「誰かちゃんとした人に聞いてみたい」そう思う人は多いはずですが、専門家に相談をする/専門家として相談を受ける場合に、無料なのか有料なのかでどのような違いが出る可能性があるか、という点について解説します。
私自身は独立系ファイナンシャルプランナー/プライベートバンカーとしての視点からですが、話の内容自体は、弁護士や税理士など、様々な専門家に当てはまるものと思いますので、参考にしてみるといいかもしれません。
目次
無料相談の注意点
皆さんは銀行や証券会社に行って、何かサービスの説明を受けたときに、
「では、今までの会話は、○○円になります。」
というような請求をされたことはあるでしょうか。たぶん、というか普通に考えてないですね。
もし、気軽に行って話した結果、後から請求されようものなら、トラブルにすら発展する可能性がありそうです。
しかしながら、相手は仕事をしていますから、あなたが顧客であるならば相手にとっては労働時間です。本来であれば売上に繋がるであろう時間を専有したのに、何も料金が発生しないのは何故でしょうか。
一つはただ単に相手が雇われであって、売上を気にしていないケース、もう一つはその無料相談の結果、何割かの確率で売上になることが見込まれているケースといったところ。
趣味の領域になっている人もひょっとしたらそうかもしれませんが、いずれにしても仕事である以上は、やはり売上が立つに越したことはありません。
もし売上が立たなくてもいいというケースがあるとすれば、その相手自体は体がよくても、その背後には売上を求める主がいる、ことが想定されます。
無料相談の注意点は、相談そのものに価値(=売上)がある、つまり相談することで何かが生まれると、お互いに認識していないことです。ある意味変な話です。
ですから、相談を受ける側が無料であると謳うということは、背後にキャッシュポイントが存在し、それゆえに誘導バイアスのかかったものになることはあり得ます。
もちろん相談行為に値段をつけることは簡単ではない、ということもあるかもしれませんが、誘導バイアスがあるのであれば、初めからボタンの掛け違いをしているような気もしないではなりません。
定額料金での相談
有料相談において最も分かりやすいのは定額での相談です。
上述したように、相談行為に値段をつけることが簡単ではないなかで定額での相談をしているとすれば、顧客からの相談内容がある程度定式化されている、あるいは主導権をとって教えられる立場にあることが想定されます。
塾講師のような存在をイメージすると分かりやすいかもしれません。セミナーなどもある種、定式化されているから価格が設定できるのです。
タイムチャージというシステム
弁護士などの専門職の領域で一般的なのはタイムチャージです。1時間あたり○万円、といった請求の仕方をします。
恐らくですが、個人での相談において、タイムチャージは相対的には少なく、より企業間の対応においてよく見られるフィー体系のように思います。
ある程度作業がかかることを知っておりそれに対して予算組みができていなければ、一見すると膨大な請求額になり、顧客側が途中で破綻します。
顧客としての立場からすると
私個人が顧客の立場だったとすると無料であることを期待するとき、というのは確かにあります。どんなときなのか考えてみると、①相談内容自体が大したことはないと自分で思っているとき、②有料だと言われる手前くらいで引けばいいと思っているとき、などでしょうか。
やってしまった後で自分でもケチ臭いなぁと思いますが、やはり人間ですから気軽に聞ける相手がいれば嬉しいです。もう少し考えるのであれば、相談は無料で満足したが、次にビジネスになりそうな話があれば、その相手に持っていこうか、と思ってそのときは過ごす、ことはあるかもしれません。(でも、次のビジネスは多くの場合は都合よくやってきません。)
専門家としての立場からすると
逆に専門家の立場からすると、無料で提供しているものに関しては、相談のゴール地点が必ずしも定まっていないので、何をもって顧客が満足したか、を図る術は多くありません。途中で相談から離脱されるケースも多いからですね。なぜこのようなことが起こるか、という点に関して私は次のように思っています。
無料相談にこだわる人は
- 何を相談したらいいのか自分でも分かっていない
- 何を相談したいのか決め切れていない
- 聞くべきことが決まっていて、ただ確かめたかっただけ
仲が良ければ無料でということもしばしばありますからバッサリ区切れるものとは限りませんし、このことが悪いわけではありませんし、無料相談を通じてその先の道筋が見えてくることもあります。少なくとも無料相談をする以上は次に何を相談すべきかがはっきりさせられたらと私は思っています。
私自身のファイナンシャルプランニングのプロセスにも有料の箇所はあります。こちらがプロフェッショナルサービスを提供することに対する対価という見方はできますが、驚くべきことに、顧客側での作業というのがそれなりに伴います。顧客自身が様々なことを考え、そして顧客から様々な情報を提供してもらい、そしてアウトプットを一緒に作り上げていきます。
お金をもらっておきながら顧客に作業させるとはどういうことなのだろう、と私自身不思議に思ったことがありますが、そうではないのです。顧客自身がアウトプットに対してコミットメントをしてくれるので自然とこちら側のより価値のあるプロフェッショナルサービスが引き出されていくのです。無料でやっていれば表面的に留まったものが、顧客の協力により一次元高いサービスへと変わっていくのです。
このことが、スポーツ選手がコーチに教わるにしても、コーチのせいで上手くならないと嘆くのではなく、選手自身が成長し、必然的にコーチの指導の内容が深くなっていくのと同じです。当事者としての意識が芽生えてはじめて、有料であったにも関わらずペイする、ということが起こるわけです。
最後にまとめると、
あなた自身がその専門家と一緒に作り出すアウトプットにコミットメントできると思ったとき、有料相談を選ぶべき
とここでは結論付けておきたいと思います。