お金周りのことを相談するのを躊躇う人もいる一方で、自分一人で考えることに限界を感じる人もいる。そんなとき信頼できる専門家に相談したいと思うのは当然である。

一方でこの「信頼できる」という部分を明解にできている人は多くはない。投資アドバイザーとのリレーションを成功に導く上でとても重要な点であるにも関わらずである。そこで、私の経験上、皆さんがどのようなことを考えているのかを共有したいと思う。ご自身なりの答えを見つけてもらいたい。

信頼できるための条件とは

業務に必要なライセンスを持っている

当たり前のことではあるが、どこの国に行っても投資に関するアドバイスをするためには然るべきライセンスが必要になる。これは、投資という活動そのものが、騙し騙されしやすい領域である、ことに由来している。投資家を守るために、各国の規制当局が目を光らせている分野である。

何も金融分野に限った話ではない。飲食店だってお酒を取り扱うライセンスがなければお酒を提供できないし、料理を提供するのだって衛生管理がなされているべきである。温泉だって水質検査をしてもらわなければならない。運転免許だって、違反が続けば免許がなくなるからこそ安全運転をする。

第三者によってチェックされ、そして場合によっては退場しなければならない、という状況に置かれていることは重要である。

知っている人だから、友人から紹介されたから、以前ライセンスをもっていたから、ということでこのチェックをスキップするのは危険信号である。今も変わらず正当に業務をしているのであれば、ライセンスは常に維持されている必要がある。だから、ライセンスチェックは必要最低限のものであると言える。

会話ややりとりの記録がしっかりしている

人間なのでお互いに言ったことを忘れることもあるし、勘違いをしてしまうことだってある。言った言わない問題は常につきものではあるが、会話ややりとりがしっかりと記録されているかどうか、しっかり記録するタイプの人なのかは見極めた方がいい。

直接会って話をすることが安心に繋がると思う人はいるかもしれないが、全て口頭だと記録が何も残らない、という問題もある。かといってメールばかりでも言いたいことが上手く伝わっていないことだってある。

誰がいつ何を話して、どのような経緯で、結果意思決定が行われたのか、などは明快にしておくのがよい。何かトラブルになったとき、第三者がそれを見て客観的に判断することになるのだから。

逆に、全ての話を電話で進めようとしたり、二人きりのときにしか話が進まないようなら、一見すると「気軽に連絡がとれ、秘密が共有されている」かのような気分になるが、その先に待っているのはトラブルかもしれない、という意識を持っておくとよい。

人となりが理解できる

投資の話と全然関係ない気もするが、投資アドバイザーもまた人間である、という点を忘れてはならない。24時間仕事をしているわけではないし、プライベートだってある。仕事をしているときは力が入っていて、仕事が終わるとリラックスしているものである。

投資アドバイザーがクライアントの人となりを知っておきたいと思うのと同じように、クライアント側も投資アドバイザーの人となりについて考えてみるのは意外と有効である、と思う。

でも、同じかあるいは似たような考え方を持つことが大事なのではない、という点はあえて言っておきたい。ご自身の身の回りにだって、気の合う友達もいれば、考え方が違うからこそ長く続いている友達だっているはずである。

ただ、人を知る、という部分は長期的なリレーションを考えたとき、自然とできていることが理想であると言える。

立場が明確である

投資アドバイザーでありながら、投資アドバイザーであることを積極的に表明しないこともある、ということを注意点に挙げておきたい。例えば、白衣を着た人が健康づくりのためのセミナーだというので医者から何かアドバイスをもらえるのかと期待して参加してみたら中身は保険のセールス勧誘だった、ということが挙げられる。資産運用だと言い放つのに、保険の話しかしない人だっている。

特にお金周りのことであり、セールスでもある、となると人は警戒しがちである、というのが翻って彼らにそうせしめるわけだが、やはり立場は明確にしておくべきである、と思う。逆に、投資アドバイザーっぽく見えて色々親身になって話を聞いてくれるものの、いざとなったら誰かを紹介するだけ、ということだってある。

もちろん投資アドバイザーが何をしてくれるのかは聞かないと分からないことだってある。だからこそ相手がどのような立場にいるのか明確にしてもらうことは重要であると言えよう。その立場こそ、いざとなったときにその人が取る責任と強く結びついている。

嘘をつかない

投資アドバイザーといいつつ、ただの金融商品セールスだ、ということだってある。そういう経験をして嫌な思いをしたことがある人もいるだろう。営業マンというのは得てして口が達者で、丸め込まれるという感覚を持っている人もいる。話していることが嘘なのか本当のことなのか、判別がつかないことだってあるだろう。

ただ、嘘を話している場合、時間が経つほどに化けの皮は剥がれる傾向にはあるもので、時間をかけて相談することによってクライアントも冷静な頭で考えられるようになる。結果的に、嘘があったと感じたのであれば、危険信号である、とは言える。もちろん、嘘だと決めつける前に、疑問を解決することが大切なときだってある。

