パンドラ文書が再びタックスヘイブンを利用する富裕層の秘密を世に知らしめた。

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、世界91か国・地域の330人以上の政府高官らが、タックスヘイブン(租税回避地)に設立した法人を使って行った取引について公表した。これをパンドラ文書と呼ぶ。それ以外にも、富豪や有名モデル、スポーツ選手、医師など幅広い名前が連なっているようだ。

パンドラ文書に含まれた租税回避地は、英領ヴァージン諸島(BVI)、セーシェル、香港、シンガポール、ペリーズ、パナマ、スイス、米サウスダコタ州などであり、これらの地域に設立されたオフショアカンパニー及び、その最終受益者に関する情報である。

Pandora Papers

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)

パンドラ文書が世の中に問題提起したものは大きいが、果たしてタックスヘイブンの存在意義はどこにあるのか、解説してみる。

度重なるリーク情報の存在

2016年のパナマ文書は世界を賑わせたが、その後もフィンセン文書、パラダイス文書、そして今回のパンドラ文書と、リークが続いている。ICIJに絡むのは世界の報道機関であり、その情報はオフショア地域での業務に携わる会社の内部文書である。ただ、それは本来、機密文書に該当するものだ。

ただ、これらはゴシップでもなんでもなく、事実の公表にすぎないとしている点である。

事実であるならば、読んだものの解釈に委ねられるわけだ。報道の自由はここにあると言えよう。

一方で、どこからどこまでが真実であるか、は正直に言って一般の人には分かりづらいものだ。

報道の“正義”はどこにあるのか

ICIJのような組織が、報道を行う意味はどこにあるのだろうか。タックスヘイブンを利用する人の多くは、富裕層か権力者か、大企業かであり、彼らが社会に対して与えるインパクトは大きい。

その彼らが本来発生し得る税の負担を減らす術を持っていることが「不公平」である、という考え方は根強い。

国をまたいだ取引である以上、報道を通じて国際社会に訴えかける方法でしか、何かを変えることはできないとしたら、ここに報道の正義を認める向きもあろう。

進むタックスヘイブンの情報取得

タックスヘイブンにおいても、あるいは日本であっても法人の最終支配者に関する情報取得は進んでいる。

それは国際取引が進展するにつれて、法人を用いることで、複雑なストラクチャーが成立し、背後にいて重要な意思決定を行う主体が見落とされがちだからだ。

これは税金の問題に限った話ではないし、場合によっては国家の安全に関わる可能性だってあるからだ。

かつてに比べればタックスヘイブンにおける情報は透明性が増してはいるし、これを報道することで“リーク”というのは必ずしも正しくない。頑張れば調べられるものもなかにはあるからだ。

一方、ICIJの公表する文書の信憑性を高めるのは、それに携わった法律事務所など、本来であれば顧客情報を漏らすことのない人たちからの情報がもとになっているとする点だ。

文書そのものが違法性を指摘しているとは限らない

タックスヘイブンの利用自体が違法であるとは限らないし、その先に脱税という行為が潜んでいるとも限らない。

リーク記事だけを見て、「あぁ悪いことをしている」というのは一般の人が抱くファーストインプレッションに過ぎない面はある。

実際、一般に投資をするにあたって例えば英領ケイマン諸島を利用しているかもしれないし、あなたの保険を提供する保険会社はバミューダ諸島に登記されているかもしれないからだ。タックスヘイブンは日常のサービスの中にだってある。

ただし、タックスヘイブンのような、秘匿性が高いと思われがちな地域が、マネーロンダリングやテロ資金に利用される可能性が相対的に高い、というのはあながち外れてはいない。

国際社会が問うべきは、結局のところ、正当なお金の流れ、であるかどうかである。パンドラ文書が政府高官などを中心に取り上げるのはそのあたりに理由があるのだろう。

国際社会は「透明性」と「説明責任」を問うている。これに尽きるのかもしれない。

そもそもなぜタックスヘイブンを利用するのか

恐らく人々は「何か他に事情があってそこを利用しなければならなかったのだとしたら納得する」と答えるだろうが、タックスヘイブンを利用する理由は、単純に税金が安いからであることが多い。それ以外に大きな理由はないことがほとんどだ。

もちろん、バーチャルな会社が設立しやすいなどもあるかもしれないが、実業を営むほど、オフショアカンパニーを直接の事業主体として利用することにはメリットを見出しづらい。せいぜい持株会社として利用し、子会社をそれぞれの国で設立するくらい、である、とも言えよう。

実態のない法人をしかも海外に持つことの正当性を保つのは容易なことではないし、法人としての活動である以上、そのタックスヘイブンにあるその法人でなければならない理由は概ね見当たらない。逆に、オフショアカンパニーではダメな理由もないといえばない、が、社会からの風当たりが強くなりがちであることも認めざるを得ない。

タックスヘイブンの存在意義

批判をもって受け止められがちなタックスヘイブンもまた、利用されているのであれば存在意義がある、ということになる。存在意義がないものは自然と淘汰されるからだ。ではなぜタックスヘイブンは存在しているのか。

政治家や有名人は往々にして資産家である、というのは想像に難くないが、一方でどのくらいの資産をもっているか、という情報もまた衆目の関心事であると言える。

政治家の場合は、資産を公表しなければならない例もあるし、有名人ならいずれ豪邸の場所はマスコミに知られる。資産家でなかったとしても、自分の財布の中身を他人に見せびらかす人はいない。

常に公の場にいる彼らだからこそ、たまのプライベートは海外で人目を避けて暮らすし、あるいは資産の扱いもまたそうなのかもしれない。

資産家のなかにはオフショア地域を上手く利用して、ご自身の思う通りのチャリティ活動(慈善活動)に勤しむ人だっている。

お金は使う人によって役割を変える、結局はそのようなものなのかもしれない。

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