海外送金は手間と手数料がかかる、と思い込んでいる人はいませんか。ちょっとした手続きをするだけで、海外生活の不安の一つを取り除くことができます。
目次
自分のお金を自由に動かせない不安
お金に関する心理の中で日常生活に影響を与えるものの一つとして、現金の潤沢さがあります。
- お財布に十分な現金が入っていること
- いつでもどこでも使えるクレジットカードを持っていること
- 銀行預金が十分にあること
これらは絶対値でいくらあると安心というものでもないものの、本人なりの十分な額がないと何かあったときに対処できない(お金で解決できない)リスクがあることで、人を不安にさせる効果があります。
海外にいると、例えば日本に貯蓄はあるが海外にはまだない、あるいは海外には貯蓄があるが、日本での支払いが上手くできない、などの悩みが起こります。
もちろん、あったらあっただけ使ってしまうという人もいるので、アクセスできないことがいいときもあるわけですが、意思決定が非効率的になってストレスを感じるのは避けたいところです。
海外送金サービスを上手く使いこなすことで、他国にあるお金を自由に動かせることは、海外生活を充実させることに繋がるのです。
海外送金の課題
海外駐在にしても、海外移住にしても、まずは自分自身と家族が無事に引っ越しすることを考えますね。生活するのに必要な家財なども持っていきますが、何度も動かすのは非効率なので一度に何かしようと思ったり、あるいはできるだけ身軽にしようと思ったりするものです。
ただ、お金に関しては次の国で仕事が決まっている場合はすぐに必要なものでもないので、置き去りにされがちです。自分の身体は引っ越したのにお金が引っ越せていない、ということは多いのです。
私のいる香港の場合、海外送金に伴う税金について考える必要はあまりありませんが、例えばイギリスであれば、実際に現地に行った後に海外送金するのと、現地に行く前に海外送金するのでは税制上の扱いが異なるとされます。あるいは、現地に住んでいないと銀行口座が持てないので、帰国が決まったら現地の銀行口座を閉じなければならない、という国もあるようです。タイミングのコントロールも難しそうですよね。
仮に銀行口座が維持できたとしても、実はお金を動かそうとすると現地の支店窓口に行かなければならなかったり、あるいは現地の電話番号にワンタイムパスワードがSMSで届いたりすることで、実質お金が動かせない、という局面に陥ることもしばしばあります。
海外にあるお金をいつでもどこでも動かせるようにしておくのに便利な海外送金サービスとしては、WISE(ワイズ)が一番に挙げられるのではないでしょうか。外国為替の両替なんて、行ったり来たりするだけでお金が消えて無くなる、などと思っていませんか。
WISE(ワイズ)のサービス
WISE(ワイズ)は旧名TransferWise(トランスファーワイズ)という会社ですが、本社がイギリスのロンドンにある、フィンテック企業です。ロンドン証券取引所に上場していますし、ヨーロッパだけでなくアジアでも利用者がたくさんいます。
住んでいる場所によってサービスが多少異なりますが、国際送金をベースにして、マルチカレンシー口座や国際デビットカードなどが利用できます。口座、という言葉を出したので、誤解のないように言っておくと、WISE自体は銀行ではありません。
しかし、WISEは各国でその国の通貨の銀行口座を持っており、ユーザーはその銀行ネットワークを利用して残高をアカウントの中に維持したり、送金したり、ということが可能になっているのです。
WISEのアカウント登録
WISEは銀行ではありませんが、金融サービスを提供しているので、身分証明書類や電話番号、税務番号(TIN)などが必要になります。世界中で利用ができるWISEですが、アカウントは個人に紐付くため、世界で一つのアカウントにすることを推奨しています。登録情報を変えればいくつかアカウントを持てるのではと画策するかもしれませんが、判明したときのリスクもあるので、やめた方がいいでしょう。
アカウントの登録自体は難しくないので、画面に沿っていけば十分と思います。既ユーザーからの招待であれば最初の送金手数料が少しオトクになります。招待元に個人情報が漏れることはないので安心してください。
香港と日本でのお金のやりとりを考えている人は2パターンの登録方法が考えられます。
- 香港IDを持っているか
- 郵便物が届く香港の住所があるか
- 日本のマイナンバーカードを持っているか
- 郵便物が届く日本の住所があるか
を基準にするといいと思います。
① 香港→日本の送金を予定している場合、香港IDと住所で利用が可能となりますが、マイナンバーカードがなければ日本→香港は取り扱いが不可となります。住民票を抜いて出てきてしまった、という人はこの点に注意です。
② 日本→香港の送金を予定している場合、マイナンバーカードを持っていない場合は日本の住所を登録し、海外在住のためマイナンバーカードがない、という設定にする必要があります。香港IDを利用すれば香港→日本の送金は可能になります。ただ、日本の住所確認のために郵便物が届くため、ご家族等に受け取ってもらう必要がある点は注意です。
