ファイナンシャルアドバイザーの仕事は属人的な面が強い。会社やチーム、個人、それぞれをどのように受け止めるべきなのか。

ファイナンシャルアドバイザーを比較する

初めてファイナンシャルアドバイザーを利用しようとお考えになったお客様の中には、複数の会社を比較しようとする方がいらっしゃいます。

もちろんその発想は自然であり、単純に何が違っているのか知りたいからですね。私としても是非やっていただくことをお勧めしたいことでもあります。

一方で、何か欲しい商品があって、その商品がどうしても手に入らないと困るのであれば、そこにコンタクトすべきではあります。例えば私を通じてある商品が買えるか買えないかという質問であれば、もちろん買えるか買えないかはお答えできます。

ただ、そもそも仮に取り扱いがあったとしてもその方に合っていないと思えば提供することはありません。逆にお探しの特定のものはなくても、その方により合っているものは提供できるかもしれません。

ここに単なるブローカーなのか、ファイナンシャルアドバイザーなのかという違いを見出すことはできるでしょう。

IFAの属人性は現時点でピカイチ

独立系のファイナンシャルアドバイザーをIFAと呼びますが、IFAの属人性は非常に高いと思います。属人性というのは、担当者毎に提供する商品やサービス、顧客とのリレーションのあり方が異なっているということです。

一般的にIFAの世界ではそれぞれのお客様には担当者がつきます。そのため、ほとんどのケースでコンタクトは担当者にすることになりますから、IFA業界でも、お客様と担当者の相性は大事だと言われています。そういう意味では、独立系でない、日本でいうところの某P保険会社や某N証券の営業マンと何も変わりません。

誰から受けても変わらないはずのサービスを、その人からなら受けたい、そう思える、極めて属人的な世界がそこには待っています。

それゆえに、顧客はIFAを選ぶかもしれませんが、IFAもまた顧客を選ぶことがあります。

「IFAに会社は必要」重要度レベル☆

星一つに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、IFAというのはそもそも会社として大きくないことが多いですし、大きくなりすぎる必要もない組織です。

とことんこじんまりやっていくこともできます。基本的な機能とインフラが整っていれば問題ありません。

組織として大きくなると、有名にはなっていいかもしれませんが、結果として無駄なコストがたくさん生まれることだってあります。会社としての看板を意識しすぎて、柔軟なサービスを提供できない可能性だってあります。

アドバイザーが一人で抱えられるお客様にはそれなりに限界があるので会社として人数を増やして拡大するメリットがありそうですが、その分アドバイザーの質にばらつきが出るリスクもありますね。

ちゃんとした会社であればあるほど、会社選びは単なるチェックに終わる傾向があります。逆にその形式的なチェックで違和感を感じたならば、選択肢としてはなしなのでしょう。

「IFAにチームは必要」重要度レベル☆☆

IFAで働くアドバイザーには歩合制の人と給与制の人がいます。シニアになるほど既存のお客様へのフォローが仕事の大半になるというのもあり、ほぼほぼ歩合制に移行するようです。

歩合制の場合は、他のアドバイザーにお客様を取られたくない心理も働くので一人で動いている傾向があります。

お客様からよくいただく質問としては「担当者がいなくなったらどうすればいいのか」ですが、同じ会社の別のアドバイザーに引き継ぐことも、他のIFAに持ち込むことも技術的にはできます。

ただ、お客様として一歩踏み込んで確認をした方がいいのはお客様自身がどういう付き合いを望むかです。

チームがあっても恐らく最もお客様のことをよく分かっているのは担当者になりますので、チームで対応をされた結果、それぞれの人とは薄い付き合いになってしまう可能性はあります。あるいは事務的なやりとりに終始するかもしれません。

チームであるかどうかの確認は、万が一のときの対応について事前に考えることには繋がります。チームであろうとなかろうと、担当者がいなくなったらそれなりには困ります。

「IFAに個性は必要」重要度レベル☆☆☆☆

世の中では、AIを使った○○や、ロボアドバイザーが流行語のようになっていますが、IFAの世界に起こっているのは、対人コミュニケーションの重要性の再認識です。やっぱり人は人と会って話を聞きたいのだといいます。

もちろん、アルゴリズムなどの運用が世の中的に未成熟だからというのもあるのかもしれませんが、ロボットが代替できないのはやはり「個性」ですし、パーソナライズされたサービスです。

期待しているのはもちろん一部は資産運用のサービスなのかもしれませんが、それ以外にも、家族には言えない相談事だったり、従業員には言えない事業撤退に対する悩みを打ち明けられることだったりするわけです。

もちろん初めは、「このアドバイザーは信用できるのか」といったヒューマンタッチな部分もあるとは思います。一方で信頼関係ができあがったときには、アドバイザーを随分丁重に扱っていただくこともあり、どちらがクライアントなのか分からない、という気分になることすらあります。

「IFAにスキルは必要」重要度レベル※※※※※

個性はあっても根幹たる資産運用の成果がボロボロじゃあね、という呟きも聞こえてきそうなものですが、そもそもどのようなスキルを使ってアドバイザーが仕事をしているか、というのが本当にまちまちです。

本来お客様はIFAを”通じて”受けるサービスへの期待値を持ってIFAを訪ねてくるはずなのでアドバイザーの器量というのは極めて重要です。

本来であれば☆を5つつけて最上位にしたいところなのですが、ここがまだまだ業界として未成熟な点であり、ただ単に”関所で通行手数料を受け取る”のに近い働き方をしているケースがままあります。

もちろん良い商品を選別して仲介するのはそれだけで十分に価値のある行為だと思いますが、そこから派生できるサービスの裾野は本来もっと広いです。

単に保険商品を売るだけでなく、お客様に合ったオーダーメイドな資産運用を提案したり、あるいはプライベートファンドマネージャーとして代わりに運用したりすることもそうですし、お客様自身のビジネスを手伝う裏方として活躍することもできます。

表面的には必ずしも現れないアドバイザーの知識と経験、ネットワークの差が長くお付き合いするからこそ、お客様の人生を支える瞬間が必ず来ます。

毎年運用リターンが1%ずつ増えていくようなスキルの付け方は残念ながらできませんが、アドバイザーが成長することで結果的により大きな、広い意味での“リターン”が期待できる、とお考えの方もいます。私のような若いアドバイザーを指名するのも、そういう面はあると思っています。

属人的でないことを強みにする方法?

担当が変わっても、複数の人が担当しても同じサービスが提供できる、このような方向を目指すことは可能ではあります。その方が安心だという顧客もいるでしょう。会社としてもその方が事業継続におけるリスクは小さいかもしれません。

一方で、業務における属人性を排除するには、定型化をする必要があります。セールスの仕方、顧客対応、アフターフォロー、全てにマニュアルがあり、そして説明には会社が用意したプレゼン資料を使います。

大きな組織ほどリソースが豊富にあり、会社という看板や強い商品力を利用して営業をしている人が多いように見受けられます。

個性だけでなくスキルも必要な時代へ

将来はひょっとしたら違うかもしれませんが、やはり現時点でファイナンシャルアドバイザーは個性を活かした属人的な仕事であり、それが最もお客様を惹きつけることに繋がっているのだろうと考えられます。

私のようなアドバイザーもまた色々な個性を持ったお客様にお会いできることを楽しみに仕事をしている面があり、それこそが長いお付き合いにコミットする理由でもあります。

ただ、属人的であるといいながら、自らの成長をストップしてしまえば、短いお付き合いになってしまう可能性がある、ということで常に自分を戒めながら日々精進をしていきたいと思います。

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