ウェルスマネージャーとして初めてお会いしたお客様とどのような会話をするのか、そして大切な資産をお預かりする上で、どのようなウェルスマネジメントプロセスと投資哲学に基づくこととしているのか、の一端を紹介します。
目次
ウェルスマネジメントプロセス(全3段階)
ファクトファインド
Undertake a Fact Find
まず初めに、お客様から細かなヒアリングを行います。この過程が適切なファイナンシャル・プランニングにおいて最も肝心であり、ファクトファインド(Fact Find)またはディスカバリーミーティング(Discovery Meeting)と呼ぶことにしています。
具体的には、現在及び過去の経済状態、ご家族の構成、投資経験の把握、投資目的・運用ターゲットの擦り合わせ、リスク許容度等の確認を伴います。これにはお客様の性格・深層心理を把握する必要もあります。最も大切なことは、お客様がご自身にあった運用のカタチを可能な限り客観的に把握されることです。ここで具体的な商品をイメージする、あるいは具体的な提案内容を比較する、ということはやってはいけません。
投資方針書策定
Create Your Investment Policy Statement
次に、お客様自身の情報に加え、市場環境等を考慮したうえで、投資アロケーション(資産配分)方針の策定、リスク評価、適正性の確認等を行います。ここでは中長期的な見通しに合わせた、一定の運用ルールを定めることが目的であり、一般には資産の大まかな種類、すなわちアセットクラス(株式、債券、不動産等)の組入比率の目安を定める、Strategic Asset Allocation(戦略的資産配分)に留めます。適正なタイミングでのリバランス等を鑑み、一定の機動性を持たせることが望ましいからです。
投資実行・モニタリング
Execute and Monitor Your Portfolio
最後に、IPSの範囲内で、具体的な投資銘柄をポートフォリオマネージャーが選定し、投資実行いたします。以降は、定期的にポートフォリオのモニタリングを実施し、必要に応じてIPSの範囲内で、ポートフォリオのメンテナンスを行います。短期的な相場の変動により割安なアセットクラスにリバランスするなど、いわゆるTactical Asset Allocation(戦術的資産配分)を行うことがあります。
ただし、短期間での収益獲得を目指す、投機的なアクティブ運用を目指すものではありません。一方、市場の中長期的な見通しが大幅に変化した場合、あるいはお客様の経済状態が著しく変化した場合、IPSそのものの変更を検討しますので、担当者とは定期的に連絡を取ることをお勧めします。
私の投資哲学
お客様のライフステージに合わせた最適なポートフォリオ
お客様とそのご家族を含めた長期でのリレーションを築くことを大事にして、運用戦略を設計いたします。太く短く、ではなく、細く長い関係の方が好ましいです。お客様との定期的な直接対話を通じて、ライフステージや資金ニーズの把握をし、その時々の最適なポートフォリオを模索します。
アセットクラスを横断した見通し
市場は常に変化しています。株式、債券、オルタナティブ等、全体の市場環境を俯瞰しながら、幅広い視野でアロケーションを策定します。また、ポートフォリオリバランスや再投資等を通じ、アロケーションを再検討いたします。
リスク重視
時間をかけて運用資産を伸ばしていくこと、資産を保全することを第一に考えます。リスクテイクすることが常に高いリターンを生むわけではありません。市場環境を十分に考慮し、リスクを取るべきでないタイミングではお客様にも丁寧に説明いたします。
コストセンシティブ
運用には常にコストがかかります。私がお客様からいただくのは運用資産に対してのパーセンテージのみで、成功報酬は採用していません。ただし、実際の投資に際しては手数料の安いETFを利用したり、市場流動性が低い時には取引を控えたりする等、運用期間を通して、費用に無理のない運営を心がけます。目安としては、プラットフォーム費用、アドバイザリー費用、取引費用やファンド費用を含めて、年率2%以内に収めることです。
ポートフォリオ構成例
ポートフォリオはお客様一人ひとりのリスク許容レベルに応じて担当者が構成します。ただし、お客様ご自身にも主体的に参加していただくこともお勧めしています。投資スキーム上、有価証券を何でも組み入れることは可能ですので、組み得るポートフォリオのパターンも無数にございます。以下では、代表的なポートフォリオ構成のアプローチを3つ紹介します。
- リスク抑制アプローチ
- 段階的アプローチ
- リスク選好アプローチ
パターン1 リスク抑制アプローチ
元本割れを起こしづらい資産を中心に、安定的な利回りを狙うポートフォリオです。バイ&ホールドを基本とした保守的なポートフォリオの構築を目指します。債券ファンドないし現物債券を中心に構成するため、元本確保の意識が強い、リスク性向の低い人に向いています。
資産種類 | 構成割合 |
現物債券 | 80 |
債券ファンド | 20 |
パターン2 段階的アプローチ
まず、お客様のライフステージ、投資期間の長さによって、リスクを抑制する場面、リスクを積極的にとる場面に分けて、ポートフォリオの組み替えを行っていきます。例えば、30〜40歳代は資産を増やすフェーズ(Wealth Creation Phase)であるためリスクを積極的にとり、50歳代は資産を守るフェーズ(Wealth Protection Phase)であるためリスク抑制に重点を置く、といった具合です。いずれの場面においても資産の分散を意識し、バランスの取れたポートフォリオを目指します。
資産種類 | 構成割合 |
現物債券 | 10 |
債券ファンド | 30 |
株式ファンド | 40 |
プライベートエクイティファンド | 20 |
↓徐々に変化
資産種類 | 構成割合 |
債券ファンド | 50 |
株式ファンド | 10 |
不動産ファンド | 30 |
プライベートエクイティファンド | 10 |
パターン3 リスク選好アプローチ
日常から金融マーケットに親しみがあり、金融マーケットがどういう動きをするかをご存知の方向けのポートフォリオ構成になります。ヘッジファンドないし現物株式等を中心に構成し、分散投資よりも個別の投資機会の捕捉を大事にする、リスク性向の高い人に向いています。金融マーケットにはレバレッジのかかったファンド、複雑な投資戦略をとるヘッジファンドは高いリターンの可能性がありますが、元本割れを起こしやすいことにも注意が必要です。
資産種類 | 構成割合 |
現物株式 | 20 |
株式ファンド | 30 |
プライベートエクイティファンド | 20 |
ヘッジファンド | 30 |
この他のアイデアとしては、投資地域の分散を意識したポートフォリオ、管理費用を抑えたファンドを中心に構成したポートフォリオ等が考えられます。