パンデミックが過ぎ去り、日常を取り戻した2023年。インフレが終始テーマであり続け、相場環境に期待を裏切られ続けた人が多かった年かもしれません。2023年の金融市場について振り返ってみましょう。
目次
2023年のメインシナリオは?
2023年のメインシナリオとして私自身はインフレと金利の高止まり継続を挙げました。その意味では、メインシナリオ通りであったと言えると思います。特に、景気悪化による利下げ、ということに関しては、2023年中に起こることはなく、それでいて2024年に持ち越された期待感でもあります。適度なリスクテイクが無難である、というのも当たっていたのかもしれません。
とはいえ、年末に向かっての相場は、市場期待の行き過ぎも指摘されており、当局のアクションへの“おねだり相場”の雰囲気が漂っていないわけでもないので、楽観しすぎてはいけません。
年末にかけて相場環境はガラッと変わりましたから、次の一手を考えあぐねている人も多いのではないでしょうか。過ぎ去ったことに執着しすぎず、基本に忠実であるべき局面です。
2023年のブラックスワンは?
結局、2023年に金融相場はそれほど大きくは崩れませんでした。強いて挙げるならやはり地政学リスクであり、それはパレスチナ問題として再度世界を悩ませていますが、これまでのところ中東地域全体の紛争に波及するような最悪の事態は避けられています。もちろん、双方被害が決して少なかったわけでもありません。ウクライナ問題も引き続き収束を見ることはありませんでした。
米中の歩み寄りのような観測もあったものの、世界の大きな流れは分断に向けて相変わらず歩を進めている気はします。何かをきっかけに反転するようなものなのか、誰にも分かりません。
2023年のハイライト
ざっくりと月別ハイライトをまとめてみます。
- 1月 中国がコロナ規制を緩和し、国境を開放
- 2月 N/A
- 3月 クレディスイスとシリコンバレー銀行破綻
- 4月 植田日銀スタート
- 5月 WHOコロナ緊急事態宣言終了
- 6月 ロシア、プリゴジンの乱
- 7月 日銀、YCC修正
- 8月 中国のデフレ、不動産危機
- 9月 米国債利回り急騰
- 10月 イスラエル、ガザ侵攻
- 11月 米国と中国の歩み寄り
- 12月 米国利上げ打ち止め
経済や国際関係といった複雑な話を除けば、スイスのクレディスイスが同じくスイスのUBSに合併された話、それから同時期にシリコンバレー銀行が破綻したことは金融システムにおける重大な課題提起を残しました。もう忘れている?そんな人もいるかもしれません。特にクレディスイスの話は、リーマンブラザーズのときのような破綻ではなく、合併という形で当局が収束を図ったからでもあります。潰れていないという事実がこれほどまでに報道と、それによる人々の印象を変えるものだと気付かされた一件でした。でも、破綻したかのごとく損失を被った投資家もいるし、実際私も香港でそのような人に出会いました。他のどのアドバイザーよりも中身を理解していたとは思うものの、いかなる投資もリスクはゼロではない、肝に銘じるべき出来事であったと言えます。
今後金利が下がる、を前提にすべきか
街の本屋でも「金利」に関する書籍を見かけるようになり、金利が経済にとって重要な要素であることを再認識した人もいるでしょう。
金利は本当に大切です。
でも同時に、金利にも色々ある、というのは意識しておくべきでしょう。
短期の金利の話?長期の金利の話?どこの国の話?金利は何を根拠に決定されているの?
疑問は尽きないものです。確かに高インフレを退治するために高い金利を設定したのも事実ですが、少し前のゼロ金利まで戻るようなことは本当にあり得るのか、もしないとしたらどこか落ち着きどころのようなものがあり得るのか。そもそも今の高い金利のままでは何がダメなのか。
中央銀行の方々の示す予測ですら、半年と経たずに修正されるのに、一般の人々の予想が当たるとなぜ盲目的に信じているのか。前提の置き方を間違えると、当たらなかったときに自分不信になってしまいます。
最後に
金融市場には波があります。大きな波、小さな波、いつ来るか分かりません。結果的にいいタイミングで投資を始められる方も、出だしから挫かれる方も当然ながらいるわけです。最初から良い結果であって欲しい、という気持ちは十分理解できます。
長く運用をご一緒しているとどんなときにどんな会話をすればいいのか何となく見えてくる部分はあります。資産運用においては不安や高揚感は大敵です。最もパフォーマンスと関係がないと言っても過言ではないのかもしれません。いえ、もちろん資産運用をしながら、「調子が良いとき」なんてのも感じていただいて結構です。無関心に退屈だと言い切ってしまうにはもったいなく、一つのエンターテイメントだと思っていただく方法だってあります。でも、普段は忘れていて、気づいた時には資産が増えていれば、この瞬間が最も資産運用の意味を感じられるときなのかもしれませんね。2023年は辛抱強かった投資家は報われたと思います。