働く世代にとって資産形成を続けることは重要。海外勤務者にとってどのような資産形成の方法が選択肢し得るのか、状況を整理し、新しい方法を模索したい。

公的年金の継続有無

日本にいる場合、働く世代が必ず加入しているのが公的年金です。

国民年金、厚生年金、など色々ですが、何かはあるでしょう。海外に出る前に、ご自身の納付記録などを確認するいい機会にしてみるといいと思います。ねんきん定期便が来ているか、オンラインでも確認できるか、何かあったときにどこの年金事務所に聞けばいいのか、など制度を知ることも大切なことです。

将来の年金がどうなるかわからないという声もありますが、あまり適当に考えるのはよくありません。以前は年金を受け取るために必要な保険料の納付期間は25年でしたが、その後10年に短縮されましたので、少なからずの年金を受け取れる可能性は高いです。また、日本では10年未満でも、海外で年金加入していれば通算措置の対象になって日本の年金を受給する権利を得られる可能性があるそうです。

海外にお住まいの方で、日本の年金制度に加入したことがある方へ

日本年金機構

派遣職員(海外駐在員)の場合

日本の会社との間で雇用関係が継続している場合、日本の厚生年金に加入し続けている場合があります。厚生年金は給料から天引きする性質があるので、日本の会社が面倒を見てくれているはずです。

海外現地採用の場合

日本の会社との雇用関係が完全に切れ、現地での再雇用となる場合、日本の厚生年金を継続することはできません。海外に出るときに住民票を残したのであれば国民年金の加入義務がありますが、住民票を抜いたのであれば、国民年金は任意加入となります。

働く国には公的年金が何がしかあるため、日本で国民年金を支払うのか、働く国で新たに加入するのかはよく確認しておきましょう。中途半端にしすぎると支払ったのに何ももらえないということすらあるかもしれません。

iDeCoの継続有無

iDeCoというのは個人型の確定拠出年金なので、公的年金とは厳密には違います。なのでやっている人もそうでない人もいると思いますが、海外に出ても継続できるかは公的年金と同じになります。従来は、日本の会社との雇用関係があり厚生年金を継続する方が想定されていましたが、2022年5月からは海外在住者でも国民年金に任意加入した場合はiDeCoを利用できるようになりました。

法改正でますます拡充 2022年からiDeCoはどう変わる?

iDeCo公式サイト

継続できないとしても、掛金拠出ができなくなる、という意味であって、解約しなければならないわけではありません。逆に、iDeCoの場合は60歳までは脱退ができないので、それまで積み立てた資産については、所定の届出を行なって「運用指図者」として運用をし続ける必要があります。

日本に帰国し再度雇用された場合は所定の届出を行なって、掛金拠出を再開できます。

つみたてNISAの継続有無

つみたてNISAというのは個人型の非課税枠利用投資です。勤務先とは関係がないので自分で手続きをする必要があります。

税制優遇のために設けられたものですが、海外に出ると当然その資格はなくなります。つまり、住民票を抜いて海外転出すると、毎月の積立はできなくなります。ただし、2019年の税制改正で、5年以内の海外転出であれば、つみたてNISA口座自体は維持できるようになりました。それまでは、海外転出するとNISA口座自体を閉鎖し、課税対象口座に払い出すという対応がされていました。

もしつみたてNISA口座を維持したい場合は、海外転出前に金融機関には「継続適用届出書」を提出する必要があります。5年以内に日本に帰国し、「帰国届出書」を提出した場合、毎月の積立を再開できます。

ただ、上記の話はつみたてNISAの制度設計の話であり、そもそもNISA口座を提供する金融機関がそもそも海外在住者に口座の利用を認めているか、とは異なり得ます。ご利用の金融機関によっては口座自体が持てなくなる可能性がありますので、事前に確認しておくことをお勧めします。

海外で取り組むべき資産形成

現役世代にとっては資産形成は大なり小なり継続すべきものです。ただ、上記の通り、海外勤務によって継続できるものと継続できないものが発生することが分かります。

支払いの義務があるものをまずはおさえ、その上で効果的な資産形成方法を再構築する必要があります。年齢が上がり、資金に余裕ができたのであれば新しいものに取り組むのも一つの手です。そのときは、以下のような点を考慮するとよいでしょう。

  • これからも海外に複数回行く可能性があるか
  • 派遣職員ではなく現地の企業で雇用関係を築く可能性があるか
  • 海外に居住する年数が長期になる可能性があるか

海外に軸足が置かれるようになる、あるいは滞在国が複数にまたがる場合、各国で用意される公的な制度や税制優遇を活かしたものをつまみ食いするよりは、個人に紐付き、どこに住んでも継続できるような方法を模索すべきと言えます。

積み立てという資産形成を継続することは大事、でも積み立てた資産を時間をかけて増やす上で、制度や利用する口座をコロコロ変えなくて済むことも大事、というわけです。短期的な節税には意識が向きがちですが、長期的には資産が増えることの方が重要です。

まずはご自身の状況を整理するところから始め、落ち着いてよりよい方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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