高学歴、高収入、高属性、自らを世の中一般と比べて比較的優位にいると認識している人ほど、自らのお金の課題に気づいていない傾向がある、という話を本稿ではしてみたい。

ミドルアッパー層

上場企業の管理職や、公務員、医者など、世帯年収が1,000万円〜3,000万円程度の層をミドルアッパー層と呼ぶ。仕事にも困っておらず、家庭や育児に対する十分なサポートをできるだけの収入があり、世の中一般と比べると現役時代の生活は比較的優位にあると言える。日本でいうならば、所得税に最も悩む層かもしれない。

収入が高いことは経済的裕福であるための一つの要素であることは間違いないが、余裕があるときほど人は焦って何かをすることもなく、日々満足して、先々の計画が疎かになる、という傾向はある。稼げているのだから、一生懸命稼ぐことに集中すればよい、というのは確かに一つの解ではあるが、よりより形は何かを考えるのを放棄してはいけない。

何もしなくてもすぐには困らない

ミドルアッパー層の特徴として、今は困っていない、という感覚があるのが大きい。

生活を切り詰めねばならぬほど、家族に経済的な我慢をさせていることは恐らくないし、独身であるならば行きたいところに行き、遊んでお金を使うこともできるくらいの財力にはなる。

周りと比べて極端に敗北感を感じることもない。ミドルアッパー層を超える方々の場合、何か一芸に秀でていたり、自ら率先して事業などをやっている場合など、それなりに稼ぐ理由がよく見えるからである。同じ土俵にいない彼らに憧れたり、比較されたりという心配もない。

日々安心して暮らせることは一つのチェックポイントではあるから、何もしなくてもすぐに困らない、というのは大事なことではある。ただ、気持ちに余裕があると、そうでない人に比べると一生懸命に何か調べてアクションを起こしたりということは減ってくるのも事実のようである。

ミドルアッパー層にとって備えるべきは、今ある余裕をしっかりと有効活用することである。収入は経済的裕福さの一つの指標であるが、逆にいえば一つでしかない。

老後の選択肢を増やす

今経済的に困っていないということは、何かを我慢することなく将来に備えるための余裕があることを意味する。このことは非常に重要で、今の生活に必要な部分以外のお金を意識的に活用してあげる必要がある。今必要でないならばまずは考えることは将来であり、多くの場合は、老後の備えに素直に回してあげることになる。

あなたが生涯現役で働くと心に決めているようなタイプの人であっても、今ある余裕は上手に繰り延べてあげる必要がある。引退直前まで年収が上がり続ける人というのは多くないし、強いていうならば必死で働く、というよりは時間にゆとりをもってやりたい仕事をやりたいだけやる、ということを考えるようになる人もいる。

そのときに、単に年収が高いことだけではなく、やりたいことを優先するための選択肢を確保することが大事だし、老後はさらに働いていないわけだから、贅沢はしないにせよ、毎日家計を切り詰めることばかり考えていては楽しい老後にもならない。

ライフプランニングに力を入れる

ミドルアッパー層は比較的余裕がある、という話をしたが、それは客観的にも想像しやすいものなのである。だから、様々なセールスを受けやすく、そしてそれを受け入れる財力もあるケースが多い。そういう状況だということをよく知った上でやるべきことは、セールスマンにより良い提案を持ってくるように言うことではなく、そもそもあなた自身がどのようなことに取り組むべきなのか、という尺度をはっきりと持つことである。

この点において非常に役に立つのはライフプランニングである、と言える。ライフプランニングを通じて考えるべきことは、何にいくら投資をするか、ではなく、どのようなことにお金を振り向けることがあなたがこれから描く未来にとってふさわしいのか、というもっと根本的な話である。

あなたにとって“十分”だと思える状態は一体どのようなものだろうか。何かあれば田舎で慎ましやかに、と言うが果たして実際にそうなって幸せと言えるのだろうか。

人によって答えは違っていて当たり前である。お金の使い方、時間の使い方、人との付き合い方、それをあなたらしく組み立てていくことに主体的になるタイミングなのである。

とりわけミドルアッパー層は仕事に育児にと忙しい層でもあるから、効率的に要点をまずは押さえ、方向性が間違っていないことの確認の方が重要である。

資産管理を身に付ける

収入を増やすことと、資産を増やすことは似て非なるアクティビティである。高収入でも全然資産がない人もいるし、低収入でも資産が多い人もいる。

大切なことは収入と資産のどちらにあなたの軸足がこれまで置かれてきたかを知ることである。多くの人は、収入が増えればそれに応じて資産が増えていき、いずれ資産が収入を上回ってくる。したがって、それに合わせてお金に関して取り組むべきことの重点が変わることになる。

もしあなたがいる位置が変わっていない感覚があるのであれば、まずやるべきことは資産管理について身に付けることである。

人によってはこの移行がスムーズにいかない。手元にお金があるとついつい使ってしまう人や、収入がそれなりにあるが、資産は預貯金のまま無造作に置かれている場合などである。資産は働いてできた偶然の産物のような形になっていて、何のためにあるのか、が明確化されていないのでこのような状態になる。

ミドルアッパー層のお金の課題

ミドルアッパー層にとっての課題は、収入と支出、資産や負債がそれぞれ将来的にどのような意味を持ってくるのかを知り、意識的に取り組むべき課題に目を向けることである。年収という点だけでいえば、どこかで頭打ちになる感覚もあるだろうし、周りを見渡してロールモデルのような存在を追いかけているだけでは何かが足りないと感じてきているのではないだろうか。

収入がないわけでない、資産がないわけでない、だが何かを目指しているわけでもない、ただ何となく不安な気がしないでもない、そういう状態に陥っているならば、まずは脱却することが、仕事にもプライベートにもより良い影響を与えることは知っておくとよいだろう。

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