逆にクライアントの側も、投資アドバイザーに対して嘘はつかない方がいい。もちろん信頼できるまでは話せないことがあるのは理解できるが、知らない情報や誤った情報に基づいてアドバイスをしてしまっている可能性については知っておくとよい。だからこそ投資アドバイザーがクライアントをよく知ろうとしているかは重要である。

分かりやすく説明してくれる

金融に関わること、投資に関わることはやはり難しい内容である、と感じる人は多い。例えば利回り○%、元本保証のような単純化した話を期待するのではなく、難しく書かれた内容を噛み砕いて話してくれるかどうかを見てみるとよい。

専門的な用語でまくしたてられても分からないものは分からない。分からないことがあるうちは先に進むべきではない。一度聞いても分からなければ何度も聞けばいい。自分のペースに合わせてくれないのであれば無理に先に話を進める必要はない。

メリットもデメリットも話してくれる

クライアントは「良い話」を持ってきて欲しい、という期待感を持っているのは確かである。当たり前である。ただ、問題は「良さそうな(でも実際は悪い)話」も呼び寄せることがある点である。大事なことは投資アドバイザーの言っていることを鵜呑みにしたり、二つ返事で答えたりすることではなく、メリットとデメリットについてしっかりと話を聞くことである。

逆にメリットしか話をしない人に対しては、何か落とし穴があるのではないか、という疑念を持つ人も少なくない。投資には運の要素もあるのだから、と納得する前に、できる限り論点を尽しておくべきである。と言える。

自分にあったプランを提示してくれる

考えれば分かることだが、誰がやっても成功するような「世界最高のプラン」を目の前の投資アドバイザーが持ってきてくれるわけではない。そんな美味い話があるか、ということではなくて、要は自分にとって現実的な提案になっているのか、という観点が大事である。

出会って数分で提案されるものが、自分のために練りに練られたものであるわけがないし、自分のことを何も話していないのに、あなたの顔だけを見て「あなただけのプラン」などが出てくるわけがない。

自分に合ったプランを考えるとき、クライアントと投資アドバイザー双方が歩み寄る必要がある。クライアントの情報がなければ、最適なプランを提示することはできない。相談する側もぐっと堪えて自分に合ったものに焦点を当てて考える必要がある。

投資アドバイザーを選ぶときのコツ

投資アドバイザーの考え方について知る

人となりを知ることの大切さについては既に触れたが、投資アドバイザーがどのような考え方をしている人なのかを知っておくことは良いことであると思う。論理的に物事を考える人なのか、行動する前に色々調べる人なのか、あるいは金銭感覚もそうかもしれない。

なぜ、投資アドバイザーという仕事をするに至ったか、などもヒントにはなるだろう。あるいは投資アドバイザーから見て投資以外のことをどのような視野で見ているか、も普段考えていることを知るという意味ではいい。

投資アドバイザーとの利益相反について知る

投資アドバイザーは投資をアドバイスすることで収益を立てている。このことが、投資家の利益に相反するのではないか、という意見は常にある。どういうことか理解しづらい、という人は是非少し時間をかけて考えてみてもらいたい。

例えばアパレルショップに服を買いに行ったとして、店員さんはあなたに似合う服を選んでくれるだろうか。あるいは売れ筋の商品を勧めているだけではないか。何を着ても似合うと言うのではないか。

つまり、金融商品を販売することで生計を成り立たせるなら、金融商品が売れるか売れないかが肝心なのであって、クライアントが利益を最大にすることに尽力していないのではないか、という話である。

投資アドバイザーもまた商売である以上、無償ではないわけだが、逆に無償だというのなら別のところから収益が立っていなければおかしい。そのときにクライアントの味方である、とは限らない。

利益相反の解決の一つのカギは、報酬の開示である、というのが業界の答えである。埋め込まれて隠れた費用は見逃すのに、開示された費用を嫌がる人は多いが、結果的に情報開示は利益相反を解消させている面がある、ということは知っておいてもらいたい。

投資アドバイザーとの知識の差について知る

投資アドバイザーに知識と経験を求めるのは素直であり、その差が大きいほどやはり価値を感じる。

一方で、投資アドバイザーが言うことを理解するためには自分の知識と経験を追いつかせなければいけない、と思っている人もいる。後者の努力は否定されるべきではないが、本質的には「差が埋まらない」ところに価値が存在する。

体調が悪くて病院に行ったとして、風邪だと言い張って風邪薬をもらってくることだってある。薬に少し詳しくなって、処方箋を書いてもらおうとする人だっているかもしれない。でも、どこまでいっても診断を下す責任を負っているのは医者であり、難易度の高い手術ともなれば、術前説明を患者は理解する必要があるにせよ、手術を自分でやると言い出すことはない。

投資アドバイザーとの知識の差を認識することは、自分単独では到達し得ない場所へと行くための大きな一歩である、とは言えるだろう。そのためには、信頼できることが先か、その差が分かって初めて信頼できるのか、ニワトリと卵の要素はたぶんにあるのかもしれない。

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