最近では多くのことがオンラインで行えるようになりました。金融機関を利用するにしても、オンラインで銀行口座や証券口座を開き、保険もオンラインで購入する人もいます。

私の仕事においても、お客様の取引のオーダーはオンラインでできるようになり、そしてお客様もそれが実行されたことをオンラインで確認する、ということが起こりはじめています。

一方で、サイン(署名)はどうしても手書き(wet signature)でなければならない、のような障害もあるにはありますが、それすらも徐々に変わりつつあります。

果たして、オンライン・プライベートバンクはありえるでしょうか。

このような時代の流れの中でも、富裕層向けのビジネスであるプライベートバンキングにおいては、「対面」でのコミュニケーションの価値が再認識される、ということも見受けられます。一体何が違うのか、そしてどうあるべきなのか、ということを解説します。

対面で話すことによるメリット

対面で、というのがスカイプなどのリモート会議を含むか、というのは意見の分かれるところですが、ここでは、まさに顔と顔を付き合わせて、握手ができる距離にいることを想定しましょう。対面で話すことによるメリットは何でしょうか。

  • 相手の気分や感情がより正確に伝わる

画面や電話で伝わる情報は限られていますが、対面の場合はまさに五感を使うことでより多くの情報が得られることは間違いないでしょう。相手が緊張しているのか、話を退屈に思っているのか、あるいは何か疑問が生まれたのか、気をつけてみていると分かることはたくさんあります。

  • 挨拶やマナー、仕草など、話には出さない情報も得られる

話すことはもちろん目的であるかもしれませんが、表面を取り繕うのが上手い人も世の中にはいます。もちろん、相手が完璧な人物であることもいいかもしれませんが、何か弱点のようなものを見つけるのも、人としての安心感がある、かもしれません。

相手の着けている時計を見て人を判断する、という人もいますしね。また、詐欺師などもよっぽど言葉巧みな部類の人たちでしょうから、騙されないように会って確認したいという気持ちは分かります。

ただ、この場合、会ったから大丈夫、という逆の意味の安心感から騙される人も多いと聞きます。

対面にこだわることで生まれるデメリット

逆に、対面でなければならないとしたときに生まれるデメリットは何でしょうか。

  • 時間と場所を合わせることが難しくなる

もちろん、時間をかけて話すことは大切ですが、初めからそれを決めてかかってしまうと、次は時間と場所が合わずに、結果的に疎遠になってしまうことはあるでしょう。本末転倒といえばそうなります。二人であればまだいいですが、仕事仲間や家族などを一緒に呼び寄せるとしたら、日程調整はより難しくなります。

  • 時間をかけすぎることによる飽き

話す内容はコンパクトなのに、あえて移動時間をかけて会いにいく、ということによって、折角ならと話が長くなってしまうこともあります。あるいはわざわざ時間をかけたのに、という落胆も生まれるかもしれません。

話の長い営業は嫌われる、ということもあるように、時間をかければ良いというものでもないし、相手の懐に入りすぎてもダメなときもあります。

プライベートバンクには「お付き合い」という発想がある

資産家ともなればお付き合いする相手を選ぶ、ということが自然と行われます。

そうでなくてもビジネスをしている人であれば、どこの銀行を選ぶか、などでも頭を悩ませることがあるでしょう。どうせどこに行っても同じ取引ができるのだから、○○さんの方がいい、そういうことはあり得ます。

頑張っているから応援したい、という気持ちもあれば、ただ気が合うから、ということもあります。酒を酌み交わすことに意味を感じる方もいるでしょう。

長期的にお付き合いする価値のある相手か、というのも見定める必要があるでしょう。折角ならお互いを高め合える存在でありたいと考えるのは自然なことです。

ここがただ銀行口座や証券口座で「取引をするだけの関係」とは違ってきます。

オンライン・プライベートバンクはあり得るか

プライベートバンキング業界においても実際に「デジタル化」を評価する動きはあります。

書類の束を持ってくるようだと、“時代遅れ”とみなされ、顧客が離れていくこともあるでしょう。

かつては重厚な書類が一つのステータスであったかもしれませんが、それも世代とともに変わっていく気もします。

実際、オンライン・プライベートバンク (e-プライベートバンク)は技術的には可能です。ただ、そこに担当者としていかに付加価値をつけていくか、そのことが最も難しいパートであると言えます。

大事な価値をしっかり認識しながらも、乱暴になりすぎず、必要な変化だけを取り入れていく、そんな器用さが求められているのかもしれません。

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