FOMCとは連邦公開市場委員会と言われる、米国の金融政策を決める会合のことを指します。
金融政策は景気の動向などによって各国の中央銀行でそれぞれ調整されますが、とりわけ米国の金融政策は、世界のマーケットに対する影響が大きいとされます。
そのため、重要な指標として世界中の市場関係者が注目をしています。
目次
FOMCの概要
FOMCとはFederal Open Market Committeeの略で、アメリカの金融政策について議論し、決定する場所です。
この会合は、FRB(Federal Reserve Board、連邦準備理事会)によって年8回開催され、理事7名及び、ニューヨーク連銀総裁、地区連銀より投票権を持つ総裁4名、の計12名が参加します。
地区連銀は11ありますので、その中から4名が毎年持ち回りで選出されます。なお、メンバーの欠員が出ることもあるので、いつも12名というわけではありません。
FOMCの役割
FOMCは日本でいうところの日銀政策決定会合ですが、日銀が最終的には物価目標のみを掲げているのに対し、米国の場合は、物価と雇用の2つが目標(デュアル・マンデート)である点が異なります。
FOMCが果たす主な役割としては、経済指標などを通じて現状の景気判断を行い、
- 政策金利(FFレート)を調節(引き上げ、引き下げ、現状維持)を決定
- 市中に流通する通貨の量を調整する公開市場操作の方針を決定
することです。
景気判断にあたっては、物価と雇用以外にも様々な指標が参考にされますし、国内の状況のみならず、米国外の状況も考慮に入れられます。
当然ながら、FOMCでの判断材料の多くは随時公開、更新されていますので、経済指標やあるいはFOMCメンバーの発言などを通じても、FOMCでの決定に関する予測が行われることになります。
FOMCの影響
本来、FOMCとは金融政策の決定を行う独立した機関です。時の政権や民間の企業に慮ることは好ましくありません。
ただし、逆に言えば金融政策“しか”決定できない機関でもなるので、経済に対してその政策効果を浸透させるためには、財政政策とのいわゆるポリシーミックス、あるいは民間の企業の行動変化を促すことが必要になります。
かつては、政策金利のみを調整する伝統的金融政策が主流でしたが、昨今は量的緩和といった非伝統的金融政策も徐々に拡大しています。米国では検討されこそすれ、欧州のようにマイナス金利を導入することはありませんでした。
ただ、フォワードガイダンスといった、先行きの政策変更見通しの発表を通じて、金融市場との対話も重視する姿勢が見られています。
FOMCと金融市場
FRBが銀行の銀行である以上、最も影響を与えるのは金利を扱う金融市場です。米国債や米ドル建ての社債、銀行の預金金利や住宅ローン金利にまずは波及します。
量的緩和などを通じて市中にお金が大量に供給されるので株価が上がりやすく、それゆえに株式市場も意識していると思われがちですが、これは間接的なものである、とは言えるでしょう。
間接的だとするのは、一つには、国民が株式市場で資産を形成している以上、株式市場が暴落するようであれば投資家がパニックに陥り、あるいは消費に回る部分が減ることによって、実体経済そのものに影響を与えかねないからですね。
外国為替市場も金利の影響を受けます。なぜなら一国の通貨と他国の通貨の交換レートである外国為替は、それぞれの通貨の金利差によって動くからですね。
例えば米ドルと日本円の関係を取り上げると、米ドルの金利が上昇する(のに日本円の金利が変わらない)ことは米ドルと日本円の金利差が拡大することを意味し、理論値としての米ドルと日本円の為替レートは将来的にドル高に向かっていくことになります。
ただし、ここでいう金利差とは、各国の中央銀行の定める実際の政策金利の差では必ずしもなく、先々の金利変化の織り込みも含まれて取引をされますから、まさに金融政策を読むことによって価格形成されるのです。
金利の変化は企業が設備投資などを行うための資金調達コストの変化となって現れますし、外国為替は輸出入を多く行う企業にとって業績の変化につながりますから、ひいては株価とも連動し、そして経済全体にも影響を与えることになるわけです。
FOMCを読み解く
金融政策が様々な金融市場への波及効果を持つことが分かったとして、実際にその政策方針の変化に敏感に反応して投資戦略を編むのは金融市場参加者の役割です。
FOMCはおよそ1ヶ月半に一度あるので結構な頻度といえばそうかもしれません。
それにFOMCとしても市場へのサプライズをできるだけ与えたくはないと考えているので、可能な限り先行きを示すことにはしていますから、毎回追いかけるのは多くの人にとって現実的ではないでしょう。
利上げがあるかないか、あるとしてどの程度かによって直前で投資ポジションを作ったとしても、当たるときもあれば当たったとして一瞬で反転したり、また別の理由で逆の方向に動いたりしますから、良い投資経験となるかは分かりません。
ただし、金融政策の節目とは常に景気の見通しが変わってきているときにしかこないものですから、FOMCというものの存在を知り、そして世界の大きなお金の流れを司る米ドルの動きがどのように身近な生活にまで影響を及ぼすのかについて知り、前もって何かできることがあるかを検討してみてもいいかもしれません。
短期的な取引をするためではなく、長期的な資産運用の参考にするため、あるいは長期的に運用を継続していくなかで現れる一時的な影響を一時的なものとして割り切るためには知っておくべき重大要素の一つであることは間違いありません。