投資に興味を持った人は、“チャート”にいずれ出会います。チャートとは、金融市場の過去の価格推移を表すものです。

私が過去に行ったセミナーでも「金融チャート当てゲーム」をしてみたことがありますが、やはり関心が高いのか、多くの人が素早く正解にたどり着いていました。

投資家にとって、チャートを避けて通る道は少ないことが分かります。チャートを追いかける投資家が忘れがちな3つのことを解説してみます。

金融商品に対する価格の目線を持つ

チャートを追いかけるということは、テクニカルで勝負するという考え方と深く結びついています。実際多くの場面でテクニカル分析は役に立ちます。私ももちろん大事には思っています。

ではお伺いします。

「テクニカルにそろそろ売りだと判定されることに一体どんな意味があるのでしょうか」

例えば「買われすぎ」を表していますね。

でも、買われすぎてはいけないのですか?人気があっただけではないのですか?

経験的には「買われすぎ」た銘柄は、価格調整をすることが多いのでそう言っているだけで、さらに価格が上昇することを否定はしていません。高く買ってしまってもさらに高く買ってくれる人が現れるのであれば何の問題もありませんね。

ここで大事なのは、株価がいくらで取引されていれば適正だと考えるか、が欠けている可能性があることです。ついでに言えば、ここでいう“適正”にも色々な考え方があるので、ある人は安いと判断し、ある人は高いと判断します。これが金融市場です。

さて、あなたはどのような基準で価格の目線を定めているのでしょうか。

なんとなくあと10%上昇したらではなく、なぜその価格である必要があるのか。

金融商品の保有目的を決める

例えば不動産を保有する人がいるとして、不動産の保有目的は「家族が安心して暮らす」かもしれないし「賃貸経営で利益を上げる」ことかもしれません。

もちろん、ただ「価値が上がるのを待つ」だけかもしれません。様々な目的が考えられますね。金融商品にとってのチャートも、同じように様々な目的の参加者が入り乱れて価格形成を行っています。

不動産においては、最初は「家族が安心して暮らす」「賃貸経営で利益を上げる」「価値が上がるのを待つ」のそれぞれがいたかもしれませんが、価格が上がっていつの間にか「価値が上がるのを待つ」人しかいなくなって、そして「価値が上がるのを待つ」人がそれでも買い続けたとしたら、そう、バブルです。

本来であれば様々な市場参加者が様々な目的で価格形成に携わりますが、時々投機的な集団によって牽引されることがあります。

個別株式を買う人は、株主優待が欲しいだとか、配当がちゃんと入ってくるだとか、まだ何がしかの目的を設定していることが多いので、仮に持っている株式の価値が急激に上昇しても目的が変わっていない以上、気にならないかもしれません。目的が達成できなくなったときだけ、投資を止めるか、他の銘柄を探すかします。

ただ、何のために、いつからいつまで保有するのかすら決めていない投資家にとっては、手放す理由もきっかけも見失っていることがあります。

チャートが未来を示さない

チャートは常に過去の出来事です。連続して見えるチャートの存在こそが勘違いの原因となり得ます。

投資家は心の片隅で明日もまた今日とそれほど変わらない価格で動くことを仮定しています。

ときどきチャートにも「窓が開く」という現象が起こります。大きなイベントなどがあって、価格が飛ぶ現象ですね。しかし立ち止まって考えてみましょう。

日経平均株価というものをよく知らないあなたの目の前に、ある日突然、「日経平均株価を2万円で買いませんか?」いう商人が現れたとしましょう。

買いますか?買いませんか?

きっと大いに困るはずですが、そのときあなたは初めて、「日経平均株価とは何か」「2万円は安いのか」と本気で考えることになります。

そして日経平均株価が一般的に取引されているものだということを知るに至り、チャートを見て、徐々に値段が上がって今は2万9千円くらいで取引されていることを知ります。

「なるほど。2万円なら今の価格より安いから買ってあげよう。」と思ったその日には株式市場の大暴落が起こり、1万8千円まで下落します。(このようなケースは極端なので恐らく起こりませんが)要はチャートと離れた取引が発生しようとしていたことが一つのシグナルだったのです。

チャートは常に過去を表しているにすぎないので、「明日も明後日も同じくらいかあるいは少し高いくらいで取引されるんじゃないか」という無邪気な期待をしてはいけません。

でも現実にはチャートを追いかける

インデックス投資、分散投資が世の中に広まった結果、実際に投資をしている裏付資産の価格を見にいく人が少なくなったと言えるでしょう。

リスクを低減することはできているかもしれませんが、インデックス投資、分散投資という名の思考停止も伴っていることを忘れてはいけません。(それが悪いと言う意味ではありません。)世の中の変化ですね。

個別の株式を買う人であってもよほどプロの投資家でなければちゃんとした分析は行いません。にも関わらずプロも素人も同じマーケットで勝負しているのです。

日経平均株価が1万9千円になりましたとニュースで流れたとして、それをどう評価していいのか分からない状態に陥っているのをよく見かけます。そしてあなたはふと思います、「数年前は1万円くらいじゃなかったっけ?あれ?9千円も値上がりしたのは何故なんだろう?まぁいっか。」と。

もちろん一歩進んで、225の企業について頑張って調べるという奇特な人が世の中にはいるかもしれませんが、道半ばにして諦める人がほとんどではないでしょうか。

さて、なにもチャートを見るな、というのが私の結論ではありません。チャートは多くの投資家にとって情報の宝であり、金融市場の描いた軌跡なのですから。しかし、トレーダーとして生きることを選ぶかどうかはあなた次第です。チャートを見ずに投資ができるようになれば、投資家としてのスタンスがしっかりしてきた証拠かもしれません。

色々と考えを巡らせた結果、それでも一晩寝てあなたは最初の場所に戻ります。

「やっぱりチャートを見よう。」

と。

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