中国通信大手3社の中でも群を抜く中国移動(チャイナ・モバイル)。中国国内市場の飽和があるも、5G(第5世代移動通信)などへのインフラ整備への役割は大きい。
目次
サマリ
中国移動(チャイナ・モバイル)は2000年に、中国郵電電信総局が固定通信事業と移動体通信事業の2社に分割された際、移動体通信事業を担う会社として成立した会社であり、中核企業は中国移動通信集団公司で、中央政府が管理を行っている。基地数では4Gで400万台以上、契約者数では9億人以上と世界最大を誇る通信事業会社である。
なお、固定通信事業はその後「中国電信(チャイナ・テレコム)」が担うこととなった。2008年の業界再編以降も、国有通信3社(中国移動、中国聯合通信、中国電信)の競争はそれなりにあるものの、実質的にはチャイナ・モバイルの独走であるとも言える。
事業領域を通信サービスから情報サービスへと拡大し、市場をモバイル市場から「顧客市場」「ホーム市場」「ビジネス市場」「新市場」(頭文字をとってCHBN)の4つの成長エンジンへと転換することを掲げている。
チャイナ・モバイルの資本関係は複雑で、中国移動通信集団公司(本社:北京)が全額出資する中国移動(香港)集団有限公司があり、さらにそこが全額出資する中国移動香港(BVI)有限公司が存在し、その傘下の中国移動有限公司(本社:香港)が香港に上場し、取引されていることになっている。
以降の“チャイナ・モバイル”は実質的な事業運営を行う、中国移動有限公司を指し、同社は1997年に設立され、同年には香港証券取引所、ニューヨーク証券取引所に上場している。米中対立の中で、2020年末にニューヨーク証券取引所はチャイナ・モバイルの上場廃止を発表することとなったが、2021年1月5日に同計画は撤回されている。ただし、これを受けて中国A株での上場に傾斜し、2021年11月には上海証券取引所への上場認可となった。
中国政府自体は、国民の通信料金負担の抑制を目指して、通信事業会社への指導を行っている一方で、経済低迷のテコ入れ策としては5G(第5世代移動通信)などの新しいインフラの加速も促しており、国有通信最大手として重要な責務があると考えられる。香港でもチャイナ・モバイル香港が2020年4月1日に5Gサービスを始めており、繁華街やショッピングモールから、今後は住宅地、地下街などに一気に整備が進むと予想されている。
特徴
筆頭株主:中国移動香港(BVI)有限公司 約72%
子会社が香港上場を果たしているものの、中核の持株会社は国有企業であるのが特徴。
配当利回り:4 – 6%程度
外部格付け:S&P A+ / フィッチ A+ / ムーディーズ A1(2021年11月時点)
株価推移
TradingView提供チャート 941 CHINA MOBILE
最近のトピック
中国では、SMSなどの後継となる「リッチコミュニケーションサービス(RCS)」と呼ばれるメッセージサービス規格が急展開しており、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」に対抗するサービスとなることが予想されているが、チャイナ・モバイルはその産業自体の拡大のため、端末製造業社などとの産業チェーンの確立に全力を注いでいる。
また、チャイナ・モバイルは自動車運転関連の事業拡大も目指しており、5Gネットワークに中国独自の衛星測位システム「北斗3号」を組み合わせ、高精度測位サービス「OnePoint(ワンポイント)」の提供を開始する予定である。
中国市場自体の飽和も見据え、タイの通信大手トゥルーへの投資を2014年に行ったほか、インドなどで海外のクラウド市場への投資などを検討する動きもある。
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*本稿の内容はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。