一時期の熱狂を通り過ぎ、暗号資産は浸透へとフェーズが移行しつつあります。各国での法整備も進み、日々の値動きも随分と落ち着いてきたのかもしれません。暗号資産への投資を通じて億り人になった人や、暗号資産を用いて日々の生活を営む人を少なからず見てきました。

暗号資産は自由なライフスタイルの構築に寄与している一方で、ある意味無国籍な性質と匿名性により、税逃れにも利用され得る現実があります。世界的にも無視できないほどに市場規模が拡大したことで、国を跨いで暗号資産の取引を捕捉するべく、CARFが整備されるに至っています。

CRSとCARFの違い

銀行口座や証券口座などのいわゆる金融資産についてはCRS(共通報告基準)が広まっている、ということは既に多くの人の認識にはあるでしょう。この導入を推し進めたのはOECD(経済協力開発機構)ですが、CARF(暗号資産等報告枠組み)も同じです。つまり、CRSの経験を活かした、基本的には同じような概念フレームワークであると考えられます。なお、OECDは標準を策定しているだけなので、OECD加盟国でなくても、この枠組みには参加しているところがたくさんあります。

金融資産と暗号資産では、そもそも資産の置き場が違っていることによりCRSで捕捉できないことがあることから、CARFを組み合わせることができれば、より多くの情報が分かる、と言えそうです。

でもここで大事なのは、CRSもCARFも、情報が分かる=透明性が高まる、というだけであって、捕捉されることがすなわち課税に繋がるわけではない、ということです。

CRSとCARFで違うことの一つは、CRSは報告対象に残高が含まれるのに対し、CARFでは残高ではなく取引情報が含まれる、ということです。暗号資産は残高が容易に移動することを思えば、現実的な対応なのかもしれません。

CARFの対象は

暗号資産と一口にいっても、実に多種多様です。ビットコインなどの代表的な暗号資産以外にも、ステーブルコインやトークン化された金融商品、NFTなども含まれます。

投資家個人としてこの分類を理解して報告しなければならないわけではありません。報告義務が課されているのはあくまで暗号資産取引業者等のサービス提供側です。サービス利用者としては、税務上の居住地国や納税者番号を正しく届出することのみです。実際に国同士でどのような情報が交換されたのか、を知ることもできません。

また、CARFの対象者は非居住者です。つまり、日本の暗号資産交換業者を利用する、海外居住者に関する情報が海外へ報告され、海外の暗号資産交換業者を利用する、日本居住者に関する情報が日本へ報告される、というものです。海外居住者だからといってCARFを気にしないといけないわけでもありません。単純に居住国以外に資産があるかどうか、が重要なのです。ただ便利というだけで海外の取引所を利用してきた人こそ、今後は意識しなければいけません。日本では、暗号資産への申告分離課税の導入により国内での取引に関しても支払調書を通じて網羅されることで、CARFで得られる情報が有効利用しやすくなる、とも考えられます。

出国税に該当するかどうかの論点

ここでの出国税というのは国際線の空港利用のときに取られるものではなく、いわゆる国外転出時課税制度に該当すれば取られるもののことを指します。未実現の含み益課税の仕組みになります。

多くの暗号資産が金融商品として分類され、日本における所得分類も雑所得から申告分離課税になる、というのは既に流れが形成されていますが、そうなると出国税の対象にも含まれるのではないか、と考えるのは自然です。それぞれ整備すべき法令が異なるので、それぞれ見ていくほかありませんが、法令間で矛盾が発生しないよう、何らかの一貫性が意識される、のは仕方のないことでしょう。仮に現時点では対象でなかったとしても、将来的に、暗号資産が出国税の対象になることも十分想定すべきです。

タイムラインを意識した対応を

先に述べたように、あくまで情報が共有されるかされないかの違いだとしたら、過度に意識しなくていい人も多いはずです。ただ、制度の導入によって対応が必要になる人がいるのであれば、事後対応で慌てるよりは事前にプランニングをしておいた方がいいのは確かです。ノウハウが蓄積することで、制度改正も非常に迅速に行われるようになってきていますから、単に現状のタイムラインを意識するだけでなく、次の変化を見越しておくことも場合によっては必要になるでしょう。

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