2020年11月の米大統領選挙を前に、トランプ大統領が新型コロナウィルス陽性となり、やや不透明感が増しているように感じる人が多いようですが、一つのイベントに重きを置きすぎるとその他のことが疎かになりますので、大局に戻るという意味でも、米大統領選挙前におさらいしておくべき金融チャートを5つほど紹介します。

金価格と米物価連動国債利回りの歴史的相関

一つ目は、金と米物価連動国債(TIPS)利回りの相関の様子です。直近2年間をとっています。

TIPSは国債といえど直接購入する個人投資家の方は多くはないと思います。購入するとしたらETFなどでしょう。本来、固定利付債はインフレに弱いですから、金利が下がったから米国債には手を出さないというケースも多いと思います。

ただ、そうではない国債もあるということは知っておいて然るべきです。今のTIPS10年債の利回りはマイナス1%ですから、すなわち債券価格が非常に高くなっていることを意味します。そしてそのことは金価格と非常に密接に関係しています。

相関図を見てもわかりますが、右側のR(Correlation)が-0.979ですから、完全な負の相関の状態に限りなく近いということを意味しています。もちろんバラつきはあるものの、金価格の上昇にさらに必要なことは、金利がさらに下がるか、あるいは「インフレが進む」という当然といえば当然の話にはなってきます。ドル安が進んだので金が上昇した、だとかリスクオフで金が上昇した、などの話は一時的な説明にすぎないのです。

ナスダックとGAFAMインデックスの歴史的相関

次に、3月以降の株価上昇をダウやS&P500ではなく、ナスダックが牽引したことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。

その中でも、代表的な5銘柄である、GAFAM、すなわち、Google、Amazon、Facebook、Alphabet、Microsoftで構成されるインデックスと、ナスダックの相関関係を見てみると、こちらもR(Correlation)が0.975ですから、完全な正の相関に近いことが分かります。こちらは2年分の相関です。つまり、ナスダックと言えども、その動きはほぼGAFAMで説明ができてしまう、ということです。

S&P500とGAFAMインデックスの2020年4月以降の相関関係

先ほどのナスダックの例と似ていますが、S&P500とGAFAMの相関を見てみましょう。こちらは3月の株価暴落後、4月からの相関の様子です。

本来、S&P500については、たくさんの銘柄がありますから、ここで観測できるようなR(Correlation)が0.955であるという高い正の相関は起こりません。実際もっと長い期間の相関をとればかなり相関は薄くなります。

しかし、米株の投信などでもGAFAMを含むポートフォリオは多く、これらの企業の動きが米株式を代表してしまっていて、その他の銘柄の動きに目が移りづらくなっていることは認識しておくべきでしょう。

銅価格の上昇

相関から少し目を移して、景気の先行指標であると言われる、銅価格を見てみましょう。

体感として景気が回復に向かっているという実感を得ている人は多くないかもしれませんが、事実としては銅価格は上昇しています。

一つには、銅の消費大国である中国の景気がいち早く戻ったからだと考える人もいます。この先行指標にもやはり世界経済を代表するには限界がある一方で、先行指標ゆえにこの指標が鈍化しないかどうか、にも注意を払う必要がある、とは言えそうです。

米ドルの下落

最後に、近年は上昇が続いてきた米ドルが下落に転じたことが強く印象に残っている人も多いことでしょう。実際、米ドルインデックスは下落していますし、ドル円にしても1ドル=104円台に一時達しました。

「米ドルへの信認が揺らいでいる」という声も一部にはありましたが、最も大きかったのは米金利の低下、それに伴う金利差の縮小です。

各主要国でほぼゼロ金利状態に陥りましたから、米ドルインデックスが下がったことは必然といえば必然です。特にもともとマイナス金利が深く、流通度合いも大きいユーロはその影響で1ユーロ=1.2米ドル近くまで達しました。

これも大局観としてはやはり金利に由来する動きがメインではあるのですが、「強いアメリカ」を表すものが株価と米ドルだとすれば、今の米ドルが弱い状態をトランプ大統領としてどう考えるか、というのはあるでしょう。一時期と比べると、米連邦準備銀行(FRB)に対する批判を行なっていないことは注目に値します。

まとめ

3月からの急激な株式市場の持ち上がりの中で、少し落ち着いて投資状況を考えるイベントがあることは良いことです。取りすぎていたリスクがないか、あるいは何か思い込みが入っていないか、冷静な目でリフレッシュし、2020年末を気持ち良く迎えられるようにしていきたいものです。

*各チャートはBloombergより

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