各国でキャピタルゲイン税や富裕層税が検討される中、超富裕層は必ずしも慌てふためいていない。次々に登場するソリューションの中でも、国際的に認知度を高めている、PPLIという、一見ニッチな戦略について解説する。

PPLIの特徴

PPLIとは、Private Placement Life Insuranceの略で、私募生命保険と訳される。公募ではなく個人に対して提供される現金価値に紐づくユニバーサル生命保険の一種である。テーラーメイドな保険契約に該当する。

資産がPPLIの保険契約の中にある限り、課税対象にならないことで知られる。

また、仮に保険契約者が死亡した場合でも相続人はPPLIの契約内容を非課税で受け継ぐことも可能である(*国による)。例えば、アメリカでは死亡時まで保有されている資産に関しては相続した際に、キャピタルゲインの課税対象にならないというステップアップ方式が残されている。

PPLIは完全に合法で利用が簡単な一方、塞ぐのには政治的に極めて難しいとされており、富裕層が海外生命保険を使って行う、資産継承のための一つの戦略を担っている。

PPLIの中での投資ポートフォリオ

PPLIはオープンアーキテクチャでの投資を可能にする。つまり、理論上はあらゆる資産を保有することができる。

ただし、現金価値に紐づく生命保険であるという性質上、プライベートエクイティなどの時価の測定が難しいものは対象になりづらい面はある。

多くの場合は、個別株式や現物社債、投資信託やETF、ヘッジファンドなどになるが、ボラティリティの高いポートフォリオよりは分散の効いたポートフォリオか、または絶対リターンを狙うようなポートフォリオを維持するのに適している、とは言える。

PPLIの中での資産の法的な所有者は生命保険会社である。したがって、仮に個別株式を大量に保有したとしても、株主名簿に個人として名前が載ることはない。一方、株主としての議決権はない、といったデメリットもないわけではない。

PPLIの最低利用額

PPLIはテーラーメイドの生命保険であることから、最低金額をUS$1mlnと設定する場合が多い。

より少ない金額で始めることも可能ではあるが、固定費部分もそれなりにあるので、単なる投資口座としてではなく、資産をまとめて管理するハコとして初めから金額を大きく設計する方が費用面でのメリットは大きいと言えよう。もちろん後から追加でお金を入れることも引き出すこともできる。

金額が少なければ選べる投資対象も少なくなるため、PPLIの利用開始の適性額として約1億円はただ単に高めに設定したハードルとも言えない。

かつては、PPLIはPPB(Private Portfolio Bond、プライベート・ポートフォリオ・ボンド)とも呼ばれていたが、それなりに利用にコストがかかるものであった。PPLIはPPBからさらに洗練され、世の中的な地位も確立してきていることで、より柔軟でコストが低く、選択しやすくなっている面はある。

PPLIがもたらす税金の繰延効果

長期的な投資において複利効果を利用するメリットは大きいとされるが、キャピタルゲインは基本的に都度課税であるがゆえに、雪だるま式に資産が増えることを抑制する効果がある。

一方、PPLIの中での資産価値はあくまで生命保険の解約返戻金の増減としてしか現れないため、引き出しや解約のタイミングまでは少なくとも課税されない(*国による)。つまり、税金の繰り延べ(Tax Deferral)の効果がある。

ヨーロッパのいくつかの国ではPPLIを正統な仕組み、金融商品と認め、資産税や相続税においても優遇することを法律上明記している例もある。

PPLIかトラストか、コントロールの問題

PPLIとしばしば比較されるのはトラスト(信託)である。信託もまた信託会社の名義で資産を保有できるため、非常によく似た仕組みであると言える。

ただし、トラストの法的な有効性として議論になりやすいのが、資産に対するコントロールである。

信託財産は厳密には元の持ち主のものではないため、コントロールをしようと思ってできてしまえば、それはすなわちトラストの法的な有効性を損なう。

実際、オフショア地域では裁判が行われ、トラストに実効性がなかったことが結論付けられた事例も少なくない。それはすなわち、法的に隔離したはずの資産が債権者などによって差し押さえられ得ることを意味する。

一方、PPLIの中の投資に関する法的な所有者は生命保険会社であるため、債権者からは法的に隔離が可能である。

より念押しするのであれば、PPLIとトラストを組み合わせることにより、重層的な対応はできるが、PPLIで既に法的な根拠は十分確立している、というのも一つの考え方である。それにトラストの設立費用がプラスアルファで高くつく場合がある。

PPLIか遺言か、プライバシーの問題

PPLIは生命保険であるため、受益人が指定できる。

この場合、受益人は公の情報にはならないまま、予め指定した人物に渡されることになる。一方、遺言(Will)に関しては、死後に公の情報とする国があるため、必ずしもプライバシーは保たれない。

また、PPLIは分割が可能な設計となっており、例えば、相続人Aは死亡保険金として受け取るが、相続人Bは分割されたPPLIをそのまま受け取るといった対応も可能である。

PPLIか資産管理会社か、国際税務の問題

PPLIもまた必要に応じてOECD加盟国の共通報告基準(CRS)や米国FATCAでの報告対象となり得る点で、海外での資産管理会社と何ら変わりはない。これはPPLIが金融商品であることに由来する。

一方で、PPLIは金融商品ゆえに、タックスヘイブン対策税制など、海外法人をめぐる各種の国際税務の問題からは解放される。

つまり、オフショア法人を作ってプライベートバンク口座を開設する、のようなストラクチャーに比べると、税制面でクリアになる部分が多いしコストは安い。

もちろん、資産管理会社で保有できて、PPLIで保有できない資産というものもあるが、国際税務のことだけを考えるならば、PPLIはシンプルなソリューションであると言える。

それにプライベートバンク口座のように海外相続の際の検認裁判(プロベート)のことも一切心配しなくてよい。

PPLIの取り扱いは専門知識が必要

PPLIは法の抜け穴ではなく、合法的な仕組みである。一方でその複雑な設計と対象の限定ゆえに、ニッチ戦略であることも確かである。残念ながら誰でも使いこなせるものではなく、専門知識を持ったアドバイザーのサポートを持ってしか有効な使い途とはなり得ない。

だが、正しく使うことができれば資産保全、資産継承において非常に強力な武器の一つになることは間違いない。

なお、既にプライベートバンク口座を持つ人の場合、プライベートバンクをカストディとして継続利用する形でPPLIを設定することも可能である。これまでのプライベートバンクとのリレーションを大事に思うのであれば、それを維持したまま、PPLIとしてのメリットを享受すればよい。そのようなアレンジメントが必要であれば是非一度お声がけいただきたい。なお、参考パンフレットはこちらからもダウンロード可能である。

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