皆さんは資産運用をどのように行っているでしょうか。積立や一括、という手法の話ではなく、投資方針、つまりポートフォリオ運営という観点から話をしてみたいと思います。

投資ポートフォリオに関する典型的な問答

  • 「あなたの投資ポートフォリオはどのような感じですか」

と聞くと、ごくごく普通の人は「○○と△△を保有しています」と答えます。

質問を改めましょう。

  • 「あなたは投資ポートフォリオをどのような方針で運営管理されていますか」

と聞くと、恐らく多くの人が適切な答えを持ち合わせていないのではないでしょうか。

あり得る回答としては

  • 「割安な銘柄を取り入れるようにしています」
  • 「イケると思った銘柄に全額突っ込んでいます」
  • 「薦められたものを買っているだけです」

等がありますね。

確かに、安く買って高く売るは投資のキホンではあります。また、リスクがないわけではない以上、勝てると思った投資しかしないのも筋は通っていますね。そして、自分自身が投資のプロでないとしたら、薦められたものを買う方がいい、と考えるのも理屈としては正しいことになります。

ポートフォリオを組むことへの多くの批判は、例えば

  • 「分散って、目利きができない人のやることなんじゃないの?」
  • 「数打ちゃあたるってのには合意するけどさ」
  • 「勝ちと負けを相殺しちゃってるじゃない」

です。

確かにポートフォリオは分散をしますし、数も打っていますから、この主張に真っ向から反論する必要はありません。

ただ、批判をしてくる人に対してこのように聞き返すとどうでしょうか。

  • 「安いか高いかを判断するための時間を本当にかけられているのか?」
  • 「価値が上がることに対しての根拠はどこにあるのか?」

この答えに詰まる人は、価値が下がったものを早く損切りし、価値が上がったものを早く利益確定した経験が恐らくあるのではないかと思います。

安いか高いかは刻一刻と変わっていっているし、投資した資産の価値が上がることとあなた自身は概ね関係がないことに気付いているでしょうか。

そしてまたこれに気付くと、ふと、これとギャンブルは一体何が違うのか、と思い始める人すらいます。

ポートフォリオ運営がもたらす最大の効果

ポートフォリオ管理がもたらす最大のメリットは、リターン以外にあることを理解しておく必要があります。そしてそれはただの投資商品を詰め込んだバスケットではなく、体系的に組まれたポートフォリオにしか存在しません。

同じリターンを得るために、リスクが少ない投資手法があるとしたら、これを選びますか?

  1. そんなのあるわけないじゃないか
  2. もしあるなら見せてくれよ
  3. そりゃあ選ぶに決まってるさ

現実にはこのような局面はたくさんありますが、リスクに目を向けず、リターンのみを追いかける人にとってはどうでもよく映ってしまいます。結果が良ければ全てよし、それも一つには正しいのかもしれません。

以前、利回り10%のポートフォリオの話をしたことがありますが、上記のようにリスクの議論を明確にはしなかったのに気づいていただいた方はどれくらいいるでしょうか。

それでも、選択肢の中でどのポートフォリオがいいかを選ぶときには、何らかの基準をご自身の中で設けたはずですが、果たしてそれが「リスク」であった人はどのくらいいるのでしょうか。あるいは、ポートフォリオとしての見た目の面白さや奇抜さに軸が移ってしまった人はいませんか。

投資家としてのあなたが最も大事にすべきだったのは、

  1. リスクに見合ったリターンを得る
  2. あなたにとって必要なリターンを得る

ことではなかったのでしょうか。できていますか。客観的に判断されましたか、それとも主観的な要素が強かったでしょうか。

世界にはアクセスできる投資商品は無数にあります。全てに投資できるだけの資産があるわけではありません。その中で自分にとってベストと思える投資をピックアップし、慎ましやかにやっているに過ぎないのです。

全ての投資に成功する必要はなく、そしてコストをかけてでも全体として成功することが大切なのです。

とりあえずS&P500を買っとけ!は正しいか

この30年くらいで最も無理せず、そして誰にでもアクセスできて高いリターンをあげたのはS&P500である、それは細かな議論をさておいて確かなことかもしれません。上がったり下がったりを繰り返しながらもしっかりとした右肩上がりを演出しています。

アメリカのトップ500というべき企業に投資をするポートフォリオなのですから、無作為に企業を一つを選ぶよりはよっぽど信ずるに値すると思えます。S&P500は年率にして平均10%強のリターン、しかし、それでもリスクは高かったことも知っておくべきです。ずっと上昇しなかった年もあれば、下がり続けた時期もあります。何十%も落ち込んだ時期だってあります。

もちろんリスク許容度の高い人は問題ありませんが、途中で気持ちがぶれてしまう人、資金を動かしてしまう人がほとんどであり、結果として6%くらいはリターンを断念している、という統計データもあります。

つまり、蓋を開けてみれば、S&P500に投資していたはずなのに、年率4%くらいでしか増えていない、ということが起こり得るわけです。

リスクに見合ったリターンが得られるのが投資家の世界、しかしリスクを取り過ぎた結果、途中で脱落するのも各投資家の自由なのです。

チャートや過去の数字はもちろん大いに参考にはなりますが、未来を表すわけではありません。自分にとっての最良の投資がどのようなものであるのか、しっかりとコンセプトを持ってポートフォリオ運営をやっていくことが肝心と思います。

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