2020年が間もなく終わろうとしています。金融市場関係者としてはハラハラドキドキ、非常に緊張感の抜けない1年となった印象があります。本稿では、2020年最初に描いた金融市場見通しを踏まえて、実際どのようであったかを反省・おさらいしてみたいと思います。

1 2020年のメインシナリオは?

2020年のビッグイベントとして米大統領選挙を挙げていましたが、トランプ再選の可能性は意外にも遠ざかりましたが、アメリカ第一主義、は貫き通されました。原油価格のクラッシュに起因する金融市場の混乱から見事に株式市場は立ち直り、年末を迎えようとしています。

中国の方は、新型コロナウィルスの影響を最も早く受けたものの、その後は内需を背景に経済回復を果たし、成長軌道の大幅な修正を何とか回避した、という印象があります。もともと標榜していた一帯一路構想も揺るぐことがなく、東アジアにおいて、そしてテクノロジー分野において、勢力拡大を着実に進めたと言えるでしょう。

二大国の対立の様相は緩まることがないなか、アメリカはWHOなど、国際協調のテーブルからは見事に退き、中国がその後にイスを得たように見受けられます。しかし、トランプ外交の成功の一つとして、多極化の世界の中で、中東の和平と国交正常化に漕ぎ着けたことは国際社会にとって大きな変化と受け止められたことは間違いありません。

日本に関しては、残念ながら東京オリンピックは延期され、果たして2021年に無事開催ができるのか危ぶまれるところですが、米中対立の中で何とか舵取りをすることができているように思います。日本の経済力の割には株式市場が活況となり、また不動産市況についても海外から改めて注目が集まる年となりました。

2 2020年のブラックスワンは?

2020年のブラックスワンは結果的には、新型コロナウィルスでした。金融市場の混乱自体は原油価格の急落に起因していますから、ウィルスのせいには必ずしもできませんが、ウィルスの流行局面を捉えた一つの国際的な緊張が影響したことは言うまでもありません。ブラックスワンはブラックスワン、やはり当たらぬものですね。

私自身は、ブラックスワンとして、国のトップと議会の差が大きく乖離する事態を上げました。三権分立が揺らぎ、国の政策意思決定が滞る事態を意味していました。この点に関しては、香港は実際にそのような動きが見られましたし、米国の大統領選挙においても法廷闘争が注目を集めること、そして上院や下院で、民主党及び共和党が僅差となり、米国の分断を印象付ける結果が得られました。新型コロナウィルス対応では、ある種の“戦時対応”が見られたのは歴史に残る出来事であることを裏付けています。

英国もEU離脱が決定したとはいえ、まだまだ交渉は続いており、2021年の世界秩序はどの国が主導となって決めていくのか、不透明感が漂います。米国はバイデン大統領が誕生すれば、国際協調の世界に戻っていくことになるのでしょうか。「安定」には程遠い世界のように感じます。

3 アメリカの景気は足元良いようだが、再びリセッションの心配をした方がいいのか

長短金利の逆イールド状態が予言となってリセッションとなる、そんなことが囁かれた時期がありましたが、果たしてそれが本当に予言だったのかはわかりません。結果的に、新型コロナウィルス流行を通じて、アメリカはリセッションに突入しました。

にも関わらず、各国の中央銀行による大規模な資金供給を通じて、かつてない資金が市場に流れ、金利はほぼゼロになり、一部は株式市場などのリスクマネーに流れました。リセッションの中での株高は人々を困惑させ、一方で社会が悲観的にならずに済む唯一の材料ともなった、と言えるでしょう。

4 不安定な時代はボラティリティを生むと心得ておく

2020年はボラティリティ(資産の価格変動幅)が大きくなることを予想しました。実際その通りとなりましたが、一方で将来の予見性に関してはことごとく裏切られた投資家が多かったと言えるのではないでしょうか。

新型コロナウィルスの流行の中で、空前の株高を予想する人よりも、株式市場の二番底を予想する人の方が多かったと記憶しています。とはいえボラティリティが高いと、投資家のリスク耐性には揺さぶりがかかりますので、一喜一憂して結果的に金融市場と向き合うことをやめてしまった人もいるのではないでしょうか。

5 まとめ

さて、2020年初頭にまとめた金融市場見通しをもとに話をしてきましたが、もう少し幅広い資産にわたってざっと振り返りをしてみましょう。

株価はいずれの国でも概ね底から反発し、米国を中心に最高値を目指しました。中でも牽引したのは圧倒的にテクノロジー株式であり、例えばアメリカのS&P500のうち、GAFAMの5銘柄を除けば際立った上昇と呼ぶには至りません。

債券価格は一時急落をしましたが、米国や欧州では債券購入プログラムが大規模で行われた結果、市場は落ち着きを取り戻し、多くの企業は低金利での借入や債券発行をすることができました。その代わり、投資環境としては非常に利回りを期待しづらい市場となってしまっています。

株価も再建価格も上がった2020年だったわけですが、金価格なども非常に高騰しました。一つには名目金利が下がる中で、インフレ期待をかろうじて維持したことにより、実質金利が上昇し、金価格上昇に寄与したこと、あるいは溢れる市場マネーが一部は安全資産に向かったことなどが挙げられます。また、米ドルが安くなったことにより、金やあるいはビットコインなどの代替資産に向かったとの声も聞かれました。

総じて、経済状況に反して、あらゆるリスク資産の価格が上昇して2020年を終えようとしていますから、果たして2021年、どのような投資戦略を練るべきなのか、改めて別稿にて触れられたらと思っています。