生命保険に加入したはいいものの、契約期間の途中で見直しや解約をする人は少なくない。保険会社を変える、プランを変える、保険料を変える、もちろんあっていいことではあるが、損をしないためには何をすればいいのだろうか。

特に香港の場合、保険商品のラインナップが日本とは異なっているため、アクセスできるならば追加で利用したいと思う人、あるいは日本のものと並べてみて見直しや解約を検討する人もいる。安易な決定をしないように、注意すべきポイントをまとめてみたい。

目次

生命保険とは長期契約である

生命保険契約というのは、一般には長期の契約になる。ここが損害保険契約と大きく異なるところだ。もちろん定期の生命保険契約というのは存在するが、この場合は年齢とともに保険料が上がっていくことになるだろう。死というリスクは年齢とともに確率論的に増大するのだから一見フェアではある。

しかし、働き盛りをすぎてなお、保険料が上がり続けることを容認できる人は多くはなく、結果として契約期間中にわたって保険料が一定のものを選ぶ人の方が多く、そしていつかは保険料を払わずに済むようになるプランの方が現実的と受け止められよう。

長期の生命保険に加入した場合、解約をすること、特に早期に解約をすることは通常は損失をもたらす。ただ、必要ないものは解約すべきだし、よりよい条件の契約に乗り換えることだって排除すべきではない。既存の契約と新しい契約を比較し、自分自身の利益に照らして、見直しや解約が最善であることは確認しておきたい。

以下、香港保険監督局(IA)から出されているガイドラインを参考に、生命保険の見直し・解約においてすべきこととすべきでないこと(Dos & Don’ts)をまとめてみたい

生命保険の見直し・解約ですべきこと(Dos)

なぜ、生命保険の見直し・解約をするような事態になっているのか。そしてそれは自分自身の利益のためだけなのか。

自分自身で思い立って見直しを考える場合はさておき、誰かに言われて見直しや解約を検討するようになった場合、どのような利害関係のもとにそのような提案を受けているのかは冷静に考えてみることは大切である。

死亡保障額が以前より少なくなっていないか。

一般には死亡保障額が多い方が、生命保険加入のハードルは高い。年齢を経るにつれて保険料は高く、そして死亡保障額は低くしたがるのが保険会社である。したがって、生命保険の見直しや解約を通じて、死亡保障額が減ることは自然であり、それによって条件が劣化していないかを確認する必要がある。

予定利率や保証利率に変化はあるか。

保険会社は経済や金融の見通しに応じて、予定利率や保証利率を加入者に提示する。そのため、見直しや解約をするタイミングでは以前と利率が異なる場合がある。

一見すると利率が高く見えたとしても、“非保証”の利率の割合が増えたのであれば、より大きな投資リスクにさらされることになることは理解しておくべきである。一般には香港の保険の方が非保証部分が大きいため、日本の保険よりも利率が高く見えてしまう。

通常配当や特別配当は提供されるか。

既存の契約が数年経過しているのであれば、通常配当や特別配当が提供され始めることはある。新しい契約に乗り換えてしまえばこの期間がまたリセットであり、想定されるキャッシュフローは異なってくる。利率だけでなく、配当の形も意識されるべきである。

見直しを通じて、一定期間保障内容に穴が発生しないか。

例えば、新規の生命保険契約においては、自殺に関するカバーは待機期間(waiting period)が1年ほどに設定されていることが多く、生命保険契約を入れ替えた場合は当然リセットされる。

また、入れ替え後の生命保険プランにも審査が存在し、入れ替え前のプランを解約した後に入れ替え後のプランの審査に落ちると、生命保険自体が適用されなくなってしまう。

不可争条項は有効になっていないか。

保険契約の場合、加入時に告知を行うが、告知事項に違反があった場合は、保険会社は契約を解除できる。ただし、一定期間(通常は2〜3年)有効に継続した契約については、その後告知義務違反を理由には契約解除できないとする、不可争条項(incontestability clause)が有効になっている場合があり、入れ替え後は当然ながらこれもリセットされる。

見直し前後の生命保険契約は同じ種類のものか。

生命保険にも様々な種類があり、ニーズが変われば種類が変わるわけだが、見直し前後で生命保険契約の種類が変わる場合は単純な横比較はできない。特に、一般的な生命保険を投資型保険で置き換えようという場合、より大きな投資リスクを受け入れることにあることは理解しておくべきである。

