金利上昇は投資家に投資利回り目線の変更を余儀なくしているかにも見える。2023年、プライベートバンク界隈で最も訴求力のある金融商品は定期預金とプライベートエクイティファンドだとする極端な見方も出てきた。投資スタイルを考える必要があるのか、2024年を占う一つの対立構図としてインカム vs.グロースについて考えてみたい。

インカムとは何か

インカムとは収入である。収入には労働収入と非労働収入の2種類があるが、投資収入は後者であり、資産運用におけるインカム戦略とは、非労働収入を増やすことにある。

シンプルな話をすると、年収1,000万円のサラリーマンと、年収1,000万円の投資収入は収入としては等価である。もちろん職場には仲間もいるだろうし、仕事はやりがいもあるだろう。働くのが好きだという人もいると思うが、とにかく数字としては等価なのである。一方、怪我や病気をすれば労働収入は減るが、投資収入はそういったこととは無縁である。

よく聞かれるが、働く世代にとって多くの場合は投資収入としてのインカムは必須ではない。もちろんいざというときに収入代替ができることは安心にはなるが、今すぐに受け取ることよりも、余剰資金にはせっせと出稼ぎに出てもらって必要になったときに戻ってきてもらった方がよい。手元に大事に大事に置いてある方が効率が悪いのである。

一方で、リタイヤメントあるいは病気や怪我によって労働収入が減少した場合、インカムは必須と言っていい。育児休暇や留学もそういった意味では労働収入の減少をもたらすかもしれない。厳密には資産を減らしながら生きればいいのではあるが、やはりお金の入りと出は気にはなるものであるし、いつまでも資産を減らし続けられるものでもない。

その意味では、インカムがあることの一番のメリットは働かなくても良い、という選択肢を与えてくれることなのかもしれない。もちろん働いててもいい、少しだけ働くのでもいい、ただその強弱をつける機会を与えてくれるのは事実である。もちろん働けなくなるときのために、というのは多くの人にとってそうであろう。

グロースとは何か

収入が上がると支出も増える人がいるが、多くの場合は、ある一定の生活水準に達するとそれ以上は収入としては必要なくなり、貯蓄に回ることになる。貯蓄は余剰資金であるため、資産運用に回すことを考える必要があり、このときにグロース戦略が求められる。

では、収入が十分に増えるまではグロース戦略は取りづらいか、というと実際悩む人は多いのかもしれない。なぜなら、収入が十分でないのにグロース戦略を取るためには、支出を抑えるしかないからである。将来のため、と割り切れる人もいればそうでない人もいる。

また、投資収入によって生活を支えることは理想ではあるにせよ、今度はその投資収入が約束されたものとは限らない、という点も挙げられる。確かに労働には結びついていないが、だからといって確実とまでは言えないため、労働収入もやはり重要な収入であることに変わりはない。特にグロース戦略を取り続けるためには、一定の労働収入があることが不可欠であると言える。

インカムとグロースの利回りの差

冒頭述べたようなインカムとグロースの対立構図の根本には、どちらの方が利回りが高いのか、という話も含まれている。

確かにリスクの高い運用をしたからといってリスクの低い運用にいつなんどきでも勝つ、というものではない。特に短期的にはこのことは関係がないことは統計的にも観測されている。

一方で、資産運用においてはローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンという言葉があるように、リスクとリターンはバランスを取るもの、とも考えられるわけで、実際のところリスクプレミアムと呼ばれる、取ったリスクに見合う上乗せリターンというのは確かに存在する。

また、資産運用における複利の効果については随所で触れられる通り、インカムとして受け取ればそれをいずれ再投資するにせよ、微妙な時間差はあるわけで、ずっと投資を続けるグロースに比べると、ちりが積もるかの如く利回りに差がつくことは想像に難くない。

ちなみに、インカム=ローリスク、グロース=ハイリスク、と単純に分けられるものでないことは申し添えておこう。

インカムとグロースどちらを目指すか

インカムかグロースかというのは対立構図のように見えるが、根本的にはまず達成したい収支のバランスが存在する。それを補うために働くのか、投資で儲けるのか、という観点になるが、それ以上の部分は基本的にはグロースに重点が置かれることになる。つまり、インカム戦略とグロース戦略は両立するし、むしろ両立させた方がいい面はあるわけである。

ところで本題でもある、金融相場の変化についてどのように考慮するのが良いのであろうか。1億円という資産があり、利回り5%が比較的容易に達成できるのであれば、もはやインカムで500万円を受け取り仕事を辞めて慎ましやかに暮らした方がいいのではないかと考える。一見筋が通って見えるが間違いはどこにあるのだろうか。

一番は金利環境の変化はインフレに呼応している、というところにある。つまり、利回り5%はインフレに呼応したにすぎないわけであり、収支のバランスはそのままだと考えるのが自然である。賃金が5%上昇するのも同じくインフレに呼応しただけかもしれない。これも一見昇給したように見えるが、生活水準を変えることはない。

次にこのような環境で2億円という資産を持っていたとする。1億円分だけ利回り5%で運用できれば、インカムとしては事足りているわけだが、残りの1億円はどのような状況に置かれているのであろうか。そう、インフレにただ負けていることになる。目先の収入に気を取られ、資産全体に対するケアが十分なされていない。

物価の安い国や田舎に移住するだとかで諸条件を組み合わせれば何か最適解ができなくはなさそうではあるが、根本的には、インカムとグロースのバランスは金融環境の変化より、ライフプランの変化、ライフステージそのものによって変わる、と考えるのがやはり自然なのかもしれない。この選択に迷うならば是非相談してもらいたい。様々な観点から検証できると思う。

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