海外送金でトラブルに見舞われた経験がある人は多いのではないでしょうか。
海外送金におけるトラブルと留意点、ということで、よくある質問や注意事項、起きやすいトラブルなどをピックアップしてお届けします。海外送金における各国の対応はまちまちなので、困惑しやすい面はあるかもしれません。
目次
海外投資や保険金を日本の銀行口座に送金することは可能か
香港にお住まいの方(特に日本人)に金融サービスを提供する場合、この質問はよく聞かれます。投資にしても保険にしても、基本的には長期のものであるのに対し、皆さんの香港滞在が永遠ではないことを思えば、当然といえば当然です。
現状は大丈夫かどうか、という話で言えば、これに関しては
基本的に問題ありません。
証券会社も保険会社もしっかり対応してくれています。そもそも香港自体が国際都市なのでそれに対する顧客対応はちゃんとしているように見受けられます。もちろん何がしか手数料はかかるかもしれませんし、予め海外の口座であることをリマインドする必要はあるかもしれません。
また、日本の銀行口座で海外からの送金(被仕向送金)を受けた場合、着金時または着金後に送金内容に関するお尋ねがくる場合があります。
職業上のリスクヘッジではありませんが、絶対に大丈夫、ということは私の口からは言えません。なぜなら将来のことだからです。ある日突然法律が変わることはないわけではないからです。とはいえそれでは不安になってしまいます。でも、世の中に絶対が存在しないことを言っているだけですし、下手に私が絶対大丈夫と言ったところで、私自身が何か責任が取れるわけでもないことはご理解いただきたいと思います。
中継銀行の仕組みを理解する
海外とて、資金を送金する以上は、送る人と受け取る人がいますよね。
そして、その送金をしてくれるサービスがあるわけですが、実はその仕組みは国際郵便に似ています。別の国からの郵便は最初から最後まで同じ業者が配達しているでしょうか。恐らく違いますよね。ある国を出ればパートナーを組む業者にバトンを渡すこともあるでしょうし、あるいは子会社に委託する場合もあるでしょう。
海外送金では、このパートナーに相当するものがコルレス契約を結んだ中継銀行です。中継銀行は送金する通貨によって異なる可能性がありますし、送る側の中継銀行と受け取る側の中継銀行がそれぞれある場合や、2つ以上の中継銀行が存在する場合すらあります。同銀行グループ内の中継銀行を利用する場合は、実質的には中継銀行がないように見えることもあります。今日では、この中継銀行を事前に把握して指示することが効率的な海外送金においては有効とされています。
登録する個人情報はアップデートし、常に一致させる
もし一つだけお勧めすることがあるとすれば、投資にしても保険にしても登録された個人情報は(受け取る口座も含めて!)最新のものに常にアップデートしておくことです。登録身分証や住所証明です。場合によっては結婚等で氏名が変わっている場合は要注意でしょう。
最近ですと、日本の銀行口座で海外送金を受け取る場合は銀行にマイナンバーを提出しておくことが結構重要なようです。
要は海外であるがゆえに、本人による取引であるかどうかという点には注意深くなります。疑わしきは処理しない、が金融取引におけるマネーロンダリング防止の原則ですから、名前が一致しているだけでは難しいかもしれません。同姓同名の誰か、というのはあり得ますし、まして日本人の固有名称なんてアルファベットにしてしまうとなお分かりづらい、という銀行員の気持ちにはなってみてもいいかもしれませんね。
海外送金に関する知識のある人にサポートを依頼する
私自身、金融機関にいてもよく思いますが、銀行間の取引に心得のある人は多くはありません。ずっと言われていますが、なぜ海外送金には日数にして何営業日もかかり、遅れるのか、そして数ヶ月経っても着金しないことがあるのはなぜか、なぜ突然中継銀行が現れて手数料を抜くのか、などがありますね。
素人目に見て、「え?お金消えてなくなっちゃったの?」と思えるときは決して少なくありません。しかし、それぞれの事象には原因がありますから、行方不明になってもきっちりと追いかければ着金確認は取れ、ほとんどのことは解決しますし、予め心得があれば素早く対処することも可能です。トラブルになると色んな人が色んなことをいいますが、全ての人が心得があるわけではないことを理解しておくことは大事です。失敗しない海外送金をしたいものです。
日本から海外に送金することはできるか
最近よく聞くのは、日本から海外に送金することが難しくなった、という話です。
一つにはマネーロンダリングのチェックが厳しくなったこと、もう一つには海外送金を取り扱う銀行が少なくなったこと、などですね。法人の取引はともかく、個人の取引であれば、「総合的に勘案した結果」、海外送金取引を断られる、ということも起こっています。この現象をどのように捉えれば良いのか、という質問はよく来ます。
結論から言うと、「できないことはない」になります。ただ、いつでもどこでも誰でもできるかというとそうでもない、ということは聞き及びます。実際、日本で働く外国人もたくさんいるわけですから、サービスとして全くなくなる、ということは考えにくいでしょう。必要であれば銀行に情報やエビデンスを提供し、丁寧に説明をする、に尽きます。
気持ち的には銀行に融資をお願いにいくときと同じように接する感じでしょうか。何か不安になる必要もなければ、慌てる必要もありません。ただ、断られることもある、という心の準備はあってよいのかもしれません。
銀行側がなぜそんなに海外送金に前向きでないかというと、海外送金業務の依頼を受けることによる手数料は決して高くない割に、手続きやチェックが煩雑で、かつ犯罪等のリスクマネーにあたる可能性が相対的に高いからです。現在は世界のマネーの健全性を保つためにFATFという国際機関が各国のマネーロンダリングやテロ対策の状況について横比較をしていますが、残念ながら日本の体制は満点ではないようです。
仮想通貨を使って海外送金できるか
リップルといった仮想通貨を使った海外送金は人々に恩恵をもたらすことは想定されていました。が、現実としてはそのようなことが実現していません。仮想通貨取引自体がコストが高いからです。早くはなってもコストが高いのでは意味がありません。また、仮想通貨には匿名ウォレットのような仕組みもあり、お金の健全性の部分が担保されないという問題もあります。下手に仮想通貨を経由させて送金してしまえば、リスクの高いマネーと金融機関が認定し、銀行口座自体を凍結される可能性もあるので十分に注意しましょう。
税制面の取扱いは慎重に
海外において行った取引を次の居住国でどのように取り扱うか、という点は考えて然るべきです。これは日本に帰ることだけを想定していません。それに取引の性質によって異なってきます。そのため、一概にここで申し上げることはできませんし、税制の話はタックスアドバイザーに、という原則もやはり存在します。
ただ、私ができることは「日本に帰ったとしたらどうか」「カナダに移住したとしたらどうか」「イギリスに数年間だけ行ったとしたらどうか」ということをざっくりシミュレーションすることです。これらは将来の確実性が高いのであれば考えるに値しますが、仮定の話に花を咲かせすぎるのは疲れてしまうだけです。もちろん、税制面でより有利なのか、そして簡便なのかを考えることもまた、資産運用のなかですら必要なチェックポイントですが、仮定が多すぎても最適化はできません。
いや、むしろ最適化すべきは税金の話ではなくて、あなた自身のライフプランであったりするわけです。相続税が安いからという理由でお子さんの人生を香港に縛りつけてしまってもいけませんし、住みたくもない海外にずっと住み続ける必要もありません。
あなた自身が税制をいじれるわけではないし、税制の解釈を決められるわけでもない以上、ライフプランというあなた自身が主導権を握って決められることにもっと時間と労力を割くべき、と思います。