昨今は、上場株式市場もそうですが、未上場の株式市場にも資金が大量に流入しています。今回は、一般には機関投資家向けに提供されている、プライベート・エクイティ(PE)に対して個人投資家として投資すべきか、という点を論じてみます。

プライベート・エクイティ(PE)とは

企業というのは、上場しているとパブリック、未上場だとプライベート、という大きな分類をされます。狭義にはプライベート・エクイティ(PE)とは未上場の企業の株式のことです。しかし、一般にはこのPEはリスクが高いので、投資をする際には、専門のファンドマネージャーのいるPEファンドを経由することが多いでしょう。

プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)とは、複数の大型投資家から集めた出資金(コミットメント)を元手に、事業会社の未公開株式や債券などの資産を取得し、会社経営への積極的な参画なども通じて企業価値(バリュエーション)を高め、最終的には売却することで高いリターンを得て、投資家に還元する戦略をとるファンドのことを言います。

PEファンドというと、株式だけなのかと思ってしまいますが、実際には、投資対象や戦略はファンドマネージャーによって様々であり、例えばベンチャーキャピタル、バイアウトファンド、企業再生ファンド、ディストレストファンドなどでも知られています。ひょっとしたら「ハゲタカ」のイメージがあるかもしれませんね。

PEファンドにおける投資資金は未上場企業に向かいますから、一度投資をすると流動性は低く、出口までは時間がかかります。したがって投資期間は5年〜10年は見ておく必要があり、リターンの実現のタイミングが必ずしも読めるわけではありません。リスク許容度や投資ホライズンに照らして、短期投資家は向いていない投資対象と言えます。

個人投資家としてのプライベート・エクイティ(PE)投資の可能性

先に述べた資金の性質からして、PE投資は機関投資家と、一部の富裕層にのみ提供されることが一般的です。PEファンドマネージャーとしても小口な資金を集めてファンド事務に忙殺されるわけにもいかず、リテール投資家は蚊帳の外というケースが多いでしょう。

ただ、最近はプライベート・エクイティ市場の拡がりもあり、徐々に一般の個人投資家にも出資のチャンスが回ってくるようになっています。

例えば、PE投資でも主流の米国では、米証券取引委員会(SEC)にて、個人投資家向けのPE投資へのアクセスが議論されていますし、PEファンド側もより幅広い投資家を集めることは歓迎する姿勢も見せています。シンガポールではシンガポール金融管理庁(MAS)が、個人投資家へのPE投資プラットフォームの認可を出したことも注目を浴びました。私のいる香港でもPE投資の機会はいくつか開かれています。

PE投資はタイミングが難しい

PE投資は未上場会社を扱いますから、基本的に投資の中身は予め分かりません。透明性という観点からすれば、通常であれば忌避すべきファンドということになるでしょう。しかし、その分ファンドと投資家の間にWin-Winの構造ができあがっており、高いリターンと、非伝統的資産(株式、債券)との低い相関が特筆すべきものとなっています。

PE投資の場合、投資の回収がいつになるのか分からないのと同様、実は投資(厳密にはコミットメント)のタイミングもファンドマネージャーに任せるしかありません。PEファンド自体がファンドレイズするタイミングに資金を用意できなければ投資に参加することもできないわけです。

分からないことだらけのPEファンドですから、ある程度の潤沢な資金をもとに、タイミングを合わせることが重要になってきます。

PE投資の規模感

PEファンドの場合、投資対象にする企業のサイズにもミッドキャップ、ラージキャップなどあります。ファンド全体の調達額は非常に大きいですから、最初に大きな資金をコミットメントするアンカー投資家と呼ばれる機関投資家は必ずいます。ソブリン・ウェルス・ファンドや年金基金などですね。機関投資家であれば、小さくても100万米ドル、大きければ10億米ドルくらいではないでしょうか。最近だとファミリー・オフィスもPEファンドへの出資がさかんになっています。

個人の投資家であれば、100万米ドル(約1億円)でもハードルが高いと感じる人はいるかもしれません。特に、ポートフォリオの中身がPEファンドだけ、というわけにはいきませんから、コアなポートフォリオを流動性の高い資産で固めながら、10〜20%くらいをPEファンドへの枠として考える、というのが現実的かもしれません。そうするとPEファンドに1億円出資したければ、10億円の金融資産が必要になる計算です。

リアリティとしては、個人投資家へのPE投資の機会は、最低金額$100,000(約1,000万円)からあったりはしますが、果たしてそれがベストな投資なのかどうかは十分に検討する必要があります。

ポートフォリオ全体としての考え方

PE投資はいわゆるオルタナティブ資産に入ります。そのため、あくまで株式や債券といった伝統的資産で構成されたポートフォリオがあって、そこからの延長として捉えるのが良いと私自身は思います。どんなにPE投資のリターンが良いからといっても、PE投資だけでポートフォリオを構成するのは現実的ではありません。それに、前述のとおり、PEファンドの投資対象は予め分かりませんから、ポートフォリオに組み込むことを検討するにしても、まずはそれなりにリレーションが築かれており、投資家としてのクライアントをよく知る状態になっていなければ、話を切り出すことすら難しいと言えるでしょう。まずはご自身のリスク許容度などを担当者としっかりと話し合うところからスタートするのが良いと思います。恐らくプライベートバンク独特の投資となるでしょう。