海外在住者というのは、異なる生活環境にも慣れることのできる柔軟な思考の持ち主である一方で、より多くのことを自力でやらざるを得ない局面があり、それを乗り越えられる人でもあります。情報が少ないこともあり、海外在住者として資産に関して勘違いしがちなポイントについて解説してみます。

前に住んでいた国は離れたのだから税金を払う必要はない

必ずしも正しくありません。現在物理的にその国におらず、かつ帰る意思もないからといって、税務上の非居住者であることが保証されるわけではありません。

第一に、仮に税務年度中に350日間を海外で過ごしたからといって、非居住者であると保証されもしないのです。

第二に、税務上の非居住者であり、かつ一度もその国に足を踏み入れたことがなかったとしても、その国の源泉所得に対しては納税義務が発生する可能性があります。

第三に、当時法的には税金を払わなくてよかったとしても、仮に帰国によって一時的な非居住者として遡及認定されるのであれば、非居住者期間中に発生した利益や収入について課税が発生し得ます。

自分はどこの国にも税金を納めていないし納めなくてよい

起こり得なくはないものの、ほぼ起こりません。近年見られる、ノマドやサイバージプシー、パーマネントトラベラーといった生き方は国から離れて自由を享受しているようにも聞こえます。複数の国での居住者認定にかかるルールを学び、知識とスタミナでもってどこの国の居住者にも認定されないということを試みる人はいます。絶えず国を移動し、複数の拠点をめぐりながら、それぞれの場所では数ヶ月しか過ごさないので、どこの国からも旅行者であるとみなされ、税務上の居住者から免除され得るのです。

しかし覚えていていただきたいのは、税務上、どこ国の居住者になるにしても、収入がある、あるいは資産がある場所において税金を払わねばならない可能性は残るということです。数年単位で海外で過ごしたとしても、帰国した折に、海外滞在中に実現した利益について税金が発生する可能性はあります。

財産は自分が選んだ人に承継することができる

どこの国に住み、資産がどこにあるかによります。コモンローなのかシビルローなのか、など法律のシステムが国ごとに異なるからです。コモンローの国においてはWill(遺言書)を残しておけば自由度は高いと言えますが、英語のWillが別の国で有効とされるかどうかは分かりません。

海外信託や保険証券の受益人指定であれば、検認裁判(プロベート)を回避した上で、受取人を指定できますし、公開情報であるWillに比べると、秘匿性を保った状態にすることも可能です。

お金に関することは黙っていれば分からない

人生を通じて、家族や友人を含め、お金に関することは概ねプライベートを維持することができます。ただ、死後にWillが公開情報となることを知っている人は多くありません。また、共通報告基準(CRS)により、海外資産の保有が違法でなかったとしても、他の国の税務当局への報告対象に上がってくるような時代になっているのです。

意図せずして、お金に関することが公開され得ることをリスクと考え、適切に対応をしておくことが望ましいと言えるでしょう。

海外在住者として自分のことは自分でやる

ヒトと資産が国をまたがって移動するときというのは、“正しい”状態に保つのが難しくなります。どのような手段が取り得るのか、そもそも今いる国と次の国の間で移動が可能なのか、した方がいいのか、という判断には本来、非常に高いスキルを要するものです。

仮に自分の力だけでやり切ろうとする場合、行動バイアスにより過信が起こりやすくなります。持っている知識を過大評価し、リスクを過小評価することで、コントロール可能なものと思いこみ、自分にとって都合のよい解釈に落ち着こうとします。そして自分に自信があると、判断を先送りにすることにつながります。世の中の変化のスピードは思っているより速いので、調べて出てくる情報は常に古い可能性が残ります。

第三者としてのアドバイザーの価値の再認識

以上のような事象はいつでも起こり得るもので、それゆえに、専門家から最新の、バイアスのかかっていない、独立したアドバイスを求める価値がある、と考えられます。自分で何とかする、というDIY的な発想は否定はされませんが、同時に物事を複雑にしてリスクを高める可能性もあるとは言えます。もちろん、ご自身の考え方を再確認する目的でも構いませんが、第三者としてのアドバイザーを入れることによってより安心して生活できる、という面はありますね。

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