資産運用に関わるものとして高い利回りにこだわる人が多いのはまだ理解できるが、高い配当や金利を通じて、早期に利益を実現したい、と思う人が多いのは不思議に思うことはよくある。なぜ不思議に思うのかも含めて、その背景について考えてみたいと思う。
目次
配当や金利を受け取る必要がある人とは
投資を通じて配当や金利を受け取る必要がある人というのは、一般には働いていない人である、と言ってもいいと思う。
というのも、資産を築くこと以外に、手元に入ってくるお金というのは、正直自分が使う予定のあるお金以外は受け取らない方がいい。正確にいうなれば、受け取りたいと思ったらいつでも受け取れるが、必要以上に受け取らない方がいい、という意味である。もしそういう選択肢があるならではあるが。
なぜなら、受け取った瞬間に所得になり、それはつまり課税の対象となり、そして残ったものは貯蓄として次の活用方法を考えなければならないからである。場合によっては再投資をせず、受け取ったらしめしめと思って使ってしまう人だっているだろう。一体何のための投資なのか。
一方、貯蓄のフェーズにない、働いていない人は、配当や金利を受け取って、消費する分を補填する必要がある。でなければ資産がみるみる減っていく。逆に、働いていなくても、生活を支える収入があるのであれば、やはり配当や金利を受け取る必要はない、とも言える。
流行り用語を用いるなら、FIREに至るにあたって、将来の配当や金利(=将来の収入)を作っていくという発想は必要であるが、それを現役時代に受け取ることは非効率的である、と言える。FIREすることと、年収を増やすことを同義に考えると話はややこしくなる。労働収入を非労働収入でどれだけ代替できるのか、という視点が必要だっただけである。
なぜ人は配当や金利を受け取りたいのか
配当や金利を受け取りたい、高配当の株式や高い金利の債券が好きだ、高い配当利回りの投資信託が好きだ、という人はいる。それはめぐりめぐって本当に高いリターンを得ていることを意味しているのか、よく考えてもらいたい。もしそうでないなら本末転倒である。
一つ肯定できる考え方としては、配当や金利には、投資元本の回収という側面があることである。例えば、10%のリターンがあったとして、毎年10%を受け取れば、10年で100%なので投資した分は返ってきた計算になる、だからその後投資が残っていてもそこから得られるものは全て利益であり、そしてさらに言えばリスクをとって全て失ってもいいお金に変わったということなのだそうだ。それは確かにそうかもしれない。不動産の投資家には比較的多い考え方かもしれない。投資において投資元本を回収するのは重要だ。
投資を通じた副収入があることは嬉しい。でも、受け取ることそのものに喜びや価値を見出しているのであれば、投資家としては経済合理的ではない。
いや、人間はいつもいつも経済合理的ではないから、それでいいと言えばいいが、もし経済合理的でありたいと思っているのならば自分の行動がそうなっていないことには気付かなければならない。
配当や金利を受け取らずに資産を伸ばすには
平たく言えば、配当や金利を受け取らず、即座に再投資することができれば、少ないリターンでも時間をかけて資産を大きく伸ばすことが可能である。資産運用における複利効果とはこのようなものである。
配当や金利を受け取るような投資をすることが保守的な投資スタンスである、と思う人もいるかもしれないが、実は配当や金利を受け取らないような投資の方が投資としては保守的であることだってある。
投資元本が100で、10年かけて10%ずつ配当があった結果、投資価値はゼロになった、という話は聞く人が聞けば笑い話かもしれないが、それでも10%の配当があることに嬉々とする人が一定数いる。金利、配当、利回り、という似たような金融ジャーゴンにやられてしまっているわけだ。なぜその投資がそれだけ高い利益を上げているのか分からなかったとしたら次に起こることは目に見えている。
ここで言いたいのは詐欺的な話に引っかかるなということではなく、そもそも本質的に資産価値が上昇する、というのはどういうことなのかを知っておくこと、そういうところに自らの資産を振り向けることが非常に重要である、ということである。
資産運用はマジックではないし、ギャンブルでもない。リスクをとっている分、代わりに得られるリターンの源泉が存在するのであり、投資家として然るべきリターンを追求することが成功への近道である、と言えると思う。