プライベートバンキングの世界では、資産を担保に様々な借入手法が存在する。資産家ならではの機会とリスクについて理解しておきたい。

ロンバード貸出とは

ロンバード貸出とは、保有している流動性金融資産に対して借入を行う行為のことを指す。流動性金融資産には担保価値がある、だからそれに対して一定の範囲で融資を行うことができるのである。証券担保ローンと言えばイメージはしやすいかもしれない。

ロンバード(Lombard)という名前から分かる通り、6世紀にイタリアを侵略したロンバードによって生み出され、16世紀頃にはヨーロッパで一般的になった。逆にアジアでは聞いたことがないという人も未だに多いだろう。

ローンの使途は何か

借入をするからには何かに使う予定があるのだとは思うが、ローンの使途は多様であり、事業資金に回したり、家族の緊急性資金だったり、とにかく不測の事態が発生したためだったりする。親が子に対して、家を買う資金を提供するのでもいい。ポイントは、投資している資産を現金化しなくて良いことである。海外のセカンドハウスなどの購入資金としてローンがおりづらい時にも使うことは可能である。一時的なブリッジローンとして考えてもいい。

どのくらい借入できるのか

担保価値があるとはいえ、金融資産である以上、その価値は日々動いており、資産によって変動率も全く異なる。したがって、担保に対する掛け目(借入比率)は保有する資産の種類や中身によって変わってくることにはなる。一つの目安としては、5割くらいをイメージすると良い。ただし、すぐにでも売却可能な、流動性の高い資産であれば、という条件付きである。なぜなら、瞬間的に5割の価値が失われ、担保が不足する、ということは流動性の高い分散ポートフォリオでは確率的に起こりづらいからである。もちろん上場株であれば持ち株でもその対象である。

一方で、フルローンであったり、9割の借入をすることが難しいのは、金融資産の価値が変動する性質上、想像に難くない。当然オーバーローンはない。

資産価値が下落したら何が起こるか

ロンバード貸出もローンである以上、返済が必要になる。特に借入を行なった上でさらに投資を行う=レバレッジをかける場合は資産価値の変動も大きくなるため、担保比率には常に注意が必要である。できるだけ余裕を持つことに加えて、もし一時的に資産価値が大幅に目減りする場合、追加資金を差し入れられるような態勢にしておかなければならない。一定の担保比率を下回った場合、強制的に資産が売却され、これは最悪の事態を意味する。

年金資産は担保になるか

同じ投資資産であり、かつ流動性も高いとなると、年金資産が思い浮かぶ人も多いだろう。これに関しては概ね対象にならない。なぜなら、担保設定を行うための仕組みが整った口座ではないからである。ロンバード貸出を受けるためには資産を指定の口座に移管する必要がある。なお、保険の中には、ロンバード貸出ではないが、担保価値を認められ、借入を行うことができるプレミアムファイナンスという手法が使えるものがある。

不動産購入を組み合わせられるか

ロンバード貸出を不動産の購入資金に充てることはできるし、結果的にその方が費用が安くなるケースはある。なぜなら、不動産そのものに担保設定をしなくて良いからである。

ただ現実には、不動産ローンと組み合わせる例の方が多いと言える。不動産の場合は、当然担保価値を査定する必要があるので、その部分は一手間必要になる。リノベーションなどの資金に充てる方が現実的かもしれない。

ロンバード貸出の注意点

借入を行うなら、費用は気になるところであるが、事務手数料が一定はかかるし、当然借入金利も発生する。多くは変動金利であり、借入を行う通貨の基準金利をベースに考える必要がある。ただ、不動産担保ローンよりも金利は低い傾向がある、とは言える。

投資を行っている以上、あらゆる利益に対する税金を意識すべきであると同時に、借入とその資金用途に対する解釈も考慮に入れておく必要がある。特定の用途が決まっているのであれば1年以上前からしっかりとプランニングを行い、選択肢の吟味を十分に行うべきであると言える。

まとめ

ロンバード貸出は珍しいと思って目を輝かせる人もいるかもしれないが、借入であることに変わりはない。したがって、負債管理のスキルが求められる。確かにレバレッジをかけることで資産の成長は早めることができるかもしれないが、同時に多くを一瞬で失うリスクにもさらされることになる。証券の売買だけでなく、お金を借りてくれれば二倍嬉しいので薦めてくるかもしれないが、儲け話だと思って飛びついてはいけない。正しく利用する必要のある、諸刃の剣であることを理解しておきたい。

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