私自身、お客様と話すなかで、どのような運用方針でやっていくのかを決めることはもちろん大事なのですが、同時に確認しておくべきことがもう一つがあります。それは、
「投資判断に関するお客様のスタンス」
です。
少し漠然とした言い方になってしまったので具体的に申し上げると、お客様にはざっくり3パターンいらっしゃいます。
- ① 投資判断は自分でする、だからお勧めの商品を提案してくれればいい
- ② 投資判断は自分でやりたい、だが、別の視点という意味で相談には乗って欲しい
- ③ 投資判断は自分では難しいと思う、だから任せて自分は手放しでいたい
どのパターンもお客様ではあり、そしてどのスタンスもまた否定されるものではありません。それぞれのパターンの方につき、アドバイザーとどのような会話をすればより有意義か、ということを話してみます。
目次
投資判断に関するスタンス
パターン① 投資判断は自分でする、だからお勧めの商品を提案してくれればいい
そもそも自分で商品を見つけられる人に関しては①に入らないわけですが、一方で投資に関しては他人から情報を得ることにも価値を見出しています。
一つは「勧められたものがいい商品だったらいい、そうでなければ断る」というスタンスですね。
ただ、もう少し緩く、投資は自己責任だと思っているから、他人が判断したことの責任は取れないので、こうしている、という方もいます。
「勧められたものについては話を聞き、よほどのことがなければそのまま受け入れる」というスタンスもあり得ます。また、自分で商品を見つけたが、誰かを経由してしか手に入らないので、ただ仲介をして欲しい、というスタンスもあり得ます。
このパターンの場合、お客様自身のことについてあまり語らない方が多いように見受けられます。
アパレルショップに行って服を買うとして、流行のファッションについて聞く方法ももちろんありますが、「普段自分自身がどのようであるか」を伝えることで自分に合ったコーディネートが出てくるのと同じで、お客様自身のことについて語ることは意外と重要だったりします。
お客様のことを知らなければ、マネキンに着せてもいいか、あるいは自分がただ気に入っているファッションについて語るだけになってしまうわけです。
パターン② 投資判断は自分でやりたい、だが、別の視点という意味で相談には乗って欲しい
基本的には自分自身の判断に自信をもっている方が②に属します。投資についてもそれなりに経験があり、資産もあるケースです。この場合は、一人だけでなく何人かの人に意見を聞き、最終的な判断とすることが多いように思います。
このパターンはやや難しく、「本当に聞く必要があったか」という点をしっかり意識できている人は少ないように感じます。
特に顕著なのは「Aさんはこう言っていたがどう思うか」という質問の場合で、私はAさんのことも知らなければ、Aさんがなぜその話をお客様にしたのかについても知り得ません。つまり、Aさんに直接聞けば良かっただけなのに、なぜかその答えを違う人に求めていることがあるのです。
これは、Aさんとの関係を見直すことがまず第一と思います。これはAさん=ご自身である場合も当てはまります。自分がなぜそのように考えているのかが分かっていない場合ですね。
とはいえ、禅問答のような話でもいけないし、人間関係だってあるでしょうし、プライドだってあります。セカンドオピニオンを求めるのであれば、可能な限り情報をシェアしてフラットな相談内容にすると良いかと思います。
パターン③ 投資判断は自分では難しいと思う、だから任せて自分は手放しでいたい
自己責任の投資を他人に任せる、と言うとハードルが高く感じるかもしれませんが、要は自分の代わりに管理をしてもらうだけであって、大袈裟に考えすぎてもいけません。
特に本業が忙しい経営者などは、気づいたらお金が貯まっていて、運用に回っていないケースがあります。もちろん、任せるといっても、札束を持ってきてよろしくね、というのではなく、しっかりと任せられる人物と、しっかりとした仕組み(契約)を組むことが肝心です。
このパターンの場合、任せた以上はあまり気にしすぎないことがお客様自身にとってはプラスです。せっかく任せたのに日々気になってしまってというのでは意味がないからです。
一方で、忘れすぎることもよくありません。
しっかりと定期的に話ができるかどうか、そして納得のいく投資結果になっているのかどうかはチェックすることが大事であり、結果として任された側への緊張感を与えることになります。時とともに状況は変化しているわけですから。
アドバイザーの存在意義
アドバイザーの存在意義は金融商品の販売そのものからアドバイスの質へシフトしつつあります。
ひと昔前の香港IFAというのは、保険商品をたくさん販売することに重きをおいていたところが多かったように思います。
それなりに利回りもあるとなると保険に魅力を感じた人もいたかもしれませんがそれはあくまで保険の話であってIFAそのものの価値とは少し異なっています。
「ただ仲介するだけの存在ではなく、適切な金融アドバイスを提供する存在へ」
変わっていくことが必要だと感じています。
貯蓄好き、保険好きと言われる日本人も、「貯蓄から投資へ」という世の中の流れもあってか、投資のイロハを学びつつ、私のようなアドバイザーを上手く活用して資産を伸ばしていきたいと考える人が増え、利用者側の意識も変わっていっています。
自分だけのファイナンシャルアドバイザー
私が預かっているお客様のデータは、お医者さんのカルテのようなもの。過去の取引履歴や契約時の面談の状況などが蓄積されていきます。
それをもとに様々な相談に乗るわけで、もちろん長い付き合いのお客様がいれば、そういった情報は頭の中にインプットされていることになります。あるいは家族には話しづらい仕事の悩み、家族の悩みについて打ち明けられる場合だってあります。
あらゆる情報を総合的に勘案して、そのときどきに合ったベストな選択をできる可能性がある、このことがファイナンシャルアドバイザーの意味です。
ファイナンシャルアドバイザーとの相性
ファイナンシャルアドバイザーがどこか医者によく似ているなと思っていただけたなら、様々な“クリニック=業者”を回ることをオススメします。
多分一人ひとり全く違ったアプローチをしてくれることでしょう。
金融業者の場合、物理的に近くにいる必要が必ずしもないので、お客様から見れば選択肢が多くなってしまう可能性がありますが、ご自身にパチっとハマるところがあればそこに落ち着けば良いのではないでしょうか。
ご自身の投資経験ともに、しっかりした資産とその履歴が残っていく、それが年齢を経るにつれて宝になっていくことを願っています。