FOMOというのは、Fear of Missing Out(取り残される恐怖)の略で、
「チャンスを逃したという感覚」
である。
株の取引をはじめとして気軽に投資ができるようになった今日、いかなる投資家もこの心理に立ち向かい、そして上手く付き合っていく必要がある。資産運用におけるFOMOという心理は一体どのようなものなのだろうか。
目次
FOMOを超越できるか
FOMOは結局のところ同調圧力でもある。日常生活にはつきものではないだろうか。流行に乗り遅れること、テクノロジーへの順応もそうかもしれない。
「みんなそうしている。」「いずれみんなそうなる。」「今ならまだ間に合う。」
こんな気持ちから何かアクションをしたことは誰しもあるのではないだろうか。そしてそれをいち早く感じ取り動いた人には“先見の明があった”あるいは“あの人の言っていた通りになった”として賞賛することすらある。
つまり、FOMO自体はどこにでもあるのだ。
投資の世界にも、
人よりも先に動くことが利益となる=先行者利益
が存在することも知識としては知っていて、今それがこの瞬間なのではないかと感じ始めることがあるのだ。
実際、金融市場の至るところにFOMOがある。株価のチャートを見ることもまたFOMOを喚起する。
「あのときこの株を買っていれば」「トレンドが生まれた今こそ買いだ」
などである。
あるいはFOMOを知ってしまった後は、それを制御するために情報収集をした結果、GoogleやSNSで表示される内容がパーソナライズされ、結局投資を煽られてしまう、というのも今日的な現象かもしれない。
話題のツイートを追いかけて楽しむことにしている人もいるだろうし、特定のYoutubeチャンネルを登録して日常生活の一部としていることもあるだろう。近年、FOMOについて語る人が多いのはこういったメディアに結びついた習慣の定着にも由来しているのかもしれない。
だが、投資におけるFOMOは、潜在するリスクを過小評価し、結果として後々の大きな損失をもたらすことが大きい。
だから、FOMOを知り、立ち向かい、そして上手く付き合うことが必要になる。
FOMOの顕著な例としてのビットコイン
「かの有名なイーロン・マスクがビットコインについてコメントしたからビットコインの価格が動いた。今や優秀な経営者たちがビットコインへの投資を検討し、必ずそのうちの誰かは前向きになるに決まっている、だから追い風でしかない。だったらニュースが出る前に買っておくべきだ」
FOMOとはこんな具合である。
あるいは、ほとんど価値のなかったビットコインが数年という極めて短いスパンで莫大な富となり、億り人が大量発生するということが現実になると、資産運用とはそのような「人生一発逆転」をもたらすものと思うかもしれない。次こそは自分がビットコイン長者だと。
FOMOとは人間の心理への揺さぶりであり、泰然自若としていられるほどに普通の人は強くない。
人間は行動するためにいつも何らかの“言い訳”が必要だ。自分で何から何まで意思決定できる人は多くない。行動に対する言い訳は外から与えられることが多いのも事実である。
現実にはFOMOを超越するのは容易ではなく、FOMOそのものを無視するしかない、あるいはFOMOというストレスを他人に話して緩和してもらうしかない、ということもあろう。FOMOのことが嫌いになって、資産運用から離れたり、あるいは世の中から距離をおきたくなる人だっている。
FOMOを感じることはよいきっかけになる
FOMOから逃げるのはどうだろう。少しもったいない気はする。
FOMOをきっかけに、資産運用をよく知ろうと思うことは肯定できる。なぜなら、資産運用をしていれば未来がどうなるかをイメージすることに繋がるからである。それは相場が上がったり下がったりするものだということの実感でもある。
FOMOを感じたならば、周りの人やニュース、SNSがどのような反応をしているかを見渡してみるとよい。様々な人がポジショントークをし、そして歓喜と恐怖があふれていることにも目がいくだろう。
そうして客観的に見えるようになったならばFOMOの心理と向き合う準備ができている。
2020年3月の金融市場の大暴落を見て、これまで一度も資産運用に興味を持っていなかった人も興味を持つようになったのではないだろうか。何事もきっかけというのは大事だ。
FOMOは一生に一度しか起きない現象ではなく、日常的に存在する。
何らかの資産運用をしていたのであれば、いつか相場が下がるときも経験する。FOMOは自分のせいではない。誰もが経験をする。そのときに自分が資産運用を続けるために何ができるかを考えてみるとよい、あるいは何のために資産運用をしているのかを考えてみるとよい。人によってこのプロセスは異なっていよう。単に息抜きをするのでもいいかもしれない。FOMOとは心理なのだ。現実ではない。
人生のある時期において、幸運を味方につけ、投資に成功したという人に出会うこともあるかもしれない。しかし、人間というのは成功体験を語りやすく、失敗体験は本人ですら覚えていないことが多い。
資産運用を20年も続ければ不況も1回や2回はくる。それに金融市場にはブラックスワンだって現れる。ただ、それらは個人の努力で避けられるものではない。だから、失敗したと責めても仕方ない。次こそは上手く・・いや、立ち向かう相手を間違えてはいけない。
例えば、量的緩和の時代だからといって中央銀行相場への過剰な期待はもってはならない。中央銀行が過剰流動性相場をソフトランディングをさせるだろうという過剰な期待をもってはならない。アメリカの大統領が誰になろうと株式市場から離れる必要はない。もちろん、ある大統領が高いリターンをもたらして、またある大統領がそこまでではないリターンをもたらす可能性はある。が、では4年後に向けてまたポジションを作るのか、恐らく多くの投資家はそうではない。
根拠のない自信は崩れたときに自分の心を蝕む。カジノでお金がなくなったら退場するしかない。そのときは飽きたと言って自分を納得させるしかないのだ。しかし、資産運用はずっと付き合っていかないといけない。投資家として大事なことは、金融市場から自分自身を退出させるほどのリスクを引き受けてはいけないのだ。
「投資に成功する秘訣は自分と向き合うことである。」