海外に住んでいる場合、老後の年金計画がおろそかになりがちではあるが、どのような選択肢があるのかでしょうか。海外駐在、海外移住などを通じて海外居住をすることになった方々が年金を作る上でどのようにしているか、解説します。

海外に住むというライフスタイルの選択

日本では東京一極集中が進む一方、老後は都心を離れて地方移住したい、海外移住したいと考える人は増えてきているようです。住み場所を選ぶということは一つのライフスタイルの選択です。特に、海外旅行や海外駐在経験を通じて、海外に住むということがより身近な選択肢になった人も多いのではないでしょうか。

海外に住む動機としては、

  • 日本人の少ないところでのんびり生活をしたい
  • 十分な公的年金が得られないなら、あえて物価が安く支出を抑えられる場所に住みたい

等さまざまです。

ただ、お金に関する社会制度の多くはその国に住み続ける人を対象に設計されているため、国を出たり入ったりするような、社会から見て”例外的な人たち”を必ずしもカバーはしてくれず、苦労することは少なくありません。

海外での日本の年金の受給

まずもって何の資金手当もない人が海外移住を検討することはあまりないかとは思います。特にセカンドライフを海外でという場合、多くの人にとっては、海外在住でも日本の年金を受領することはできるということが一つの大きな支えになっていると考えられます。ただし、任意加入などを通じて、しっかり年金保険料を収めておくことが大前提にはなってきます。

ご自身がどのくらいの期間加入していたかそれがしっかり記録に残っていること、それにより受給資格を得ているのかの確認を怠ってはいけません。

実際、受け取りについても、海外にいても日本にいたとき同様、2ヶ月に1度は指定銀行口座に年金が振り込まれます。ただし、年1回届く「現況届」を在留証明書とともに返送しましょう。生存確認になります。また、年齢になったら自動的に年金が支払われるわけではないのは日本にいるときと同じなので、年金を受け取りたければ各自で年金請求の手続きが必要です。

日本で入った保険は死亡保険金が支払われない可能性

死亡保険金が支払われない可能性があるのか、と不思議に思う人もあるかもしれませんが、多くの保険会社は加入者が加入時の居住国に住み続けることを前提に引き受けを行なっています。一つには居住国をもとに保険数理上の母集団の想定がなされ、保険料が提示されているからです。

したがって、日本よりも平均寿命が短い、あるいは生活にリスクがあるとされる場所に住む場合は、同じ保険料でいいのか、そして結果的に死亡保険金が下りるかどうかは”保険会社の判断に委ねられる”ということになります。保険に入っている=死亡保険金が下りる、ではないのです。カントリーリスクの考慮ですね。

もちろん「海外渡航届」などを出すだけ、と思う人も多いですが、渡航と移住は少し事情が異なってくることも十分考えられます。

せっかく終身保険に入ったのに、海外に出てしまったときに安心とは言えなくなってしまうことがありえますから、海外移住を検討する人は加入前に、また遅くとも渡航前に保険会社に確認しておくことをお勧めします。

香港の保険の場合、お客様の居住地の変更に伴って追加の保険料を要求されることがありますが、もともと人の出入りの激しい国際都市ですから、そういった加入者の対応には非常にスムーズに対応してくれる印象です。

住んでいる国では保険がないあるいは条件が悪いなど、アジア各地から香港へわざわざ保険を買いに来る人がいるのはそういう背景もあります。もちろんそれでも保険が適用できない国というのはあるにはあります。こういう方々は死亡保障付きの保険ではなく、資産運用により年金に相当する資産の構築を目指すことになります。

移住後に現地での銀行口座開設

銀行口座は原則的にはその国の居住者に対して提供されます。したがって、事前に準備できることではないかもしれませんが、移住したときには新たに現地で銀行口座を開設する必要性が生じます。

もし仮に新興国に移住されるケースであれば、多くの場合は日本円よりも預金金利が高いことに気付くと思います。それを魅力に感じ、早く口座開設をして早くお金を置いておけばその分金利で稼げるという発想になりそうです。

ここで覚えておいていただきたいのは、「金利が高い通貨は、同時に物価の上昇が大きく、通貨価値は下がりやすい経済環境にある」だということです。

トルコリラやらブラジルレアルやらは金利が高いといって外貨預金に取り組んだ人も多かったかもしれませんが、結果として儲かった人はどれくらいいるでしょうか。為替の動きというのは金利よりもずっと大きいですから、まずは為替リスクがあることを念頭に置きましょう。

あとは金融システムが未発達の国の場合、預金保険という概念がないので、銀行が潰れたときのペイオフがありませんから、資産の多くを預けておくには不安が残ります。

居住する国で公的年金を利用

日本での年金制度を利用し続けることとは別に、居住することになった海外で公的年金制度が利用できることは大いにあります。

逆によく出る疑問としては、日本と海外、両方でそれぞれ加入しなければならないのかどうか、という点です。これに関しては、一般的には母国の年金制度または居住国の年金制度のいずれかを選択できるよう社会保障協定が結ばれていることが多いです。

なので、日本で年金保険料の支払いを継続していれば海外で行う必要はありません。もちろん、自由意志で両方に加入できることもあるので、メリットがあるようなら検討してみてもいいかもしれません。

香港の場合は、MPF(強制積立基金)がありますが、そもそも年金制度自体は長期運用目的なので、帰国などで数年後に解約が発生し得るとメリットが薄れると考えておいた方がいいでしょう。MPF以外にも自分年金を作る術はたくさんあります。

公的年金とは別の追加的な資産形成

海外移住をしない場合ももちろん資産形成をすべきではあるのですが、海外移住時の支出はとりわけ想定外にぶれる可能性があることは注意すべきでしょう。月々の収入の柱は日本の年金から、そして普段遣いは現地金融機関の預金から、でいいかもしれませんが、余裕があれば追加的な年金相当資産を持っておくことは重要です。

生活通貨は現地通貨になるとしても、海外は必ずしも終の住処とならないことも考えられますから、依然として通貨を分散させて資産を保有することは非常に重要です。経済発展で物価が高くなり、同じ収入では生活水準を維持できないかもしれませんし、政治体制が急激に変わって通貨の信頼が失われる可能性だってあります。

現地と日本を行き来する羽目になり、思ったよりも医療費が高くついてしまうこともあるかもしれません。資産の管理を怠れば、せっかくの海外移住生活が途中で終わってしまうということに繋がりかねませんから、十分な対策をとっておきましょう。

最後に

様々な国で活躍する独特の顧客層を抱えているので、こういった資産設計においてもお力になれることもあるかもしれません。皆様の海外生活が不安なく送れるよう、サポートさせていただきます。自分年金づくり、取り組んでみませんか。

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