私自身は香港でファイナンシャルアドバイザーとして働いているわけですが、
- 「宮脇さんのところでは今、人を採用していないですか?」
- 「宮脇さん、こういう人知っていたら紹介してくれませんか?」
- 「今の雇用先とあまり上手くいってないのですが、相談に乗ってもらえませんか?」
- 「香港内で転職するときってどうしたらいいでしょうか?」
という話をたまにいただきます。もちろん私は人材紹介会社をやっているわけではないですし、そもそもお話をいただくケースは意外にも全く接点のない業界からの方が多いかもしれません。
何ができるかは分かりませんが、大枠だけは聞くようにしています。自分が香港に来ると決めたときも、一人で悩んでも分からないことは多かったし、何より前に進もうとしている人を応援したいからです。
目次
私自身の経験から
私は過去に日系の銀行で勤めたことがあり、入社したての頃から海外に行きたいとは言っていました。もともと帰国子女だったわけではありませんし、日系の銀行なので外国人がたくさん同僚にいるわけでもないので、海外に行くために入社した、というのは少し違いますが、金融の仕事だったのでやはり外国人と仕事すること、外国で働くことは大事だと考えていました。海外駐在員の方が待遇が良いので、という人もいるとは思いますが、私の場合はそこまで大事な要素ではありませんでした。
手を挙げていたことと、それに相応しい部署にいたこともあり、イギリスロンドンの拠点に2年と少し駐在する機会をいただきました。若いうちに海外で働けたことは大変良かったですし、自分なりに会社に貢献できたと言えるものもありました。
ただ、短い期間で駐在を終えることはほぼ決まっていたので、仕掛かった案件を途中で投げ出す感じにはなるし、結局のところ、外から見れば、その会社の、その部署にいる人たちの一人に過ぎないんだな、と実感した面はあります。それは総合職という働き方の問題点であり、労働ビザが必要な海外駐在の問題点でもあったとは言えると思います。
与えられた仕事はやり切る、という気持ちはあったので、日本に戻り、仕事が一区切りしたタイミングで退職し、新たに香港に渡ってくるという選択をすることになります。周りに色々言われるのは好きではなかったのであまり多くの人には伝えていませんでした。そのせいで迷惑をかけた面はあるかもしれませんが、組織で一定の仕事をしている以上、完璧な辞め方って存在しないのではないか、と思いますし、辞めたこと自体を後悔したことはありません。自分でした決断だから、というのが大きいと思います。
香港に来てからも、海外駐在の任期途中で退職して帰国する人、転職して現地採用に切り替える人、当地で起業する人などを見てきました。現地採用がいいよ、という話でもないし、そもそもなぜそこに一線を引かれるのか、というのも疑問ではあります。
海外で働く人のパターン
海外へ来る人の中には、
- 日本で正社員 → 海外駐在員として派遣
というパターンの人がそれなりにいます。一方で、私の知る限り、
- 日本で正社員 → 海外拠点の現地採用(として派遣)
- 海外駐在員 → 同じ会社の現地採用へ切り替え
- 海外駐在員 → 転職して現地採用
というパターンも存在します。
私は英語でいうところのExpatriates(Expats)向けの仕事をしていますが、それはNon-Local(非現地生まれ)というニュアンスです。したがって、駐在員か現地採用かに差があるわけではないです。もちろん、人生設計の仕方が多少違う、というのは言えるかもしれませんが、それは駐在か現地採用かという切り口ではなくて、個人や家庭による、の部分だろうと思います。
現地採用で求められること
海外駐在員が本社からの派遣で来るのに対して、現地採用されるためには、
- 現地に住んだことがある or 住む決意ができている
- 英語/現地語がそれなりにできる or 話す決意がある
- サバイバル能力がある or 生きていく覚悟ができている
- 現地に何がしか人脈がある or 作る覚悟がある
のいずれかを満たす必要がある気はします。
