海外投資家が日本への投資を見直している、という報道を聞いたことのある人は多いと思う。実際、海外投資家にとってどのように映っているのか、香港からの感触を少し伝えてみたい。
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見直しは不動産?株式?
少し前から注目されていたのは不動産市場であり、海外の主要都市で不動産価格が高騰する中でも、日本の不動産は相対的に安いと感じられたことが挙げられる。国内からすればバブルを意識せざるを得ないが、低金利環境が唯一続くことで、不動産セクターの中だけで見れば、世界の中で目立ちやすいとも言える。
また近年見直しが進んだのは株式市場である、と言えるかもしれない。国内で働いていると賃金が上がらなくて、景気の良さを感じることは少ないかもしれないが、投資家を意識したコーポレートガバナンスは確実に強化されている。株主を意識しなければ成長できない、という感覚が上場企業の中では特に浸透してきたし、それを促してきたと言っていい。ずっと割安、これからも割安な日本株、とまで言われた日本株が少し立ち位置を変えている可能性はなくはない。
見直しが進む背景
こう言っては何だが、一番は円安に起因していると考えていい。そのことは訪日外国人数の回復と、彼らによる消費額の伸びにも現れている。投資とてお金を使う活動であるから、安く済むことは大事である。為替に起因しているからといって、今後円高を見込んで投資しているわけでもない。
日本としては同じことをしているが、外から見ればチャンスに見えるし、実際消費や投資は数字に繋がる。それこそ、円建てで表している資料を米ドル建てで表した瞬間に、全く違う姿が見えることだってあるわけである。
そうは言っても、国内から見直しが進む声が多く聞かれるわけではない、などと反論が返ってきそうであるが、実際、「外向きの発信」は増えていると言える。聞く人に合わせてピンポイントで情報発信をしている面があるわけである。投資の見直しが進む背景には、やはりそれを見越して海外投資家にアピールしている方々がいるのだ、という点は忘れてはならない。
他国との相対感
ここ数年の日本の投資家もそうだったかもしれないが、投資対象としての米国への確信が強まった面はある。しかし、確信と言っても必ずしも根拠に裏打ちされているわけでもなく、単に期待を裏切られない状態が続いたからに他ならない。
皆が同じことを考えるようになれば、次はまた別のことを考えねばならないわけで、そこに白羽の矢が立ったのが日本である、という面はある。もちろんヨーロッパも見るし、中国もインドも見るかもしれないが、日本は案外謎が深いように映っているのかもしれない。
半信半疑ながらも、他国との相対感から選好されやすく、そして今度は日本がその投資家の期待を裏切らない結果をもたらすかどうかがカギだろう。
一過性のトレンドなのか
個人的な感触で申し訳ないが、日本への投資を継続して行なっている海外投資家というのはそれほど多くない、という気がする。もちろん、日本市場の専門家やトレーダー、という立場で働く人たちはいるものの、結局のところ、最終投資家から見れば資産分散対象の一つでしかない。日本がマストな選択肢なのか、というとそうでもないのである。
したがって、一過性のトレンドを生みやすい面はある。過去も日本は一時的に注目され、そしていつの間にか注目を失ってきた。今回もそうなのか、あるいは一過性であるにしても長続きするのか、このあたりは意識しておく必要がありそうだ。
注目しているのは一部
日本経済にとっては色々前向きな話もしてきたが、一方で忘れてはいけないのが、日本市場について語るプレーヤーが決して多いわけではない、という点である。
誰もが日本について聞いてきたり、持論を展開したりということではない。確かに一定の注目を集めるに至ってはおり、逃したくないチャンスでもある。日本市場に関わるのであれば間違いなく追い風なのだから、目一杯アピールしたいところである。
が、先に述べたように、日本がマストではない海外のマネーは引くときも早いため、過剰に反応すべきでもないと思う。あまりニュースに踊らされず、しっかりとした価値を見極めることで投資が成功に向かうことに変わりはない。