米国を始めとした先進国が新型コロナの流行で行った大規模な金融緩和を引き揚げるフェーズに来ている。特に世界の基軸通貨たる米ドルの利上げは世界的なマネーフローにも影響を与えるとされる。本稿では、利上げは債券投資家にとって悪夢か、という観点で話をしてみたい。

債券ファンドから流出する資金

2022年には米国で利上げが開始される、というのは随分前からあった観測である。2022年に入ることから話題になっているのはそのペースであり、回数である。結局、米国ではマイナス金利を導入することはなかったものの、ゼロ金利政策が行われ、そして今後は経済の正常化とともに、金利を上げていくことがセオリーである。

金利が上昇すれば発行済みの債券の価値は下落する

このことは理解できているだろうか。

債券ファンドは発行済みの債券を保有しているので、したがってファンドの時価は下がることになる。だから価値が下がる前に資金を抜いてしまおうというものである。実際に、金利上昇を予期して債券ファンドから資金が流出する状況は観測されている、とされる。

ポイントは、金利が上昇するとしてそれが、それまで想定されていたもの以上かどうか、である。想定通りの金利上昇は少なくとも織り込み済みである。利上げをしたという事実でもって債券の価値が下落する、とまでは言えない。

現物社債を保有し続けるかどうか

債券ファンドの場合、ファンドから資金が流出した場合、それに合わせて資産を売却しなければならず、したがって評価損益の確定が行われる。簡単にいえば、資金流出=損切り/利益確定である面がある。実際の投資ポートフォリオの状況がどうかなど関係ない。

一方で、現物社債の場合、個々の投資家が売却を判断できるので、金利の先行きを見ながら保有継続をするのかどうか、という話になる。もともと満期保有だったもので評価損が出たとしても本来予定していた満期保有利回りまで損なわれているわけではない。

債券価格が下がるということは、同じ債券をより安く(より高い利回りで)買える、ということではある。少し損をした気分にはなるかもしれないが、上手く債券の満期を迎えられたなら、より高い利回りで再投資ができることを喜ぶべきだ。債券投資においてマチュリティラダー(満期の分散)をすべき理由はここにある。

利上げが継続的に行われる状況においては、一般には満期までの期間が短い債券への投資が好まれる。なぜなら、満期までの期間が長いほど利上げの影響は大きいからだ。債券投資を続けるにしても、満期の短い債券へ切り替え、利上げが落ち着いたところでより満期の長い債券へ投資する、といったことはしばしば行われる。

保険の予定利率への影響はあるか

ちょっと視点を変えてみる。債券に多く投資をする機関投資家といえば、保険会社である。

保険会社における資産と負債の管理の仕方にもよるが、債券を満期保有しているのであれば、時価での評価損は一時的に出るにしても、保険契約への影響は軽微と言えるかもしれない。予め低い予定利率での保険契約に紐づいているからだ。

では、金利の低いときに保険契約を締結するのはやめた方がいいのか。この答えはイエスでありノーである。

一つには、今後金利が上がる、そしてそれが予定利率の上昇に繋がるかどうかは分からないからだ。もしそれが分かるのなら保険会社は予定利率を下げたりはしない。金利の上昇ばかり見てしまうが、将来金利はもっと下がっているかもしれない。

では、新しい保険商品が出てきたり、保険の予定利率が上がることは考えられないのだろうか。これはもちろんあり得る。ただし、それがいつになるかは分からない。

ガソリンスタンドのガソリンの価格や銀行の住宅ローンの金利とよく似ていて、改定があるにしても一定のラグ(時間差)を伴うことが予想される。早くて四半期、遅ければ一年くらいではないだろうか。保険とは保障である。これを待てるというのであれば、そもそもその人は保障を必要としているのか、考えてみてもいいかもしれない。

利上げは債券投資家にとって悪夢か

利上げは債券投資家には喜ばしくない事象なのだろうか。必ずしもそうとはいえない。

債券投資は株式投資に比べれば安全である、だから分散投資ポートフォリオですら、リスク許容度が低くなる老後が近づくにつれ、債券投資の割合を増やすことを推奨される。

しかし、よく考えてみてもらいたい。

債券投資の割合を増やしたときの期待リターンはどれくらいだっただろうか。株式投資よりも低い、ただ変動率も低い、という話だった。それが現金に近かったとしたら果たして老後の生活を支えるだけのリターンを稼ぐことができただろうか。

利上げが行われるということは世の中全体でのリスクフリー(無リスク)の利回りが上昇することを意味する。したがって、どのような投資家も最低のリターンとして想定できるものが上昇する。つまり、底上げである。

底が上がることはいつもハッピーかというとそうでもなく、新興国のようにインフレーション(物価上昇)を抑え込むための非常に大きな利上げを行うといった状況はそもそも健全な経済の状態とは必ずしもいえない。通貨価値も大きく動いては事業継続に赤信号が灯っておかしくない。

適度な利上げを行うことが人や企業が様々な計画を行う上で重要なわけだ。

結果として、利回りが極度に低いせいで株式に集中した資金もいずれ債券市場に戻ってきて、金利水準もそして世の中のお金の巡りも正常化される。債券投資家もそれに見合ったフェアなリターンを稼げるようになっていくわけだ。

一時的には資産高というお祭りの終焉のように映ってしまうかもしれないが、やはり、世の中に金利は必要である。利上げで逃げ惑うのではなく、利上げがもたらす効用も知り、落ち着いて運用環境を眺めていたいものである。

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