予め満たすものが多ければ多いほど、現地採用でやっていくには向いていると思いますし、お気付きかもしれませんが、強い決意や覚悟があればそれでいい面はあるとも思います。強いて言うならば、海外駐在員として派遣されるためには、決意や覚悟で埋めずに、何らか仕事で役に立てる状態にはないといけない、のかもしれません。
海外駐在から現地採用に切り替える人は、海外へ来るときはたまたま or ご縁だったが、好きになったのでその地で長くやっていきたいと思うようになったということはあるでしょう。
一方、現地で雇う側の企業からの目線を一度考えてみると、
- 現地のローカル人材を雇う
- 現地にいる日本人を雇う
- わざわざ日本から呼び寄せる
は上から順に検討を進めることが多く、そもそも日本から海外の仕事を探してもあまり枠がないことも容易に想像がつくわけです。ただでさえ、新しい人材採用なのに、生活の基盤もないとなれば、よほどプロフェッショナルでなければ即戦力として活躍してくれるか企業側が怪しむのも自然ですね。
さて、条件をまとめたように見えて、要はやる気と能力がある人がどこででも生きていけますよ、っていう話なのかもしれません。
駐在員と現地採用での給与の差
日系企業であれば、駐在員と現地採用だと、総合職と一般職のような給与の差を感じたことのある人もいると思います。現地採用だと出世の道も大してないという例はあるのかもしれません。企業側も現地採用とは人件費削減のための手段である、と考える面もあるでしょう。
一方で、外資系企業であれば、現地採用だから給与が低い、というのはあまりありませんし、なんだったら拠点間を異動したときに給与の補正がかかるようにしている例はあります。同じ仕事をしているのに、拠点が変わるだけで不公平を生んでいては仕事のモチベーションに関わるからですね。それよりは役職などで給与が異なることの方が多いでしょう。
家賃や子どもの教育手当など、駐在員の方が手厚い補助を受けているケースが多い一方で、頑張った分だけ給与が上昇し、ライフスタイルへの自由度が増すのが現地採用、という感じはします。会社への依存度は違うのかもしれません。
駐在員と現地採用でのワーキングビザの差
香港においては、駐在員も現地採用もワーキングビザ(就労許可証)は必要です。この取得にあたっては、雇用主がイミグレ(移民局)に申請を出し、外国人の身元保証人のような役割を担うことになります。何かあれば母国に還す責任も負っています。
香港の場合は、海外の人材を採用するにあたって、ローカルの人材を優先して採用する取り組みをしたことを示す必要(2022年後半より条件緩和予定)があります。駐在員はローカル人材にはできない能力があることとされており、それは現地採用の外国人でも同じです。一つの企業で申請できるワーキングビザの数は、社員に占めるローカル人材の比率でも決まるとされます。
ワーキングビザには雇用主(スポンサー)が紐づいていますが、退職したからといって途端にワーキングビザが切れるわけではありません。有効期限内であれば香港に滞在できますし、次の雇用主を見つけることで仕事に就くことが可能です。ただし、イミグレに申請した雇用主以外のところで働いてはいけません。専業規定のようなものですね。
駐在員にしても現地採用にしてもワーキングビザに大きな差はありませんが、7年の居住を経て、パーマネントビザになった場合は兼業制限がなくなり、ビザに紐づく雇用主もいなくなります。そのときには、香港で自分で生活していく基盤ができている、と考えられるからですね。もちろん、その後も雇用契約上、専業規定があるのであればそれは守らなければいけませんが、ビザとは関係ありません。
結局のところ
- 駐在員には独特のコミュニティがあって、、、
- 現地採用の人たちとは壁があって、、、
というのはまことしやかにあるようなないような話ではあります。地域による面はありそうです。
別に日本人だからといって日本人と仲良くしなければならないわけではないですし、現地でどのような繋がりを築くのかもその人次第です。
ただ、海外在住日本人という狭いコミュニティだからこそ、様々なタイプの人と出会う機会もあるでしょうし、逆に日本人が現地の人からどのように見られているか、というのをインナーサークルに溶け込んで感じるのも、当地にいるからこそできることなのかもしれません。人生、どこで誰に助けられるか分かったものではないですしね。