資産家なら一度は海外のプライベートバンクを利用することを考えます。果たしてそこに利用するメリットがあるのか、はたまたデメリットが上回るのか、検討してみましょう。

日本国内のプライベートバンクとの比較

外資であれ、日系であれ、日本国内で営業活動を行うプライベートバンクは日本国内の金融規制に従って金融サービスを提供しています。

商品やサービスの説明は公用語たる日本語で行われ、契約関係書類もまた日本語です。何かトラブルがあったときも日本の法の下で裁かれることになります。

海外のプライベートバンクはこの逆であり、金融サービスを提供するにあたって海外の金融当局から認可を得ており、多くの場合は英語が公用語と認められる法域で地位を獲得しています。

どちらが優位というものでもないとは思いますが、顧客の側が日本語しか受け付けないとなれば自ずと範囲が限定されます。一方英語が利用できさえすれば、海外のプライベートバンクでも顧客となり得えるわけです。

日本国内の方がより上位の富裕層として扱ってもらえるかもしれないし、海外の方がより世界の富裕層と肩を並べてサービスを受けることができるかもしれません。

地政学的なリスクヘッジ

昔は日本では日本円だけでしたが近年は外国通貨でも資産が持てるようにはなりました。とはいえ外国通貨を持つのに日本の金融機関を利用するのでは不十分だという人もいます。

上記で触れたとおり、国ごとにプライベートバンクに適用される法律や規制が異なるということは、一つの国で何かがあったときのリスクヘッジになるということを意味します。

このことは資産を保全する上で極めて重要なことで、万が一住んでいる国が戦争状態となり、その国ために財産を没収されることがあっても大丈夫だし、そうでなくても天災やパンデミックにより国外へ身体ごと脱出した方がいいという局面もあり得るわけです。

例外的事情すぎて一見ばかげていると思うかもしれませんが、それくらいのことを考えるのが富裕層というのはあながち外れてはいないと思います。

高度なプライバシー管理

一つにはプライベートバンクの文化として、もう一つには海外だからというただそれだけの理由で、より高度な守秘性がある、と考える人は多いです。

例えば、日本国内で有名になると、街を出歩くだけでも変装をすることは増えます。気軽に街に出歩くことが難しくなるのです。それでもハワイなどに赴くだけで随分と人目は緩和されることに気づきます。

資産に関しても同じことが言え、実際にあるいかないかはおいておいても、資産がありそうに見える、というのはあまり好ましくない視線を浴びることがあるのです。

日本では大口の顧客として扱われても、海外では並と扱われ、不必要な営業行為を受けなくて済むという場合もあるかもしれません。お金があると思うだけで様々な人が寄ってくるのは皮肉なことです。

ただ、プライバシーの管理とは言っても、何もかもが秘匿できるわけではありませんし、残念ながらそれは時代の流れではありません。

複雑な商品の取り扱い

プライベートバンクの専売特許としては、通常は店頭には並ばない、複雑な商品を扱うことができるというのが挙げられます。

店頭に並ばない理由としては、注文を受けてから組成するテーラーメイドな性質を持つこと、金額のロットが大きいことから、対象となる顧客が限定されることなどがあります。

典型的なのは仕組債であり、比較的高い利回りをもたらす代わりに、何らかのトリガーに抵触した場合には大きな損をする可能性がある、というものになります。

一度は手を出して失敗したという人も少なくないのではないでしょうか。あるいは、外国為替のアキュムレーション/デキュムレーションのような取引も利用する人は利用します。

金融商品で複雑といえば概ねデリバティブ(金融派生商品)になりますが、このデリバティブを適切に扱える人材はあまり多くありません。そのため海外のプライベートバンクのような大口の安定した顧客がいるところくらいでしか受注できない案件、というのも一つの事情となります。

実業のための法人口座としては要注意

法人でもプライベートバンクに口座開設をすることは可能です。むしろ富裕層の場合、資産管理会社を持つこともあるので一般的とすら言えるかもしれません。

ただ、プライベートバンクと商業銀行は同じ銀行ではあってもビジネスの性質が異なっているからか、代金の支払いなどを海外のプライベートバンクからは受け付けない商業銀行もあるようです。国をまたいだ口座間だとこの傾向はやや強くなります。

このあたりは各銀行の判断によるところも大きいので深入りはしませんが、プライベートバンクは大切な資産を置いて保全するところ、そして運用しておくところ、と解しておけば問題はないでしょう。

プライベートバンクの手数料

一般には、プライベートバンクの手数料は売買手数料と残高基準手数料の二種類に大別されます。

何か金融商品を売買したときに売買金額に対して一定割合の手数料が発生するのが売買手数料、預かり資産の残高に応じて期中にわたって一定割合の手数料が発生するのが残高基準手数料です。

もちろん利用頻度や目的によってどちらの方が得か損かという考え方は顧客側としてはできますが、一方でサービスを提供する側にとってどのようなインセンティブが働くかも考慮に入れるべきでしょう。

売買手数料であれば、とにかく取引をたくさん発生させることに一生懸命になりますし、残高基準手数料であれば資産が伸びていくことに一生懸命になりますね。

欧米のプライベートバンクの場合、残高基準手数料を、アジアのプライベートバンクの場合は売買手数料をとっている(というよりは顧客がそれを選択している)ケースが多いかもしれませんが、これも時代とともに変わりつつあります。

また、単に普通の銀行と比べるならば、プライベートバンクではいずれにしても、資産を管理するためのカストディ費用などがかかるケースが多いので、本当に現金だけを置いておき、その他のサービスも何も受けないというのであればあえてプライベートバンクを選ぶ理由はないかもしれません。

プライベートバンクの最低預入額

海外のプライベートバンクはいくらから利用できるのでしょうか。

一つの目安としてはやはり1億円以上の純資産(運用資金)があるときになってきます。逆にそれ以下ではあえてプライベートバンクを利用するメリットもないでしょう。

近年は富裕層の数も増え、一方で金融規制も厳しくなるなかでプライベートバンク業務の負荷も増えているため、どうしても最低預入額を5億円以上や10億円以上など、大きく設定する例があります。それでも十分に顧客を獲得することができるからですね。

どのような人がプライベートバンクを利用するのか

プライベートバンクのサービスの多くも、他で手に入らないかというとそうでもない、というケースはあります。

それにもっと手数料安くしようと思えば思いつかないことはない、というのは実際に利用している方から聞く感想でもあります。

今(も昔も)プライベートバンカーに求められているのは顧客の個人資産、事業資産に関わる管理とその運用であり、未来の世代に継承していくお手伝いです。

とにもかくにも、富裕層ともなればやりたいことが同時に複数ある人もいるわけで、しかもやろうと思えばできてしまう人かもしれません。

しかし、それをあえて誰か信頼できる人に任せることで、本当にやりたいことだけに集中していたいと思えるかどうかが分かれ道です。

日々のお金に困らない領域に来てなお、お金に悩まされる生活をしているのであればプライベートバンクに解決策を求める、というのはあるかもしれませんね。

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