年齢が上がってくると配偶者や子供、あるいはパートナーなど、一緒に生活を営む相手ができることが多いのですが、家族を意識すると資産運用はどう異なってくるのか、ということを解説します。

家族を意識した資産運用か個人のための資産運用か

私のような金融取引業者に問い合わせをする場合、基本的には一人でお考えになっているケースが多いでしょう。夫婦の共同メールアドレスなんていうものを持っている人はいないからですね。そうすると、お話しを始める頃は少なくとも私から見れば一人の人間ですから、その人がご自身のために資産運用に関して何か聞きたいことがあるのだというのが基本的な認識のスタート地点になります。

ただ、実際は以下の二つに分かれます。

  1. 家族を意識した資産運用
  2. 個人のための資産運用

資産運用の目的はお金を増やすことであったとしても、何のためにお金を増やすのか、という部分が分かれてきますから、このことは早い段階で認識をしないと、その後の会話がちぐはぐになってしまう傾向があります。

仮に1だったとしても、とりあえず一人で話を聞く、という方ももちろんいらっしゃいます。なぜなら、何か具体的にいい話が出てきたらそのときに家族に話してからやればいい、そう考える人は多いからです。まぁ確かに、具体的な案を示さずに家族会議に持ち込むのはハードルが高いときもあります。

家族を意識した資産運用とは

さて、家族がいる場合、資産運用の意思決定はどのように行われるでしょうか。私の経験からすると、以下の3つのうちのいずれかに当てはまるように思います。

家族に隠してこっそりやる

家族と話すのは面倒なので、少しリスクの高い株取引なんかは黙って内緒でやってしまうケースです。家計を支える大黒柱的な人物の場合が多いかもしれませんね。あるいはお財布が夫婦で分かれているケースです。

誰かが代表して決める

家族の中で資産運用に関して誰が意思決定をするかを決めているケースもあります。過去に家族で話し合って決めたときのプロセスについて思い返してみましょう。家族の中で誰かが資産運用に関して抜きん出た知識を持っている場合、あるいは資産運用はしたらいいと思いつつも考えることは億劫であるという人が抜けて、消去法的に誰かが代表するという場合もありますね。

家族で話し合って決める

家族の話題なので、家族でちゃんと話し合って意思決定をする、というケースもそこそこあります。ただの商品紹介であれば、どちらか少し前のめりな方が話を聞いて、後で夫婦で話し合う、ということもあるようですが、私とのファイナンシャルプランニングの過程では、ご夫婦であれば常にご夫婦同時に話を聞く場合が多いです。

なぜなら、夫婦それぞれが持っている情報が違うので、知恵を結集する必要があるからですし、それなりに時間のかかる作業なので、後でパートナーに伝えるのは面倒に思われるように見受けられます。

家族か個人かで資産運用の方法は異なり得る

私から見て、「家族」に勧めるものと「個人」に勧めるものは違う、と正直思います。

もちろん、どう違うのか、というのはケースバイケースなのでここでは触れませんが、お客様の中にも「個人」だったらしない意思決定であっても、「家族」を思ったときにはじめてする意思決定があるのではないでしょうか。この点に関して私も同じであるべきだと思います。

また、年齢が上がってくれば、子どもの教育の問題、相続の問題など、自分自身とは別の他者が絡むことで悩む方が増えるので、その場合は意思決定の基準が徐々に変わっていくこともあり得ます。独身だったら、あるいは昔だったらこうしただろう、そんなことを呟かれる方は多いものです。

あとはシンプルに違うとすれば、家族信託などを組む場合ですね。資産運用を意気揚々と始めても、自分の死後のことについて考える人は多くありません。家族を思う資産運用ならば、増やすことだけでなく、自分の死後のことも考えなければなりません。

資産運用での家族トラブルはやっぱり避けたい

そもそも資産運用というのは自己責任と言われることが多いわけですが、それを「家族責任」と置き換えられる人は少ないと思います。人間、失敗したときは誰かを責めるものだからです。

それに、先述したとおり、「責任」を取るような事態は家族計画が上手くいっていないことを意味するので、家族トラブルになることは必至であり、予め全力で回避すべき事項でしょう。

また、男性と女性では、そもそも思考の仕方にずれがあることがあるので、話し合って合意に達したとしても、後でどちらかが「思っていたことと違う」ということにもなりかねません。

家族のための資産運用が保守的であるべきか

多くの投資には元本保証なんてありません。ただ、家族計画においては失敗は許されません。全ては思ったとおりに、そしてリスクは極力減らして進むべきであると考える人は多いです。

資産運用で儲かったら子どもは私立に、ダメだったら公立に、なんていう計画を立てる人はあまりいないからですね。

そうすると家族が意識された時点で、資産運用は保守的な方向に傾きやすくなります。だったら、保険かあるいは社債くらいしかないんじゃない、という具合です。それがダメなら現預金で放置しておこう、となります。純粋に子育ては大変なので、「保守的」であることで時間をかけないようにするスタンスの方もいます。

家族の目指すべき姿をイメージした資産運用を

家族のうち誰かが保守的である場合、家庭円満のために全体方針も保守的になる傾向がある、というのは実際そうでしょう。しかし、多くの場合は目先のことに追われているためにそうなっています。もし家族の目指すべき姿について話す時間が取れるのであれば、多くの家庭にとっては保守的な資産運用と積極的な資産運用を使い分ける余地がある、と言えるでしょう。

結果として、家族がいる人の資産運用は「お金の余裕」と「心の余裕」の両方が必要なのだろうと思います。しかし、「お金の余裕」と「心の余裕」を作り出すのもまた資産運用、そういうジレンマです。心地よい程度に資産運用と向き合いながら、家族計画を考えられると良いですね。

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