさせるのが嫌だ」など顧客を意識したものだったにも関わらず、ちゃんと顧客ベースがあって生計が成り立つようになると、「新しい商品をとりあえず勧めてみて買ってくれる人がいればいいや」という姿勢に変わったり、「自分が獲得した顧客をなんとしてでも手放すまい」として自分以外の人を排除し始めたりという行動に出ます。独立したとはいえ、自己研鑽に励まなければいずれは顧客がいなくなるものです。

IFAの限界④ 厳しくなる金融規制に耐えられない人が出てくる

IFAの世界は金融業界ですから、リーマンショック以降の金融規制の厳格化をそれなりに受けています。銀行や証券会社では本人確認(KYC)の作業が煩雑になったり、マネーロンダリングへの監視が厳しくなり、通常の活動すら(一見理不尽に)制約されることが増えました。保険にしても証券にしてもライセンス活動というのはよりルールが細かくなり、読むだけでも一苦労なので、理解し実践できている人がどれくらいいるのでしょう。

規制対応というのは基本的に楽しくはありません、そのため規制の外で活動しようとする人が出てきますし、ちゃんとした活動をしていた人も耐えられずにライセンスを返納したり、あるいは規制の確認が不十分でライセンスを剥奪されたり、ということが起こります。規制が厳しすぎて何をやっているのか分からなくなりプライベートバンカーを辞め、ついでに金融業界から足を洗ったという方すらいらっしゃいます。それでも誰も何も言わないんだから、いいんだといって続けていれば、結局は業界から弾き出され、顧客とともに行き場を失います。

IFAの可能性はどのようなものか

IFAの可能性① 商品そのものと運用サービスは切り離せる

IFAと契約をする場合、登場人物は3人います。顧客と商品提供会社(保険会社、証券会社、銀行)、そしてIFAです。ただ、死亡保障や貯蓄型の保険の場合、顧客はIFAの顧客になったという意識は相対的に弱く、あるいは保険ファンドラップ(海外オフショア積立)を契約した場合、顧客はIFAの顧客になったという意識が強くなります。

ちなみに保険ファンドラップの場合、保険という“ハコ”そのものの販売と、“運用”というファンド選びのサービスは切り離すことができ、別の会社でも構いません。一見すると保険ファンドラップはそれ自体が一つの商品のように見えますが、パッケージとして販売しているにすぎないので、良い“ハコ=プラットフォーム”を提供することと、“運用”というサービスを良くすることに分かれてきます。

特に“運用”というサービスは担当者が提供するのか、IFAファームが提供するのか、あるいはさらに別の運用会社が提供するのか、などでも変わってきます。クライアントの側も提供されるサービスに対してシビアになることがIFA業界自体を良くすることに繋がります。

IFAの可能性② それぞれのIFAがそれぞれの道を歩む

IFAでいることの最も大きなメリットはそれぞれのIFA個人がそれぞれの道を歩めることでしょう。一緒に働いているように見えてもやはり目指しているところは違うものです。ただの仲介ビジネスだと割り切る人もいれば、顧客に適切なライフプランニングを提供する人もいます。保険だけを売っている人もいれば、プライベートバンクでの運用だけを提供する人もいます。人それぞれなのです。そしてそれがIFAの良さでもあります。クライアントの側もそのことを良く知り、適切なIFAに出会うということが大事になってきます。

IFAの可能性③ 時代に合わせてサービスを向上できるところが生き残る

IFAという業態自体がなくなることはありません。むしろこの業態が増えていくことが時代の流れでもあります。ただし、10年前のIFAと今のIFAが同じであるとは言えませんし、そしてこの先10年で変わっていくことも十分にあり得ます。資産運用業界も手数料無料化などのプレッシャーのなかで生き残りをかけて、しのぎを削っています。IFA業界も、AI運用、ロボアドバイザーとも差別化ができれば問題ないですし、しっかりと地に足をつけてビジネスをしている人、競争的な事業環境にしっかりとアンテナが立っている人が結局は生き残っていく、そんな気がします。そしてそこからより良いサービスが登場するのだと思います。

まとめ

総じて見てみると、地に足をつけて仕事をすることは一番大事なのではないかと思います。せっかく独立しているのに、生命保険や投資商品をさばくだけの単なるモノ売りに堕ちてしまえば、一時的に儲かることはあってもその先はありません。IFAとして生きていくこともまた「事業経営」ですから、結果として口コミが広がっていくようなサービスを提供していくことを目指したいものです。