2021年ももうすぐ終わりですね。年間を通してウィズコロナの状態が継続し、不透明感が非常に強いなかでしたが、どちらかといえば、資産運用環境としては悪くなかった、という感想をもった人も多いのではないでしょうか。2021年の金融市場について振り返ってみようと思います。

2021年のメインシナリオは?

2021年のビッグイベントとして、当初はやはり新型コロナウィルスの収束を希望的観測として挙げました。

ただ、残念ながら、1年経った今もウィズコロナである状態は変わっていません。

WHOの緊急事態宣言は解除されないにせよ、パンデミック(Pandemic)と呼ばれる世界的感染流行のフェーズは終了し、エンデミック(Endemic)と呼ばれる特定の地域内で起こる周期的な感染へと移行することが期待されましたが、現時点では実現していません。

したがって、大型のテクノロジー企業への資本流入という大きな流れは変わらず、米国の株式市場全体を牽引する存在となりました。

逆に、セクターローテーションも急速には進まず、一度大きく下がった株を買ったからといって上がるわけではない、ということも経験した人は多かったのではないかと思います。

2021年のブラックスワンは?

2021年のブラックスワンとして、私からは原油価格が上昇するオイル・ショックを挙げてみました。

結果的には、原油価格が高騰した水準までは到達しましたが、ショックと呼べるほどには現状なっていません。産油国としても原油価格の上昇によって財政的には安定したでしょうし、トランプ米政権時代のような“政治の駆け引き”が行いづらくなったというのはあるかもしれません。

拡張的な財政政策のなかで、インフレーションが加速し、そのドライバーとして原油価格の上昇があったのは確かですが、このインフレーションが果たして一時的なものなのか、あるいは持続的なものなのか、問われることになっています。

本来的には、インフレーションの加速はやはり金融引き締めへのトリガーとなり得るので、グロース株(成長株)やあるいはベンチャー企業への資金流入などが反転するきっかけとはなり得ます。

ただ、現状はそこまで織り込みが進んでいないのは、コロナの収束が見えづらいこと、インフレの持続性を判断しづらいことなどが挙げられますし、何より金融緩和により市場に供給されている資金の量がこれまでとは全く異なる次元に来ている、というのはあると考えられます。

株価が大幅に調整した中国

2021年に起きた波の中で最も大きかったのは中国だと感じた人も多いのではないでしょうか。実際、中国の旧正月である2月頃までは中国株式市場は非常に良かったですし、米国のように巨大なテック企業が現れて経済を大きく牽引しました。

ただ、その後は中国当局側が規制強化に乗り出し、テック企業をはじめ、教育関係や不動産関係、あるいはマカオのカジノ関係にまで「共同富裕」という考え方のもとに広く関与を始めました。

足元は米国に上場する中国企業へもスポットライトが当たっており、多くの企業が香港ないし中国本土への回帰を余儀なくされる可能性も出てきています。

中国・香港株式市場としても先行きの不透明感や景気の減速感を折り込む形で、大幅に株価が調整する年となりました。新興国セクターの筆頭である中国のムード反転を望む投資家も多いのは事実です。

香港は政情としては落ち着きを取り戻しつつあり、恐らく次のテーマは台湾であり、東アジアにおける各国の攻防に移ってきています。そのなかで、2022年に北京オリンピック、そして習近平国家首席の3期目続投に向けた布石がいくつか出てきているのは確かでしょう。

ポストコロナは見えたか

2020年に続き、2021年も金融市場を揺さぶり続けた新型コロナですが、果たしてポストコロナを見通すことはできるのでしょうか。

ワクチンがより広く世界に浸透し、かつ治療薬も承認されつつありますから、人類としてはここにコロナの収束を期待するしかありません。とはいえすぐにウィルスが消えていなくなるわけではありませんから、2024年頃までは何らか残り続けるという観測もあります。

日本の場合、コロナにおいてもインフレの急進には見舞われておらず、日銀としても物価の明確な上昇を認識していないとされていますから、ここは諸外国と明確な分岐点であると考えられます。その中でインフレを目標にしながら引き続き金融政策のあり方について議論が進められています。

一方、インフレに見舞われた諸外国に関しては、やはりポストコロナの世界は景気刺激策も意識しつつインフレの抑制に取り組むということになるでしょう。

まとめ

従来より“アジアの成長”は市場の一つのテーマでしたが、それが株価上昇として現れるには2021年はややタフな環境だったようにも思います。アジアの成長というトレンドが変わったわけではありませんが、ただ、巨大な資本市場を抱える米国が群を抜いて成長したことは間違いありません。

金融市場のボラティリティも以前よりは増しましたが、株高の恩恵を受けて資産を大きく伸ばした方々も多いのではないでしょうか。

未曾有のゼロ金利からはいずれにしても抜け出すタイミングがきますから、この株高のトレンドが続くのかどうか、2022年への大きな課題提起となりそうです。

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