来年お金が要りようなので、今から資産運用で2倍に、などと考える人は世の中的には少ない。何となく非現実的であることを自覚しているからである。でも、いつかは資産を2倍にしなければ、足りない。

多くの人にとっては、例えば生まれた子どもが大人になる過程での費用や、老後のライフスタイルなどを意識しながら、「お金が足りなくなる可能性」についてまずは考える。働いて貯める、が最もベースであるにせよ、資産運用を通じて資産を倍増させるにはそもそもどのような想定に基づくべきなのか、という話をしてみる。

資産運用と時間

資産運用においては、時間が果たす役割は大きい。単年の利回りが低かったとしても、十数年後には大きな差になって現れる。ただ、差があると言ったところで何となく実感に乏しいと感じる人も多い。

シンプルに2倍にするのにどのくらいの時間がかかるのか、という話に置き換えてみよう。

「72の法則」を理解する

72の法則は、資産が2倍になるまでの年数を弾き出してくれる。想定すべきものは、運用利回り、だけである。

「72÷利回り(%) = 資産が2倍になるまでの年数

銀行に預けた結果金利が0.01%だったとしたら、7,200年

→ つまり、生きている間に2倍になることはない。

たった1%でも利回りがあったとしたら、72年

→ 少なくとも生きてその数字を見ることはあるかもしれない。

仮に利回りが6%だったとしたら、12年

→ 10年を超えているので、長いという印象はあるかもしれないが、多くのことはこのくらいのタイムスパンで考えれば違和感はない。50歳になって、65歳での退職を考える。小学校に通い始めた子どもが20歳になることを考える。干支がひと回りくらい、という点でもしっくり来る人は多いかもしれない。

利回り以外に目を向ける

資産を倍にするためにはまずは投資に回すお金を倍にすることを考えるべきである。

資産倍増というと運用して増やすことを考える人が多いが、一番シンプルな方法は稼いだお金を消費ではなく貯蓄に回すことである、と言える。

これははっきりと確実にできることである一方で、あまり意識していない人が多い。

運用して増えたわけではないからカウントすべきではない、という人もいるかもしれないが、結局のところ、その資産が何のために必要なのかを考えれば、どんなやり方であれ、資産を築くことが最優先である。

宝くじで当てようが、毎日せっせと働こうが、資産運用でコツコツ増やそうが、資産が倍になった事実は重要である。

72の法則は複利が前提

資産運用において複利の理解は欠かせない、運用利回り6%で1からスタートして1年後が1.06なら、そのさらに1年後は1.1236であって、1.12ではない。このたった0.0036の差はその次の年にもっと大きくなる。その次の年はもっと。

もし単利の世界をイメージするなら、資産が2倍になるスピードは遅くなるのは言うまでもない。だから、72の法則の代わりに100の法則が適用できる。利回り6%で資産が2倍になるのは、16年以上かかる計算である。

複利なら12年だったものが単利だと16年、たった4年と思える人は少ないだろう。

もう一つ重要なのが、複利を実際に実現できるのかである。利回り6%で12年かけて2倍にするためには、複利が大前提にある。普通の人が経験するような、昨年の利回りはプラス14%、今年の利回りはマイナス2%では、平均6%のような気がするが、厳密には複利は実現できていない。現実の世界にはこういったブレが存在することから十分な年月をかけることが重要になってくる、とは言える。

一括投資と積立投資

72の法則は、一括投資に当てはまる、ということに気付いただろうか。ある時点で投資したお金をそのまま複利で運用してはじめて法則に従うことができる。

資産形成において多くの人は積立投資を行うが、それと72の法則は一致しない。なぜなら、最初に投資したお金もあれば、後から投資したお金もあるからである。

つまり、2倍にするためにはより多くの時間が必要になる。積立投資がもどかしいと感じる人が多いのはここに理由がある。簡易的なシミュレーションは金融庁のものを参考にしてみるといい。

数年では運用収益なんて気にならないくらいの貢献しかしないことが分かる。しかし、長期的には話が全然違ってくる。継続が重要なのである。

ファイナンシャルプランニングの意味

いずれ資産が倍増になるにせよ、運用が果たす役割は短期的には感じづらい。

このことが多くの人にとって資産運用から途中で離脱させている最も大きな原因である。あるいは、資産運用による資産増が確かに確認できると、途端にお腹いっぱいな感じを与えてしまう。

そうではなくて、本来目指していたものに着実に近づいていることが大切なのであって、脇目もふらずに続けられるかどうかが肝心である。その点において、ファイナンシャルプランニングを通じて目指すべきものを確認しておくことが結果的によそ見をせずに済む最良の方法であると思う。

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