なお、中国本土在住者で日本→香港の送金を行うにあたっては、中国での住所で登録し、マイナンバーカードは不要だそうです。ただ、駐在の方は中国での住所証明書類が取得しづらく、ガス会社などに頼んで請求書を臨時で作成してもらうなどの対応が考えられます。
マルチカレンシー口座の利用有無
登録する国によってはWISEのアカウント内に残高を保有し、そしてデビットカードで使うことができる、マルチカレンシー口座が利用できます。
香港で登録する場合、現状マルチカレンシーで利用はできるものの、デビットカードは発行されません。国際送金で利用する目的、にはなると思います。送金手数料は無料の銀行サービス等がありますが、実際は為替レートで手数料を抜かれていることの方が多いので、WISEはお手頃だと言えます。
日本で登録する場合、マルチカレンシーで利用でき、デビットカードも発行されます。ただし、アカウント内に置いておけるのは合計して100万円までですので、外貨預金のようには利用できず、銀行口座と同等とは言えません。あくまで国際送金や小口の支払目的ということになります。デビットカードを用いれば月2回、3万円/回は海外でのATM引き出し手数料がかかりません。3万円を超えた場合も手数料が高いわけではないので、例えば香港に旅行を行くときなども両替屋で替えるよりは、WISEで現地通貨に替え、現地のATMで引き出しを行う方が手数料が安い、と言えそうです。
欧州やオーストラリアなどで、マルチカレンシー口座を保有できたならば、ほぼ銀行口座同様に使いこなせるといって過言ではないでしょう。自分の現地の銀行口座からお金を送り、WISEのアカウント内で複数の通貨に格安の手数料で両替ができます。デビットカードは世界中のATMで利用できるので、好きなときに好きなだけ好きな通貨を引き出すこともできてしまうわけです。
とはいえ、一つのアカウントに様々なお金が入り乱れると違う目的に使ってしまう人もいるかもしれない、ということで、アカウント内には貯金箱(jar)という機能が備わっており、〇〇用に△ドルという風にラベルをつけて取り置くことができ、デビットカードで間違って使ってしまう、ということもなくなります。ステートメントの残高からも消えてしまうので、まさにお取り置き用のポケットのような感じです。
WISEにかかる手数料
WISEが便利そうなのは感じたかもしれませんが、何より肝心なのは手数料でしょう。
例えば、日本から香港にお金を送るとしてどんなパターンが考えられるでしょうか。
- 日本の銀行で日本円を香港ドルに替えて送る → 香港の銀行で受け取る
- 日本の銀行で日本円を送る → 香港の銀行で日本円を受け取り、香港ドルに替える
- 日本の銀行から日本円を下ろす → 日本円をハンドキャリーで香港に持ち込む → 香港の銀行に持ち込み香港ドルに替える
- 日本の銀行から日本円を下ろす → 両替屋で香港ドルに替える → 香港ドルをハンドキャリーで香港に持ち込む → 香港の銀行に預ける
などがありますね。
インターネットバンキングでは金額に上限があったりするため、銀行に行って手続きをするのや、両替屋に行くのは面倒ですよね。しかも安くない手数料を持って行かれます。
挙げ句の果てに、海外送金したお金が向こうの国に着くのに1〜2週間かかったり、途中で行方不明になったり、とトラブルの話も聞きます。手間と手数料のことを考えて海外とのお金のやりとりをしたがらない人が多いのも事実です。
しかし、WISEの場合、銀行に行く必要も両替屋に行く必要もありません。手数料や為替レートも顧客フレンドリーであり、そして何より、すぐに向こうの国に着金します。どれだけ違いが出るかは、WISEのサービスの中でも分かりやすく示してあるので、ここでは紹介しませんが、安く手軽に、そして素早く送るのには長けていると言えるでしょう。
一点だけマイナス面を挙げるとしたら、WISEは多額の送金をするのには向いていません。例えば、動かす金額が数千万円だというのであれば、銀行を利用した方が手数料も安く、かつ一回で済みます。WISEを使うなら小口送金になり、例えば日本との間では1回あたり100万円以内です。それでも早さのメリットはあるので、良い為替レートのタイミングで、コツコツ送るという方法もあります。
海外で金融サービスを上手に活用する
WISEも海外と関わるからこそ利用するサービスではありますが、動かせるようになった資金で何をするのか、ということを次に考えねばなりません。海外の証券や保険サービスについても、海外ならでは特色があり、上手く利用すれば生活の不安を解消したり、将来に向けた資産形成の役に立ったりすることは十分に考えられます。
WISEも企業努力で費用が安くなってきていますが、同じく英国からはデジタル銀行(現状、英語のみ。日本円は対応)も台頭しはじめており、各国に無料で送金できる日も近いかもしれません。
せっかく海外にいるのであれば、新しいサービスについて知見を深めてみてはいかがでしょうか。