健康でいる限り生命保険は不要である、と結論づけていた人ですら、老いを感じるとその必要性には気づくもの。60歳という節目を迎える前に生命保険の見直しをしておくべき理由について話してみたい。

保障内容の確認

まず最初にすべきことは、保障内容の確認である。

今そもそもどうなっているのか、を改めて整理してもらいたい。というのも、保険の契約内容は時間が経てば細かい部分を忘れていることの方が多いからである。あるいは契約したことすら忘れている、という人がいても不思議ではない。

何年も経てば、これは何でこんな金額になっているのか、この特約はなぜ付いているのか、など過去を振り返らなければ分からないこともあるだろう。保険金を請求するような事態になっていないことに喜ぶとともに、設定していた保障が適切だったのか、も自分の目で見て分かるようになる。

通常であれば毎年保険会社から何らかのお知らせが届いているが、もしそうでないならばなおのこと、保険会社や担当者に問い合わせをするいいタイミングである、と考えてもらいたい。

この段階では現状を把握するにとどめ、具体的にどうすべきかを考えるのは次のステップである。

保障金額の見直し

次に、具体的に見直すべき契約が存在するのかを考えていく。年齢が若いときは言われるがままに保障額を決定し、特約を付けていることもある。この間、病気やケガがあったかどうかなども振り返ってみると良い。

若いときに言われたかもしれないが、年齢が上がるにつれて保険に入りづらくなる、のは事実である。したがって、今ある保障を見直すにあたって、保障を増やすことよりも、保障を減らすことに対してはより注意すべき、とは言っておきたい。

あるいは求める保障額が同じでも、別の保険会社に乗り換えたりするのであれば、それは契約の解消と新規契約を伴うことになるので、実質的にはリセットされる話である。よくよくメリットとデメリットを考えたい。

生命保険の見直しにおいては、特約の必要性、保障額の適正性、保障対象の検討などが含まれる。本質的には、初めて契約したときと考えるべきことは変わらない。ただ、時が経って、必要な保障の金額と範囲が変わっていることが想定されるからである。

保険の目的の変化

目的を果たした生命保険契約は解消、減額すればよい。それは原理原則ではある。保険をかけているのはそれによって守られるものがあるからであり、守るべきものがなくなったのであれば保険をかけ続ける意味はない。

例えば、お子さんが独立するまでの親への経済的な依存が代表格である。自分がいなくなったら子どもが困る、と思っていたのなら、子どもが独立してもう手がかからない時期に来れば保険は必要ないかもしれない。

目的毎に保険の契約があることは保険料という費用を払っていることに対して効率的ではある。ただし、上でも述べたように、保険を解約したり、入り直したりがいつでも、いつまででも自由にできるとは限らない。

このときに考えるべきは、保険の目的の変化、であり、保険契約を継続する理由を再定義することは有効である、と考える。端的に言えば、保険の目的は変わったが、契約は同じ、というような考え方である。

例えば、お子さんのために学資保険に入っていたとして、それほど教育資金にお金がかからなかったのであれば、それはすなわち両親にとっての年金に変えてしまえばいいし、あるいは、今後のお子さんの結婚費用などに回せばいい、ということかもしれない。

あるいは死亡保障をつけていたのであれば、本来であれば収入の代替という意味では減額してもいいが、資産がしっかりと伸びてきたので、今度は相続税の対策が必要となっている、といった具合である。

目的が変わっても利用できるものは最大限利用した方がいい。

60歳という節目

かつては60歳は定年退職の年齢だったかもしれないが、今はそうではないかもしれない。とはいえ、何の節目でもないというわけではなく、実際に60歳を迎えた人はそれをきっかけに何かを考えるようになった、と答える人の方が多いかもしれない。40代、50代は自分の誕生日や年齢すら気にしなかったが、60歳は少し特別な年齢なのかもしれない。

保険契約という現実的な観点から言えば、60歳に加入の限度年齢を設定する保険会社もある。ここから先は統計的に見て健康へのリスクが大きいからである。寿命が伸びていることを踏まえ、少し余裕を持っても65歳までという感じだろうか。60歳を過ぎれば保険の選択肢は減っていく、と考えていいだろう。保険料も高くなって(一方で収入が減るので)保険に入るハードルを高いと感じる人が増えるのもあるかもしれない。

自分にとっては大したことがなくても、世の中一般が60歳という節目をどう見ているか、意識してみるといいかもしれない。

専門家に聞く

慎重に見直しましょう、と言ったところで、どうしていいか分からない、という人は多い。若い頃のように保険のことだけを考えていてはダメで、老後の設計や家族の問題などが複数気になっている場合、総合的なアドバイスができる専門家に相談してみるのは一つの手ではある。

ひょっとしたらご自身が悩んでいる経済的リスクは保険によって解決しない方がいいものかもしれないし、あるいは長期的なことを考えるならば、60歳を迎える前にアクションしておくべきものに前もって気づくことができるかもしれない。

60歳になるタイミングは多くの方にとってライフイベントが消化され、今後のライフスタイルが変化していくことが予想されると同時に、より先の未来について考えたとき、不安がよぎりやすい。安心して60歳を迎えるために、余裕を持って計画を立てておくことが肝心である。

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