中長期目線で投資を開始した人でも、相場が荒れると資産運用をやめたくなるケースはあります。
- 「自分が何か間違っていたのではないか?」
- 「今のやり方で本当に大丈夫なのか?」
- 「何かアクションをした方がいいのか?」
- 「自分には投資は向いていなかったのではないか?」
そもそも中長期目線とは一体何だったのでしょうか。
何でもいいからとにかく投資を続けること?
毎日チャートをチェックして経験を積み上げること?
目的と手段が一致していない例はこういう場面でも見受けられます。
とはいえ、投資の初心者だから臆病に始めたい、自信をどうやって持ったら良いのか分からない、と思うこと自体が悪いわけではありません。
それに知識を得るほどに、株式や債券はありきたりだし、実際上手くいっていないから何か他のものはないのか、と考える人だっているでしょう。
あるいは、巨額の利益をあげることはできたが、それが永遠に続くとは思えないし、もっと地に足のついた資産運用について考えたい、という人もそうかもしれません。
本稿では、
オルタナティブ投資に取り組むことで資産運用は安定する
という話をしてみます。
目次
なぜ今、オルタナティブ投資が注目されるのか?
オルタナティブ投資とは、国内外の株式や債券といった、いわゆる伝統的資産以外への投資を行うことです。しかし、伝統的資産に対しては、様々な投資家が参画しており、手軽である一方で、マーケットが総崩れになるときには巻き込まれる、という面もあります。
世の中に流されない、頑強なポートフォリオを組むために、オルタナティブ投資は注目されているのです。
オルタナティブ投資の魅力
リスクの低減に繋がる
オルタナティブ投資の多くは、株式や債券の動きと相関が低いものになっています。もちろん独自のリスクは存在するわけですが、資産の一部をオルタナティブ投資に配分することができれば、リスクの分散にもなり、それはポートフォリオ全体のリスクの低減に繋がることもしばしばあります。
リターンの向上に繋がる
オルタナティブ投資は、株式や債券よりもリターンが高い、というのは半分合っていて半分間違っています。異なるリスクをとっているので同じ土俵で比較すべきものではありません。
株式の方がより大きなリターンをあげることだってあります。ただ、中長期では、オルタナティブ投資を組み入れることでポートフォリオ全体のリターンを向上させることに繋がることもしばしばあります。
価値の変動が抑えられる
株式や債券に中長期で投資をすることはできますが、同時に流動性や換金性の高さを享受しています。流動性が高いとはすなわち日々の価格の変動を知ることができるわけで、売らないと決めていたとしても、価値の変動にはさらされています。
オルタナティブ投資の場合は、手放したいと思ってすぐに手放せるものばかりではなく、1ヶ月あるいは半年かかって売却できるものだってあります。その分、日々価格の変動に一喜一憂することはなくなります。
ハーバード大学基金とは?
ハーバード大学は言わずと知れた、世界屈指の名門校です。その卒業生たちによる寄付でできあがったのがハーバード大学基金であり、投資の世界でも、代表的なエンダウメント(Endowment=大学基金)として紹介されるほどです。
とりわけそのポーフォリオの7割以上はオルタナティブ投資で構成されています。
オルタナティブ投資といっても、実際には数多くの資産のことを指しているわけですが、代表的なものはハーバード大学基金のポートフォリオで確認できます。
例えば、
- プライベートエクイティ(Private Equity)
- ヘッジファンド(Hedge Funds)
- 不動産(Real Estate)
- 天然資源(Natural Resources)
などです。特に2021年は上場株式のリターンの50%もさることながら、プライベートエクイティのリターンが77%と非常に大きくなっています。
割合にして、プライベートエクイティとヘッジファンドが圧倒的に大きいわけですが、その運用手法や投資対象は多岐に渡り、かつ両者はよく似た面も持っています。ここでは詳細にまでは触れませんが、ハーバード大学基金がこの分野を非常に重要に考えている、ということは理解できるでしょう。
オルタナティブ投資が向いている人とは?
誰だって確実に増えてくれるポートフォリオが欲しいと考えますし、オルタナティブ資産にその可能性が含まれていると感じたことのある人はいると思います。
一方で、オルタナティブ投資が向いている人、向いていない人はいます。なぜでしょうか。
先の例に戻ってエッセンスを取り出すなら、なぜハーバード大学基金はオルタナティブ投資をしているのか、という話です。その理由は色々あると思いますが、客観的に見ると、
- 豊富な運用資金がある
- 長く運営させる必要がある
- ノウハウが蓄積できている
あたりがポイントです。順番に見ていきましょう。
豊富な運用資金がある
ハーバード大学基金の運用原資はどこから来るのかというと、卒業生たちから集まる多額の寄付金です。年間1,000億円以上ともされています。寄付であるという性質から、金融機関などに返済しなければならないお金でもありませんし、リターンが悪いからといって出資を引き上げられるようなこともありません。もちろん、大学基金として稼いだお金の使い途は適正でなければならないとは思います。
一般の人が働いて稼いだお金を運用資金に回しているのと同じように、基金には資金プールがあり、そしてそれに注ぎ足すということができているのです。現時点で十分な運用資金があることもさることながら、その運用資金が増えていくことも安定してオルタナティブ投資をしていくためには必要なことのように思います。
長く運営させる必要がある
ハーバード大学は名門であり、いつか閉鎖するという予定があるわけではありません。卒業生たちは卒業して、歳をとり、亡くなって方もいると思いますが、大学は次の時代も残ります。したがって、大学基金はその先の未来に向けた存続を前提にして運営されています。
オルタナティブ投資の多くは、1ヶ月後あるいは1年後にリターンとともに原資が回収できる、というものではありません。数年後、あるいは十数年後に投資としての役割を終えて、しっかりとリターンを取り込むものになってきます。
投資をした時点でゴールはある程度見えていますが、ただ、そのゴールは時が来るのを待たなければやってこないのです。桃栗3年、柿8年のようなものです。したがって、そもそも中長期での資産運用を不安なく行える前提が必要なのです。
ノウハウが蓄積できている
ハーバード大学に初めからオルタナティブ投資のスキルがあったかというとそうではないと思いますが、数十年かけてそのノウハウが蓄積したのは確かでしょう。桃栗3年、柿8年だとして、そもそも植えるものを間違えてしまっては時間が無駄になってしまいます。ではどうやって見分ければいいのか。
幸いなことに卒業生の中にはビジネス界で活躍する人、あるいは投資の世界で活躍する人がいたこともあり、独自のネットワークによりそのノウハウを効率的に蓄積できた、とは言えると思います。
基金そのものが自分たちで個別案件の選定をするときもあれば、優秀なファンドマネージャーを選別してその資金を預けることもあるでしょうから、それも含めてノウハウ、と言えるでしょう。
オルタナティブ投資を実践する
投資の成功のためには良い投資先を見つけるのが大事である、と思う人は多いわけですが、自分に合った投資方法を見つけることも重要だと理解してもらえたでしょうか。あなた自身はハーバード大学基金ではないので、全く同じことをしようと思っても上手くいきませんが、だからといって基金から学ぶことがないわけでもありません。
個人の投資家として、オルタナティブ投資を組み入れる余地があるのかどうか、は検討したいところであり、正しく組み入れることができたならば、投資ポートフォリオの安定性はぐっと増すことが期待できます。是非一度適性チェックを受けてみてはいかがでしょうか。