せっかく金融都市香港に来たのだから、日本とは違う、特別な商品があるに違いない。そう思う人は少なくはない。だが、実際にそのような発想で、「これだ!」というものに出会えていない人も散見される。一体どういうことなのだろう。

今回は香港でしか買えない金融商品について考えてみたい。

香港だから買える【株式】

香港には証券取引所がある。したがって、香港で上場している企業がたくさんあり、その企業の株式は香港で取引ができる。

どんな企業が多いだろうか。一般には地元香港の企業と、あとは中国本土の企業が多い、と考えるといい。日本企業で香港に上場しているところは少ない。

企業にとって株式市場は資金調達の場であるため、まずは地元がいいし、次に資金を提供してくれる投資家が多い場所がいい、ということになる。香港の株式市場は世界に開かれているので、その意味ではアクセスしやすいわけだ。

同じ企業であってもアメリカや中国本土で重複上場をしているケースもある。自分がどこでその株式を買うのが一番いいかはよく考えるといい。例えば、香港に住んでいる間は株式の配当にも税金はかからないので、あえて同じ銘柄をアメリカで買って、配当に対して米国の源泉税を払うのは変かもしれないし、アメリカの方が株式の流動性が高いかもしれない。

香港だから買える【債券】

株式同様、企業は債券発行を通じて資金調達を行うので、香港の企業の社債は香港市場でも多く取引がなされている。また、マルチカレンシーが扱え、国際的な投資家も集まる香港では、米ドルでの債券の取扱いも多いのが特徴だろう。株式に比べると債券は発行量や流通量が限定されるので、個別に問い合わせをして、買うということが多いかもしれない。

それでも十分な取扱い量があれば、業者としてのマージンは少なくて済むので、香港の企業の社債でなくても、あえて香港で取引するとしたら手数料の点には魅力は感じられるかもしれない。

香港だから買える【投資信託、ETF】

投資信託やETFというのは、裏付の資産として株式や債券とするものが多いので、上記で既に述べたものに分散投資しているケースにはなろう。

中国や香港関連となると、なかなか企業名すら覚えがないし、消費者として商品に触れたことすらないと言う人もいる。その場合は、安易にIPOで個別の株式を買ったりするよりは、単純に投資信託やETFで中国や香港向けの投資を行うところからスタートする方が現実的かもしれない。必要なら少しずつ企業について勉強していけばいい。

投資信託やETFには、銘柄の一定の選択基準が存在するので、海外にいるファンドマネージャーよりは地元のマネージャーが選定するものの方が、より企業のことを分かって投資している、と言うケースはあり得るかもしれない。もちろん一概には言えない。

香港だから買える【ヘッジファンド】

投資信託もファンドではあるのだが、より大きな投資家向けにより積極的な運用手法を用いるヘッジファンドというのがある。単に株式を買うだけでなく、売ったりもするし、経営者と面談をして投資をしたりすることもある。運用方針によっては大きなリターンが期待できるヘッジファンドもあれば、単純に株式や債券との相関を下げ、ポートフォリオの分散として利用するためのヘッジファンドもある。

税制の簡素さから香港を拠点にしているヘッジファンドは少なくないので、その他の地域よりは探せば見つかる確率が高い、とはいえそうだ。ただし、投資家として参加するには予めリレーションが必要なことも少なくない。

香港だから買える【プライベートエクイティファンド】

近年はヘッジファンドとの境目が分かりづらくなっている面はあるが、より企業に対する積極的なアプローチをするのがプライベートエクイティファンドである。破綻しかけた企業を安く買収して経営再建をした後に売却したりするし、あるいは新興企業に投資をするベンチャーキャピタルもこの分野の一つと見てもいい。プライベートエクイティファンドもまた、税制の簡素な香港を拠点に活動していることも多い。投資対象の規模と資金調達の規模が一致するので、長いリレーションを持つ投資家か身内くらいにしか限られた投資の機会は提供されないことが多いが、それでも香港にはそのリレーションを築く機会がある、とは言える。

香港だから買える【保険】

香港には証券会社やファンドはもちろんのこと、保険会社も数多く存在するので、魅力的と思える保険商品に出会うこともあろう。貯蓄性の保険ですら数%の利回りは提供するので、投資と思って香港の保険を買う人も少なくない。贈与税や相続税のない香港だからこそ、保険契約を誰かに譲渡したり、共同名義で加入したりと、幅広いファミリーのニーズに応えることができるようになっている。がんや脳卒中などの重病に対する保障も手厚く、また医療ツーリズムのような国をまたがった医療にも保険が効いたりするのは特徴的であるといえよう。

香港では香港以外の金融商品も買える

あえて「香港だから買える」を取り出してみたわけだが、これはMade in Hong Kongの性質が強いものを選んでいるだけであって、金融都市香港で世界中(Made in Other Countries)の商品が買えることは言うまでもない。

なかには日本でも買えるものも当然ながらある。少しの間、香港を探し回って「なんだ、日本とそんなに変わらないじゃないか」という人がいるのも分かる。

また、店頭に並ぶ商品と、店頭に並ばない商品というのがあり得る。店頭に並んでいる商品というのは、お客さんがどんな人であってもそれを見せて問題がない、くらい一般的なものに限定してある。

リスクの説明を十二分にしなければならないもの、あるいは常には在庫としておいていないが、リクエストや必要に応じて仕入れる、といったものだって当然ある。それは必ずしも商品として魅力がないことを意味してはおらず、単純にクライアントのことを知らなければ薦めようもないものである、というだけの話である。

業者の得意分野によって扱う商品は異なる

幸か不幸か、金融商品も”商品”である以上、様々なモノと同様に流通の経路が存在する。したがって、証券会社にしても銀行にしても自分のところで扱いたいと思うものを選ぶ過程が存在する。

業者によっては手数料の分厚いものを選ぶし、業者によってはただただ人気のあるものだけを薦めることだってある。

業者の中でも個人の担当者がいる以上、その人の得意分野に依存するという面もある。

金融都市香港といえども、全ての金融商品を熟知した、神がかった人がうじゃうじゃいる、というわけではない。

商品探しに明け暮れないことが大事

以上で見てきてお分かりいただけたのではないかと思うが、あえて香港ならではを求めることは不思議ではないものの、かといって香港には財宝が眠っているようなイメージを持って目をキラキラさせるほどのことはない、と個人的には思う。

ただ、それでも日本にはないものがある可能性を否定はしないし、ここで触れたものはそれでもあくまで一般の人がアクセスし得るものであって、さらに複雑な商品もないわけではない。金融商品である以上、世界のどこで買うかはおいておいても、リスクとリターンをしっかりと理解して、自分に最も合ったものを選ぶことが大事であることに変わりはない。商品探しに明け暮れて人生の時間を浪費しすぎることにないようにしてもらいたい。