2021年には、TINA=There Is No Alternative(他の選択肢がない)という投資環境が話題になったが、2022年になり、TARA=There Are Reasonable Alternatives(他の合理的な選択肢がある)という投資環境に変化していると言われ始めた。

この変化は金融市場に一体どのような資産の再配分をもたらすのだろうか。

TARAの投資環境とは

TINAについて振り返りたい人はこちらの記事を参考にしてもらいたい。

TINAの時代に選好されたアセットクラスは株式、特にグロース株であった。FAANGのような大型銘柄を始めとしたテクノロジー株式に資金が集中した。

通常の景気サイクルの中でも、セクターローテーションというのは存在し、グロース株一辺倒になることはないのだが、その他の選択肢が魅力的でなければローテーションのしようもない、ということだったのである。

しかし、投資環境は変わった。アメリカや欧州を中心にインフレが高まり、それに合わせて金融政策の引き締め、すなわち利上げが行われたことで、これまで最高値にあった債券は大幅に売り込まれた。

企業の業績事態も期待されていたほどにはならず、結果として株式市場も調整局面を迎えることになる。

一番人気の没落が鮮明に

コロナ相場の申し子といえば、キャシーウッド率いるARK(アーク)というETFのシリーズであったと記憶している。

数年で何倍にもなることを想定したものだったため、期待に胸を弾ませた人もいただろう。

当時の時流であったことは間違いないが、それもまた長続きするものではなかったことが分かる。

根本的に熱狂とはジェットコースターそのものなのだと言わざるを得ない。これなら絶対に負けないと思えるものがTINAの世界では有効であったが、果たしてこれからもそうなのかは分からない。

本来投資というのは様々なセクターに、独自の観点から様々な投資家が集まっているものなのである。みんなが一同に介してしまうこと自体が異常と言えば異常だったわけだ。

かといって一番人気だったことにもそれなりに理由があって、例えばいきなり米国株を全てのポートフォリオ から除外する、などというのもまた極論であることを何となくわかっているはずである。負けるのを黙って見ていればいいのか、なんて反論が返ってきそうでもある。

逃げ惑いすぎると、出てこれない袋小路に陥るので、「損して得取れ」のように視野を広く持っておくことをお勧めしたい。投資に絶対はない。

長く続けられる投資戦略

TARAの投資環境は一般の投資家には逆に難しいものがあるかもしれない。みんなが言っていることが違ってくるので、みんながいいと思うものを自分も選ぶ、ということができなくなるからだ。インデックス投資もまた尻すぼみになる可能性はある。自分らしい投資戦略を見つけて落ち着きどころを探らなければならない。

相場が様々な思惑で動くようになると、想定と違う反応をすることもある。長く続けていくためにどのような投資戦略を持っていた方がいいのか。本来当たり前に求められるこの視点を突き詰められなければTARAの時代は風当たりの強さをただ感じる状態になりかねない。

荒波の中でも沈まない船を見つけられたなら、是非そのことを大事にすべきであろう。

TARAの次を期待するべきか

時代のワードはBRICs、そしてFAANG、さらにTINA、そして今TARAと移り変わってきた。昔のワードほど記憶の彼方にあることに気づくだろう。そしてきっと次があることにも。

だからといって、次を読めれば勝てるという話ではなくて、それくらい投資の世界にも変遷がある、ということである。環境が変わったのに同じ昔の思考法をしていては上手くいくものも上手くはいかないのである。

金融市場は情報の集積であり、宝箱である。

価格が動いたのなら、動くはずがないと疑問視するのではなくて、動いた事実をまずは直視すべきである。それが新しい世界なのである。その価格の軌跡であるチャートもまた雄弁ではあるが、同時に紛らわしい。いっそのこと今この瞬間にその価格から始まったのだと思ってみると、随分違う境地に立てるはずである。

人は成功体験と失敗体験をそれぞれ引きずる。リーマンショックもコロナショックも知らない若い世代もいずれは同じマーケットに飛び出してくる。

マーケットはあなたのことなんか、ましてあなたの気持ちなんか気にしていやしない。

だからそのことにくよくよするような時間の過ごし方はしてはいけないのである。

経験は人を強くするが、同時に視野を狭くもする。さて、あなたはそこに対して客観的でいられるだろうか。

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