見直しによって、支払保険料が増大したり、支払期間が延びたりしていないか。

年齢を重ねると一般には健康状態が変化し、それゆえに支払保険料が増大する。それを誤魔化すために支払期間がむやみに延びたりしていないかは確認すべきである。

そもそも既存の契約についてよく理解しているか。

新しい契約に目移りをする前に、既存の契約内容について理解を深めることは大切である。契約時に説明を聞いていても、数年経って中身を完璧に覚えている人は多くない。まずは既にある契約について知るために、書類を確認したり、保険会社や仲介会社に問い合わせることは重要になってくる。

既存の契約に変更を加えるだけで解決できないか。

新しい契約に乗り換えるのではなく、既存の契約の中で特約(rider)を付与したり、あるいは保障額を増やしたりすることもメリットがある場合がある。

生命保険の入れ替えについての注意喚起はどこでチェックするか。

このブログでも注意点は列挙してあるものの、決して網羅的ではないし、人によって状況は異なりうる。自分自身で考えつくものが少ない場合は、生命保険の入れ替えに伴う注意喚起を色々と調べて、疑問を洗い出しておくことは必要だろう。契約書の中にも注意喚起は登場することが一般的だ。

新しい保険契約は思っていたとおりのものか。

保険契約の中には、審査を経て追加の保険料を要求されている場合もあるため、結果として思っていたとおりの保険契約になっていない可能性もある。保険証券が発行された後に精査し、クーリング・オフ期間中に対処をすれば、保険料は返還される。

保険仲介人がバランスのとれた提案をしているか。

保険仲介人によって各保険会社との取引の状況や、個人としての考え方もひょっとしたら異なるかもしれない。既存の契約先、新規の契約先ともにバランスのとれた見方で接することは大切になってくる。

生命保険の見直し・解約ですべきではないこと(Don’ts)

保険料の違いだけで契約を変更しない

保険料計算はもちろん保険会社毎に異なり得るものの、一般には生命保険を通じたカバー範囲や条件によって決まっており、保険料が変わるということはカバー範囲や条件が変わっているということは忘れてはならない。保険料を安くするということは自ずと保障範囲を狭めることも理解し、必要な保障額にこだわることも必要である。

保険の宣伝資料にある情報がそのまま契約条件だと思わない

保険も商品である以上、宣伝資料は存在し、魅力的に見えるようにしてある。しかし、どのような場合も保険契約そのものが最終的には有効であるため、必ず契約条件(T&C)を確認すべきである。

空欄や未完成の書類には署名をしない

署名とは、書類の記載内容への同意を意味し、それに対する責任を負う行為である。そのため、空欄や未完成の書類には署名すべきでないというのが原則であり、途中で内容が変更された場合は追加で署名を求めるのが一般的である。提出した書類のコピーは手元に保管すべきである。

保険仲介人に現金や、宛名のない小切手の手渡し、個人口座への送金を行ってはならない

保険料を支払った場合、領収書の発行を要求することができる。きちんと保険会社に保険料が支払われたことを確認すべきである。

保険仲介人に全幅の信頼を置かない

保険仲介人も人であり、ミスも犯し得るし、誤解が発生する余地もある。ましてライセンスのない保険仲介人に出会うようなことのないよう、保険仲介人として説明を行った本人が書類に署名していることも確認したい。

販売する商品によって必要なライセンスは異なり、会社及び個人のライセンスの登録状況は公開情報なので、いつでも最新情報を確認することができる。疑わしい要素があったのであれば、事実確認は保険会社に直接行うこともできる。

最後に

以上はあくまでよく起こりがちなポイントをまとめたものだが、いずれにしても大切なことは、生命保険の見直し・解約は“重大な変化”をもたらすものだと理解し、勢いではなくしっかりと時間をかけて論点を網羅し、最終的に納得のいく結果を得ることである。

細かなポイントもあるにはあるが、保険料もまた汗水流して稼いだお金から支払われるのだから、一時の迷いで無駄にすべきものではない。愛する家族のために最善のプランを選ぶことは責務であると知り、立ち止まってチェックしたいものだ。たったこれだけのことで結果は大きく異なってこよう。

↓ この記事が気に入ったらシェア ↓