最近話題に出やすくなっている住宅ローンの取り扱いについて基礎的なところを話してみたいと思う。
目次
固定化ができるのかどうか
住宅ローンには変動金利型と固定金利型が存在する。組み合わせたりする場合もある。
固定化した方が得なのか変動金利のままの方が得なのか、と悩む人はいるかもしれないが、そもそも多くの場合は、「現在の想定のままであれば」変動金利の方がお得である、という状態にある。
なぜなら、今度金利が変動するリスクを自分が負っているからである。逆に、今度金利が変動するリスクを相手に転嫁する、というのであれば、その対価を求められるので、固定化するとお得感は薄れるかに見える。したがって、固定化は「将来何も起こらないとしたら」という仮定のもとに判断するものではない、ということでもある。
同じような例だと、生命保険の死亡保障をイメージしてみるといい。「いつか死ぬかもしれない」というのは頭の片隅にあるにせよ「当面のところ死ぬ予定はない」と言い切れるのであれば、掛け捨ての保険料を払うのは得策ではない、と思う人もいるかもしれない。
ケガや病気に例えるのであれば、風邪を引くくらいならどうってことはないが、片足を失うのはダメージが大きい、そして、生計を支える人を失うことはさらに大きな経済的損失である、という具合である。金利上昇も大きくなるほどに、住宅ローンとしての家計への負担が大きくなるのである。ある程度は耐えられても、ある程度以上は支払い切れず、住宅を手放すことにも繋がる。
金利がどの程度変動し得るのか
金利変動の程度が問題だというのは分かったが、そもそも金利とはどの程度変動し得るのか、その当てがつけにくいというのがある。
ゼロ金利政策の名の下に、長らく銀行預金でさえまともに利息がつかない状態が続いたのだから、ピンとこないのも無理はない。ただ、金利は上がるときは上がる。0.25%ほどの違いで大きく上昇しただのと言っているうちに、5%くらい動くかもしれない。実に20倍の変化である。
でも、非現実的な話でも何でもない。金利がいつまでもゼロのままである、などという仮定そのものがおかしい。上がるかどうかを当てることはさほど重要ではない。
なぜなら、世の中全体として金利が将来的に上がると思っているのであれば、既に固定金利は大幅に上昇しているはずだからである。大事なのは、金利が変動した場合に家計にどのような負担がかかるのか、そのとき自分が取るであろう行動について事前に知っておくことである。
金利上昇が一時的なのかどうか
金利が上昇すれば住宅ローンの支払いの負担は増える。しかし、一時的な負担増であれば乗り切れる、というケースもあろう。金利上昇のペースが緩やかだと耐えられる、というケースもあろう。ただ、いつその負担が軽減されるのか、果たしてその時が来るのかを事前に予想することは難しい。
住宅が手軽に売買できるならともかく、諸々の手数料をかけながら、金利見通しに沿って小刻みに軌道修正するわけにもいかない。金利上昇が一時的である、という仮定を置くこと自体も実際には機能しないと言える。
借り換え機会は訪れるのか
住宅ローンを借りるときも他行比較をしたかもしれないが、金利が動くことで借り換え機会は訪れやすくなる、と言える。というのも、ローン金利の提示を通じて各銀行のスタンスが見えやすくなるからである。それに借り換え需要を取り込みたいと金融機関は考える。
固定の参照金利を積極的に出すところもあれば、ひたすら変動金利を出し続けるところもある。金利が動けば不動産ニーズ自体も変化するので、融資姿勢も合わせて変化する可能性が高い。それに借り換えを検討すること自体で損をすることはあまりない。一方、実際に借り換えをするとなると、各種手数料などの問題もあるので、慎重になる必要も出てくる。借り換えをした結果、場合によっては、数年間は住宅を売却しづらい、という状況に陥るかもしれない。先々のことを考えねばならない局面である。
住宅ローン契約を見直す
既に住宅ローン契約があるのであれば、まず最初にすべきことは契約の見直しである。借り入れを行った際には考えなかったこともあるかもしれない。住宅を売却して一括返済するとしたらどのような手続きになるのか、どのような費用がかかるのか。金利の種類を変更することはそもそも選択肢としてあるのか。金利が更改されるとしたらどのような頻度でどのような幅で行われるのか(もちろん、幅については金融機関ですら答えを持っていないかもしれないが)。
細かな条件について考えたとき、自分の結んだ契約がそれほど金利上昇に対して耐性がない、ということに気づくかもしれない。
その場合は、他の金融機関がどのような条件を提示しているのかを調べる良いきっかけになる。借り換えができるのかどうかを知っておくだけでも安心できるだろうし、あるいは家計に余裕があるのであれば、住宅ローンの返済を早めるような対応をするのも一つの方策かもしれない。
また、住宅ローン契約を続けていくにして、家計において、金利上昇が来ると正直きつい、というタイミングがあることに気付くかもしれない。金利上昇は世の中の変化であるため、自分ではコントロールしづらい。したがって、予め対策を打っておくことが必要である。
不安を取り除くために
世の中の経済環境の変化が不透明になると、不安が増すのは確かである。ただ、その変化に対してどのように対処ができるのかを知ると不安は軽減することができる。特に住宅に関しては家計に与える影響が相対的に大きいため、不安の度合いも大きい。優先して身につけるべきマネーリテラシーがここにもあるとは言える。自分だけでは何を考えて良いのか分からない、という人は、アドバイザーの力を借りてシミュレーションしてみるといいだろう。